不定期でお届けしているシステム思考において基本となる8つのシステム原型のご紹介をしていきたいと思います。

今回が最後で、今回はエスカレートを紹介したいと思います。
過去のシステム原型 シリーズの記事についてはこちらをご覧ください。

簡単に解説!システム原型 シリーズ

システム原型全般についてはかなり古い本ですが、下記がおすすめです。
参考文献:システム・シンキングトレーニングブック

システム原型その8:エスカレート

さて、改めてですが、今回紹介するシステム原型はエスカレートというものです。因果ループ図は後ほどご紹介するとして、まずは簡単な事例を紹介したいと思います。

エスカレート、の事例としてわかりやすいのが携帯電話のキャリアの価格競争です。


画像引用先:https://selectra.jp/sim/guides/hikaku/carrier

2023年5月時点で、携帯電話のキャリアはドコモ、au、ソフトバンク、そしてシェアこそ若干少ないものの、新規参入の楽天大手4社でのシェア争いとなっています。(下画像左)


画像引用先:2023年2月の通信キャリアのシェア調査

最近でこそ格安SIMが登場して風向きが変わってきたものの、少し前までは大手3社の寡占のような状態でした。

このような状態で、仮にこの3社をA,B,Cとした時、C社が利用料金を下げるとどうなるでしょうか?
実際には心理的な乗り換えコストなどもありますが、A、B社の利用ユーザーがC社に乗り換えるということが発生するでしょう。

それを受けて、A,B社も利用料金の引き下げを行ってユーザー流出を引き留めようとします。
結果としてすべての会社で利用料金の引き下げが行われてユーザーはハッピーですが、通信会社全体としては利益を失ったことになります。
C社の行動は業界全体から見るとLose-Loseの関係となるわけです。

また、前述の書籍「システム・シンキングトレーニングブック」の中で、エスカレートの事例として子供の喧嘩が取り上げられています。

ひとりの子供が相手を馬鹿にするようなことを言うと、
相手がそれに対して強く言い返す。
第2ラウンドはもっとひどい言葉となり、
・・中略・・
時にはさらにそれを取り囲んでいる子供が2人を焚き付ける。
程無く、2人は一触即発の状態となり
・・中略・・
ひとたびこのような興奮状態が生まれてしまうと、
そこで冷静になるのは難しい。

これを読んで、これは決して子供の喧嘩ではなく、ネット上での大人の喧嘩にもよく見られると思いました。

エスカレートの因果ループ図

さて、エスカレートの因果ループ図は下記のようになります。先程の携帯キャリアの値下げ競争に関連付けて見てもらえればと思います。
※ここではシンプルに2社間の関係性を表しています。

システム原型 エスカレート

なお、本来は「+」をSameを表す「S」、「ー」をOppositeを表す「O」で書くのが一般的です。ただ、SとOよりも+とーの方が一般にはわかりやすいのではないか?と思っています。

まずは、A社が値下げを行うと、A社のシェアが上がります。これは、B社に対する相対的なA社のポジションが上がったといえます。

すると、B社にとっては脅威となりますから、B社も値下げを行い、シェアを奪い返します。

この状態のポイントの1つは競争が価格のみで行われているというところにあります。
以前にソフトバンクがシェアを急激に奪った時は、iPhoneの独占販売という価格以外の要素でシェアを奪えたからと言えます。

また、エスカレートというシステム原型の根底には「不安」というメンタルモデルが影響しています。
通信キャリアの場合はシェアを奪われ続けるのではないか?という不安、子供の喧嘩、いや、大人のネット上での喧嘩の場合は、これまで自分が信じてきたことが否定されるのではないか?という存在意義についての不安が根底にあると思います。

エスカレートのシステム原型にハマっていると認識できた場合、iPhoneの独占販売のような、別軸での対応が必要になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は8つのシステム原型の最終回として、エスカレートについて書いてみました。

システム原型 エスカレート

システム原型シリーズはこちらからご覧いただけます。

簡単に解説!システム原型 シリーズ

システム思考関連でおすすめの書籍はこちらです。


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