大学生のリーダーシップを見極める6因子と社会人との比較

社会人と比較すると、学生は「挑戦」や「目標管理」といった成長プロセスに関する行動が独立している点が特徴です。
新卒採用やキャリア教育では、この6因子を基準に面接評価や育成を行うことが有効です。
目次
1. 大学生のリーダーシップ行動を構成する6因子
2. チームワークに最も影響する因子は「成果支援行動」
3. 社会人のリーダーシップ行動との違い
4. 採用面接・キャリア教育での活用
5. リーダーシップ行動を学ぶ書籍
6. まとめ
「リーダーシップのある学生を見極めたい」というニーズは、新卒採用の面接担当者やキャリア教育の大学関係者から多くいただくテーマです。しかし、学生のリーダーシップは社会人と違って「役職」や「実務経験」が少ないため、どの行動を見れば適切に評価できるのかが難しい領域でもあります。
本記事では、大学生のリーダーシップ行動を実証分析した木村・舘野・松井・中原(2019)の論文(日本教育工学会論文誌)を手掛かりに、大学生のリーダーシップ行動を構成する6因子、チームワークとの相関、そして社会人のリーダーシップ行動との違いを整理します。
木村 充*1, 舘野泰一*1, 松井彩子*2, 中原 淳*1
*1 立教大学経営学部
*2 一橋大学大学院経営管理研究科
日本教育工学会論文誌 43巻(2019) 2号
大学生のリーダーシップ行動を構成する6因子
【要点】大学生のリーダーシップ行動は、率先垂範や挑戦、目標共有、目標管理、成果志向支援、対人志向支援の6因子で構成されています。採用面接やキャリア面談で学生のリーダーシップを見極めるには、これら6因子の具体的な行動が観察できるかを聞き出すことが出発点となります。立教大学の調査分析に基づくこの指標を活用し、学生の行動を的確に把握することが重要です。
同論文では、立教大学経営学部のリーダーシップ教育受講生を対象にした質問紙調査を因子分析し、大学生のリーダーシップ行動を以下の6因子で構成されると結論づけています。
| 因子 | 具体的な行動の例 |
|---|---|
| 1. 率先垂範 | 自ら動いて手本を示す、最初に発言する |
| 2. 挑戦 | 失敗を恐れず新しいやり方を試す |
| 3. 目標共有 | チームのゴールを明示し、メンバーに共有する |
| 4. 目標管理 | 進捗を確認し、ゴール達成のため軌道修正する |
| 5. 成果志向支援 | メンバーが率直に言い合える雰囲気をつくる |
| 6. 対人志向支援 | メンバーの気持ちに配慮し、相互理解を促す |

出典:木村充・舘野泰一・松井彩子・中原淳「大学生のリーダーシップ行動尺度の開発と信頼性および妥当性の検討」日本教育工学会論文誌 43巻(2019)2号 表1より(原典)
採用面接や学生のキャリア面談で学生のリーダーシップを見極めるには、「この6因子のどの行動が観察できるか」を聞き出し・観察することが出発点になります。
チームワークに最も影響する因子は「成果支援行動」
【要点】チームワークに最も強い影響を与えるリーダーシップ因子は、成果志向支援です。この因子にはメンバーが率直に意見を交わせる雰囲気づくりが含まれており、近年注目を集める心理的安全性の概念とも深く重なっています。リーダーが場の空気を整える行動をとることが、チームの連携を活性化させる上で極めて重要であると示唆されています。
同論文では、6因子それぞれとチームワーク得点との相関分析も行っており、6因子すべてがチームワークに対して有意に正の相関を示すと報告されています。

もっとも相関が強いのは成果志向支援で、「メンバーが率直に言い合える雰囲気をつくっている」といった項目が含まれます。これは近年注目されている心理的安全性の概念と重なる部分が大きく、リーダーの行動として「場の空気を整える」ことの重要性が示唆されます。
社会人のリーダーシップ行動との違い
【要点】大学生と社会人のリーダーシップ行動は多くの因子で重なり合う一方、大学生は「挑戦」や「目標管理」といった成長・学習プロセスに関する行動が重視され、社会人は「ポジティブなフィードバック」など相手への対人影響の精緻化が強調されるという違いがあります。学生は自らの成長志向の行動がリーダーシップと認識されるのに対し、社会人は他者への具体的な働きかけが求められます。
大学生のリーダーシップ行動を、社会人のリーダーシップ行動と比較してみます。
社会人側の参照論文として、外食チェーン店長を対象にした浜田・庄司の研究を取り上げます。
目白大学大学院心理学研究科 浜田 陽子
目白大学人間学部 庄司 正実
目白大学リポジトリ 論文リンク
同論文では、飲食店の店長のリーダーシップ行動として次の5因子が抽出されました。
2. ポジティブなフィードバック
3. 配慮の提示
4. 自律性のサポート
5. 模範を示す

大学生×社会人の対応関係
両者の因子を対応付けると次のようになります。
| 社会人(飲食店長) | 大学生 |
|---|---|
| 目標を示す | 目標共有 |
| ポジティブなフィードバック | 成果志向支援(フィードバック成分) |
| 配慮の提示 | 対人志向支援 |
| 自律性のサポート | 成果志向支援(雰囲気づくり成分) |
| 模範を示す | 率先垂範 |
両者の因子はかなりの部分で重なり合っています。一方、違いも見えてきます。
・社会人側は「ポジティブな」フィードバックが明記され、フィードバックの方向性が明確に定義されている
・大学生側は「挑戦」「目標管理」といった、成長・学習プロセスに関する因子が独立して存在する
学生のうちは「新しいことにトライする」「自分の目標を管理する」という成長志向の行動そのものがリーダーシップと認識される一方で、社会人では「相手にどう働きかけるか」という対人影響の精緻化(ポジティブなフィードバック)が強調されるようです。
採用面接・キャリア教育での活用
【要点】大学生のリーダーシップを見極める6因子は、採用面接や大学でのキャリア教育、社会人初期の育成に幅広く活用できます。具体的には、面接設問や評価シートの設計に導入して候補者の行動特性を可視化できるほか、立教大学のような経験学習型カリキュラムを用いた学生育成プログラムや、自己分析、社会人向けのフィードバック学習にも応用が可能です。これにより、学生の強み・弱みに応じた段階的な成長支援が実現します。
この知見は、学生のリーダーシップを見極めたい採用担当者や、学生を育成したい大学・キャリアセンターの関係者に次のように活用できます。
・面接設問の設計:6因子に沿った行動事例を聞き出す(例: 「ゼミやサークルで周囲を巻き込んだ経験を教えてください」→率先垂範・目標共有を確認)
・評価シートの設計:6因子×3〜5段階の評価スケールで候補者を比較する
・学生育成プログラムの設計:立教大学のような経験学習型カリキュラムで、6因子の行動を実際に体験させる
・学生自身のセルフアセスメント:6因子を使って自分の強み・弱みを可視化し、行動計画を立てる
・社会人初期の育成プログラム:大学で身につけた6因子をベースに、社会人で求められる「ポジティブなフィードバック」を新たに学習する
リーダーシップ行動を学ぶ書籍
リーダーシップの行動変容やフィードバック設計を学ぶには、同論文の中原淳氏による下記書籍が参考になります。
まとめ
【要点】大学生のリーダーシップは6つの因子で構成されており、その行動特性は社会人とも共通しているため、学生時代に培った経験はそのまま将来のキャリアに活かせます。この共通性を踏まえ、採用面接や大学におけるリーダーシップ教育の場において、これら6因子の視点を取り入れて評価や育成に役立てることが推奨されます。
大学生のリーダーシップ行動は率先垂範・挑戦・目標共有・目標管理・成果志向支援・対人志向支援の6因子で構成され、いずれもチームワークに正の相関を示します。社会人のリーダーシップ行動とはかなりの部分で共通しており、学生のうちに学び始めた行動がそのまま社会人キャリアでも通用することが示唆されます。採用面接や大学でのリーダーシップ教育に、この6因子の視点をぜひ取り入れてみてください。

