大学教育を中心にアクティブラーニングの導入が進んでおり、その代表的な手法の1つがPBL(Project Based Learning / Problem Based Learning)です。本記事では、経営学系学部でPBLを導入する際の2つのジレンマを整理し、弊社からの提案としてビジネスゲームを活用したPBLの可能性をご紹介します。

結論:経営学系PBLのハードルを下げる2つの鍵

先に本記事の結論を提示します。経営学系PBLが抱えるジレンマは、真木圭亮氏が整理した以下の2点に集約されます。

学んだ知識が活用されるフィールドの用意が難しい
扱う問題の絞り込みが難しい(経営は複雑で制御できない)

そして、この2つのハードルを同時に下げる実務的な選択肢がビジネスゲームの導入です。疑似的な経営現場をゲームとして提供することで、学生が知識を使う場を安全に用意し、同時にテーマを限定できます。

PBLとは何か

PBLはProject Based Learning(プロジェクト型学習)またはProblem Based Learning(問題解決型学習)の略で、「プロジェクトを主体的に遂行することで獲得した知識を身体化していく」学習形式とされています。座学で学んだ内容を実践の中で使い、振り返り、自分のものにしていく点がアクティブラーニングの本質と重なります。

経営学教育におけるPBLの2つのジレンマ

経営学教育におけるPBLのジレンマ 引用

友人でもある真木圭亮氏の論考「経営学教育におけるPBLのジレンマ」では、理系教育と経営学系教育の違いとして以下2点が指摘されています。

ジレンマ1:知識の活用イメージが持ちにくい

ひとつめは学んだ内容がどのように活かされるのかについて明確に認識できるか否かである。理系は、得た知識を活かす対象が明確である。(中略)これに対して経営学教育では、得た知識がどのように活かされているのかが、必ずしも明確でない。たとえば企業経営や組織運営は極めて複雑であり、しかも実験室実験とは異なり、その状況を制御することができないために、知識が何に対してどのように、そしてどれほど活かされたのかを明確にすることがとても難しい。

情報系であれば学んだ知識をシステム構築にそのまま活かせますが、経営学では「知識が企業経営にどう作用したか」を観測しづらい。制御不能な現場での成果検証は、学生にとって知識が空転している感覚を生みやすい構造的課題です。

ジレンマ2:問題の絞り込みが難しい

2つめの違いは、問題が絞り込まれているか否か、という点である。理系は各分野に高度に専門特化しているため、問題の焦点を絞り込んで議論を進めることができる。(中略)これに対して、経営学に関わる現象は、そもそも何が問題であるのかを定めることから始める必要がある。

経営現象は「価格設計は在庫回転と広告費、従業員のモチベーションと絡み合う」といった具合に他要素と絡み合って問題が広がる性質があります。マーケティング企画を企業に提案する産学連携プロジェクトでも、厳密には他プロセスとの関係を切り離せず、学生の関心領域が拡散しやすい課題を抱えます。

ハードルを下げる2つの条件

上記2つのジレンマを踏まえると、経営学系PBLの導入ハードルを下げるには以下の条件整備が重要です。

実践するフィールドの障壁を下げる(企業協力を毎回必要としない形で実践機会を用意する)
企業活動の特定プロセスに絞る(サプライチェーン/会計/マーケティングなどテーマを限定する)

特に2つめの「プロセス絞り込み」は、学生に対して「学んだ知識が具体的にどこで効くのか」を体感させる効果が大きく、PBLの教育効果を押し上げる起点となります。

弊社からの提案:PBLでのビジネスゲーム活用

プロジェクトテーマパーク

そこで経営学系PBLの導入に対して弊社から提案したいのが、ビジネスゲームをPBLの実践フィールドとして活用することです。ビジネスゲームとはビジネスシミュレーションゲームの略で、企業活動の疑似体験ができる教材としてのゲームです。カードゲームやボードゲーム形式のアナログゲームも多く、オンライン実施にも対応可能な製品が揃っています。

ビジネスゲームをPBLの実践フィールドに据えることで、2つのハードルを同時に下げられます。

企業とのタイアップ不要・起業不要で会社経営の疑似体験が可能
特定プロセスに特化した製品を選ぶことでテーマを限定できる

プロジェクトマネジメントを学ぶ「プロジェクトテーマパーク」

プロジェクトテーマパークは、3〜5名が1チームとなってテーマパーク開園プロジェクトのメンバーとなり、6ヶ月後のオープンに向けてプロジェクトを遂行するチーム型ボードゲームです。各メンバーには役割カードが配布され、それぞれの強みを活かして意思決定を行います。PMBOK(プロジェクトマネジメント知識体系)の要素を取り入れており、経営学系PBLでプロジェクトマネジメント・役割分担・意思決定を疑似体験できる教材として活用できます。

プロジェクトテーマパーク実施の流れ

会計を学ぶ「財務の虎」

財務の虎

弊社が開発した「財務の虎」は財務会計の基礎を疑似経営体験の中で学ぶゲームです。簿記の仕訳や損益計算の流れを座学で追うだけでは定着しづらい領域を、意思決定の連鎖として体験できます。

ゲームを使った会計研修の感想【クックパッド株式会社様】「財務の虎」実施の流れ

副次効果:社会人基礎力のトレーニングにも

ビジネスゲームの活用には副次的な効果もあります。勝つための戦略を考える過程で論理的思考力が求められ、チーム内での意思決定プロセスでコミュニケーションや交渉の力も鍛えられます。経済産業省が示す社会人基礎力の要素(前に踏み出す力/考え抜く力/チームで働く力)とも重なる領域です。

大学教育・研究者向けのご相談窓口

経営学系PBLや、アクティブラーニング授業へのビジネスゲーム導入にご関心がある大学教員・研究者の方は、既存ゲームのカスタマイズ新規ビジネスゲームの共同開発についてもご相談を承っております。学部・研究室の研究テーマに合わせたテーラーメイド開発事例もありますので、お気軽にお問い合わせください。

弊社の体験型ビジネスゲーム一覧はこちら

さらに学びたい方への推薦書

PBL・アクティブラーニングの理論と実践について深く学びたい方には、以下の書籍もおすすめです。

よくある質問

Q. PBLとアクティブラーニングの違いは何ですか

アクティブラーニングは能動的な学習全般を指す広い概念で、PBLはその手法の1つです。PBLは「プロジェクトや問題を起点に学ぶ」点で、討論型・発表型・ワークショップ型などの他手法と区別されます。

Q. ビジネスゲームと事例研究(ケーススタディ)はどう違いますか

事例研究は過去の企業事例を分析する学習法で、判断の結果が歴史的に固定されています。ビジネスゲームは学生自身が意思決定し、その結果が動的にフィードバックされるため、判断の連鎖と失敗の体験が可能です。

Q. オンライン授業でもビジネスゲームは実施できますか

はい、オンライン対応したビジネスゲームを複数提供しています。Zoomなどのビデオ会議ツールとブラウザがあれば全国の学生が同時参加でき、遠隔授業でのPBL導入も可能です。

まとめ

経営学系PBLの導入ジレンマは、真木氏が示した「活用フィールドの確保」と「問題の絞り込み」の2点に集約されます。ビジネスゲームはこの2点を同時に解決する選択肢として、学部教育・大学院ゼミ・社会人教育プログラムなど幅広く活用可能です。

大学の先生方・研究者の皆様が「楽しみながらも知識の活用ができる教育」を設計される一助になれば幸いです。


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