社内コミュニケーションの活性化や心理的安全性の醸成策として、多くの企業が導入しているのがサンクスカードです。「ありがとう」を紙やデジタルツールで明示的に伝え合う仕組みで、Recognition(承認)文化を職場に根付かせる手段として定着しています。

本記事では、サンクスカードが生み出す効果を、富士通ラーニングメディア・リンクアンドモチベーションなどの企業調査結果と、ホーソン実験の古典的知見をもとに整理し、導入時に押さえるべき設計ポイントをまとめます。

前編: サンクスカードとは?|テンプレートと導入事例

サンクスカードの効果(富士通ラーニングメディア調査)

以前紹介した富士通ラーニングメディア様では、サンクスカード導入後に独自アンケートを実施されています。

サンクスカード 効果アンケート結果(富士通ラーニングメディア様)

参考URL: 富士通ラーニングメディア ブログ

アンケート結果からは、承認する風土・社内コミュニケーションの活性化というサンクスカードの狙いが達成されていることが確認できます。

一方で、「手書きだと業務に支障がある」という否定的な意見も一定数あるようです。どんな施策でもメリット・デメリットはあるため、自社の文化や既存の業務負荷を踏まえた設計が必要です。現在はSlackやTeamsと連携したデジタル型サンクスカードツールも増えており、運用負荷を抑えつつ同様の効果を得られるようになっています。

新人における「感謝」が与える効果

新人における感謝の効果(リンクアンドモチベーション調査)

参考: リンクアンドモチベーション レポート

モチベーションエンジニアリングを研究・実践しているリンクアンドモチベーション様のレポートでは、「感謝を伝えること」が特に新人のモチベーションアップに強く寄与することが報告されています。

重要なのは、サンクスカードという「手法」自体ではなく、「感謝を伝える」という行為そのものの効果が新人のエンゲージメントに効くということです。

「自分のことを見てもらえている」ことの効果

どちらの効果検証を見ても、サンクスカードが与えているのは「自分のやっていることをきちんと見てもらえている」というメッセージです。この効果は、組織行動論の古典であるホーソン実験の知見ともつながります。

ホーソン実験とは…

シカゴ郊外にあるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場において、1924年から1932年まで行われた一連の実験と調査である。

作業条件と従業員の作業能率の関係を分析する目的で、社内的に照明実験等が行われた。照明を明るくした場合に従来より高い作業能率となっただけでなく、照明を暗くしても従来よりも作業能率が高くなることが計測された。この実験では、照明の明るさと作業効率の相関関係を証明できなかった。

これらの実験結果と従業員たちのアンケート調査から、「人は自らが(研究対象として)注目されていると感じると生産性を高める」という仮説が導き出された。

自分の仕事が注目されている、自分の仕事はとても意味がありユニークである、自分は気にかけてもらっている、ということが生産性に大きな影響を与える。

(参考: Wikipedia, マーケティングWiki)

以上より、「気にかけてもらっている」というメッセージが、生産性やモチベーションに影響を与えることがわかります。サンクスカードでなくても、感謝を伝えたり適切なフィードバックをすることでも同様の効果は得られますが、その仕組みの一つとしてサンクスカードは非常に有効です。また、物理的に「もらえる形」で見える化されることもサンクスカードならではの効果で、「ありがとう」の気持ちを”プレゼント”を通して伝えているようなイメージです。

サンクスカードを効果的に導入する5つのポイント

単に「感謝カードを配ろう」で導入すると形骸化しやすいため、以下のポイントを押さえると継続率が高まります。

トリガーを設計する:月初の全体MTGや、プロジェクト終了時など、自然に感謝を伝える場面を制度として作る
匿名性とオープン性のバランス:全員に見える形/1対1で閉じた形、どちらを主軸にするかを決める
経営層・管理職が率先する:上位層からサンクスカードを発行する文化を作ると波及しやすい
KPIを人数比・発行数で見る:総発行数だけでなく、「発行している人の割合」や「受け取った人の割合」を指標化する
既存評価制度と切り離す:評価や昇給と直結させると業務色が強くなり、自発性が損なわれやすい

まとめ

・サンクスカードは社内のコミュニケーションを良くする
・「見てもらえている」というメッセージがモチベーションを上げる
・ホーソン実験の知見とも一致しており、普遍的な効果がある

感謝の見える化は、コストが低く効果が高い組織施策です。導入時は形骸化しないための運用設計(トリガー・KPI・経営層の関与)までセットで考えることをおすすめします。


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