今回は研修担当者向けに「研修の改善」についての論文をご紹介したいと思います。

今回紹介するのは下記の論文です。

企業内研修における研修改善の長期的実践と
授業理解度に対する効果の評価

佐々 裕美, 向後 千春

日本教育工学会論文誌45 巻 (2021) 2 号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/45/2/45_44124/_article/-char/ja/

この論文の凄いところは2008年から2019年までにわたって、研修を改善し続け、その効果を追っているところです。(下画像)


画像引用:企業内研修における研修改善の長期的実践と授業理解度に対する効果の評価 
表1 研修改善施策とその実施年度

上画像にある通り、数年ごとに改善施策を実行されており、それぞれをフェーズという表現で表しています。

具体的な改善施策については上画像にもありますが、4つに分かれています。

施策1:講座体系の整備
⇒講座の種類とレベル分け
⇒重複する講座の整理・統合
⇒不足している講座の新設

施策2:受講前アンケートの実施
⇒受講者に現在の課題を事前に回答させる
⇒受講者に修得目標を設定させる

施策3:講座の重要ポイントの策定
⇒1講座につき10個のキーポイントの設定

施策4:テスト結果の即時フィードバック
⇒講座の最後に実施する理解度テストを解説を聞きながら
受講者が自己採点を行い、不明点についてはその場で質問を受けた

これらの施策がどの程度の効果を生み出したのかを分析されています。(下図)


画像引用:企業内研修における研修改善の長期的実践と授業理解度に対する効果の評価 
図2 講座全体の理解度平均値およびフェーズ1に対する効果量の推移

さらに面白いのが、研修をレクチャー型と実習型に分けて分析をされているところです。


画像引用:企業内研修における研修改善の長期的実践と授業理解度に対する効果の評価 
表5 授業形式別講座グループの授業理解度の分散分析・多重比較の結果

効果についての詳細は実際の論文をご覧いただいきたいと思いますが、いくつかピックアップすると以下のように記述されています。

「講座体系の整備」、「講座の重要ポイントの策定」、「テスト結果の即時フィードバック」
理解度上昇に有意に寄与し,それぞれの施策は同程度の効果量を示した。

レクチャー型の場合に実習型より効果が大きく現れた

最後に、論文の本筋とは違いますが、ビジネスゲーム研修という「実習型」の研修を提供する弊社としては、下記の記述がとても気になりました。

レクチャー型の理解度平均値は、フェーズとともに上昇しているが、
全フェーズにわたって実習型より低かった

図にすると下記のようになります。

画像引用:企業内研修における研修改善の長期的実践と授業理解度に対する効果の評価 
図3 授業形式別講座グループの理解度平均値の推移

まとめ

いかがでしょうか。今回は「研修の改善」についての論文について紹介しました。
このように長期に渡って改善施策を実施し、それを定量的に分析していくことはとても重要だと思います。
ぜひ論文も読んで頂ければと思います。

企業内研修における研修改善の長期的実践と
授業理解度に対する効果の評価

佐々 裕美, 向後 千春

日本教育工学会論文誌45 巻 (2021) 2 号

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjet/45/2/45_44124/_article/-char/ja/


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