簡単に解説!システム原型その7:成功には成功を

限られた資源(予算・人員・注目)が、初期に少しでも成果を出した側に偏って配分され続けることで、成功者がさらに成功し、敗者が固定化していくシステム原型です。対処は ①資源配分ルールの明文化 ②敗者復活の仕組み導入 ③多軸評価の導入 の3つ。
【この記事で分かること】
・成功には成功をの構造と因果ループ図
・マタイ効果との関係
・勝者総取りを是正する3つのアプローチ
目次
1. 成功には成功をとは
2. 因果ループ図の読み方(+/ー、S/O)
3. 成功には成功をの構造(4ステップ)
4. ビジネスで起きる成功には成功を 3つの典型例
5. 成功には成功をから脱却する3つのアプローチ
6. 関連研修|システム思考を体感できるビジネスゲーム
7. 「成功には成功を」に関するよくある質問(FAQ)
8. まとめ|資源配分の偏りを構造補正する仕組みを持とう
不定期でお届けしているシステム思考において基本となる8つのシステム原型のご紹介をしていきたいと思います。
今回が7回目で、今回は成功には成功をを紹介したいと思います。
過去のシステム原型 シリーズの記事についてはこちらをご覧ください。
簡単に解説!システム原型 シリーズ
システム原型全般についてはかなり古い本ですが、下記がおすすめです。
参考文献:システム・シンキングトレーニングブック
成功には成功をとは
成功には成功を(Success to the Successful)は、限られた資源(予算・人員・注目・機会)が、初期に少しでも成果を出した側に偏って配分され続けることで、成功者がさらに成功し、敗者が固定化していくシステム原型です。「マタイ効果」とも呼ばれ、本来は実力差が小さかったはずの2者の差が、資源配分の偏りによって構造的に拡大していく点が本質です。

因果ループ図の読み方(+/ー、S/O)
因果ループ図はシステム思考で構造を可視化する基本ツールです。矢印に付いている記号の意味は次の通りです。
「ー」(または「O」=Opposite):原因が増えれば結果は減る、減れば結果は増える(逆方向)
日本の解説では「+/ー」が直感的でよく使われ、海外文献では「S/O」表記が一般的です。意味は同じなので、社内勉強会では「+/ー」、原書を参照する場面では「S/O」と使い分けるとよいでしょう。
なお因果ループ図そのものの定義は以下のとおりです。
参考文献:システム・シンキングトレーニングブック
成功には成功をの構造(4ステップ)
成功には成功をは、4つのステップが連鎖して悪化します。
2. AとBの初期成果に小さな差が生まれる。Aの方がわずかに成果を出す(+)
3. 評価者がAに資源を多く配分する。Aはさらに成功しやすくなる(+)
4. Bは資源不足のまま成果が出せず、評価がさらに下がる。AとBの差が拡大して固定化する(増幅ループ)
ポイントは「初期の小さな差」が「資源配分の偏り」を経て「実力差そのもの」に転化していく点です。実際にはBもAと同等の潜在能力を持っていた可能性があるのに、資源を与えられないために検証されないまま機会が失われます。これは個人レベルだけでなく、部署・事業部・国家・経済階層など、あらゆるスケールで観察される強力な構造です。
ビジネスで起きる成功には成功を 3つの典型例
成功には成功をは、社内の資源配分から経済全体まで広く見られる構造です。代表的な3つの例で確認します。
例1: 新規事業予算の偏り
複数の新規事業が立ち上がった時、初年度に少しでも売上が立った事業Aに翌年度の予算が手厚く配分され、それ以外の事業Bは「もう一年様子見」となります。AはB比で人員も広告予算も増え、結果としてさらに成果を出します。Bは予算が削られたまま、市場検証もできずに撤退判断を迫られます。実は事業Bの方が長期市場規模は大きかったケースも多く、初期判断の偏りが企業の中長期成長を狭めてしまう典型です。
例2: エース社員への案件集中
「あの人に任せておけば安心」という評価で、難易度の高い案件がエース社員Aに集中します。Aは経験の蓄積で実力をさらに伸ばしますが、それ以外のメンバーBは挑戦機会が回ってこず、難案件をこなすスキルが育ちません。結果としてAへの依存度が高まり、Aが退職した瞬間にチーム全体の機能が停止する「属人化リスク」が表面化する構造です。本来であればBにも機会を回して全体能力を底上げすべきところ、短期最適化の力が働いてしまいます。
例3: 部門間の経営層注目格差
経営層の関心が当たっている部門Aは、月次会議の議題やリソース配分で優先扱いされ、課題解決のスピードが上がります。一方、関心の薄い部門Bは課題が放置されがちで、業績が伸びず、経営層の関心はさらに離れていきます。「結果を出している部門に注目する」のは合理的に見えますが、実は「注目しているから結果が出やすい」という逆方向の因果も存在し、注目の偏りが部門間格差を構造的に拡大させていきます。
成功には成功をから脱却する3つのアプローチ
成功には成功をから脱却するには、「資源配分が偏る構造そのもの」を意識的に補正する仕組みが必要です。
1. 資源配分ルールを事前に明文化する
「成果が出ている方に追加投下する」という暗黙のルールを言語化し、「どの段階で・どんな指標で・どれだけ追加配分するか」を事前に合意します。判断者の心理的バイアス(成功している側を応援したい気持ち)に流されず、ルールベースで配分することで、初期差の過剰拡大を防げます。
2. 敗者復活の仕組みをあらかじめ用意する
予算配分や案件アサインの場で「下位50%にも一定枠で再挑戦機会を与える」というルールを設けます。新規事業ポートフォリオなら「3年に1度の再評価枠」、人事アサインなら「ストレッチアサインの月次枠」など、敗者復活の機会を仕組みに組み込むことで、初期偏在の固定化を防げます。
3. 多軸評価で「成功」の定義を広げる
短期売上や成果数値だけで判断すると、初期差がそのまま増幅されます。「学習スピード」「市場理解の深さ」「将来ポテンシャル」など、複数軸で評価することで、初期成果が小さくても潜在価値の高い事業・人材に資源を回せます。1指標での序列化を避け、評価を多次元化することが構造補正の核です。
「成功には成功を」に関するよくある質問(FAQ)
Q1. 成功には成功をとはどんなシステム原型ですか?
限られた共有資源(予算・人員・経営層の注目・案件機会)が、初期に小さな成功を収めた側に偏って配分され続けることで、勝者がさらに勝ち、敗者がさらに敗れる固定化が進むパターンです。組織内の事業・部門・プロジェクト間の競争で頻繁に観察されます。
Q2. マタイ効果との違いは何ですか?
マタイ効果(社会学者マートンが命名)は科学界での名声・評価が一部の研究者に偏る現象を指し、成功には成功をのシステム原型はそれをより一般化したものです。両者は同じ構造を異なる視点から記述しており、実質的に同義と捉えて差し支えありません。
Q3. 組織内ではどんな例で起きますか?
①初期に当たった新規事業に予算が集中し、潜在力のある別事業が後回しになる、②エース社員に良い案件が集まり続け、他のメンバーの成長機会が失われる、③過去の実績がある部門だけに経営層の注目が集まる、などが典型例です。長期的には組織全体の選択肢が痩せ細るリスクがあります。
Q4. 成功には成功をの弊害は何ですか?
①敗者側の意欲低下と離職、②勝者側の慢心とイノベーション停滞、③組織全体の選択肢の狭さ、④外部環境変化への脆弱性、が主な弊害です。短期業績は最大化しやすい一方、変化への適応力を失うため長期的なリスクが大きい構造です。
Q5. 是正する方法はありますか?
①資源配分ルールを明文化し例外運用を減らす、②敗者復活枠(再挑戦予算・人事ローテーション)を制度化する、③売上以外の評価軸(学習量・改善提案・顧客満足)を併用する、の3つが基本です。経営層の「えこひいき」を許さないガバナンス設計が鍵となります。
関連研修|システム思考を体感できるビジネスゲーム
成功には成功をを含むシステム原型は、座学だけでは「わかったつもり」で終わりがちです。HEART QUAKEではシステム思考を体感的に学べる研修ゲームを複数提供しています。
ビールゲーム|システム思考の古典・MITスローン経営大学院発祥
サプライチェーンを4つの役割(小売/卸/メーカー/工場)で分担し、需要変動への対応を体感する古典的なビジネスゲームです。各プレイヤーが個別最適で動くと、なぜ全体としては需要変動が増幅していくのか(ブルウィップ効果)が体感できます。資源配分の偏りや情報非対称性が積み重なるとシステム全体がどう歪むか、を実感できる教材として企業研修で広く活用されています。

その他おすすめのシステム思考系ゲーム
・SDGs×システム思考 共有地の悲劇ゲーム:共有資源の悲劇を体感
参考文献として、システム原型を体系的に学ぶならダニエル・キム『システム・シンキングトレーニングブック』が定番です。古本でしか手に入りにくい名著ですが、社内勉強会の教材としても適しています。
まとめ|資源配分の偏りを構造補正する仕組みを持とう
成功には成功をは、初期の小さな差が資源配分の偏りを経て構造的な格差に転化していくシステム原型です。「成功者をさらに伸ばす」という短期合理性に従っていると、敗者側の潜在能力を検証する機会が失われ、組織全体の選択肢が狭まります。資源配分ルールの明文化・敗者復活の仕組み・多軸評価という3つの構造補正を組み込み、組織の長期的な成長余地を維持していきましょう。
シリーズで他のシステム原型も解説していますので、合わせてご覧ください。

