権限移譲の7つのレベルとデリゲーションポーカー
「もっと部下に任せたい」、「いや、まだ任せるのは不安だ」
管理職の方はこんな心の声と葛藤しているかもしれません。
多くの場合、ここで語られている“権限移譲”は、「任せる/任せない」の二択
で捉えられがちです。
しかし実際のマネジメントは、そんなに単純ではありません。
権限移譲には、明確なグラデーションがあります。
それを整理した考え方が、今回紹介する「権限移譲の7つのレベル」です。
権限移譲の7つのレベルとは?
「権限移譲の7つのレベル」は、Management 3.0 を提唱したユルゲン・アペロ
によって整理された考え方です。
ポイントはとてもシンプルで、「この意思決定は、誰がどこまで決めていいのか?」を7段階
で表しています。
大まかに言うと、
レベル4:対等な合意形成
レベル5〜7:部下主導
という構造になっています。具体的なレベルの説明に移っていきます。
7つのレベル:一覧
まずは全体像をまとめると以下の図となります。

ここからは1レベルずつ解説していきます。
レベル1:Tell(指示する)
マネジャーが意思決定を行い、部下に指示します。
説明の必要はなく、緊急時やリスクが極めて高い場面に適しています。
レベル2:Sell(説明・説得する)
意思決定はマネジャーが行いますが、
なぜその判断に至ったのか
を丁寧に説明し、部下に納得してもらう段階です。
レベル3:Consult(相談する)
マネジャーが決める前に、部下の意見を聞きます。
部下の意見を尊重しますが、最終決定権はマネジャーにあります。
レベル4:Agree(合意する)
マネジャーと部下が対等に話し合い、
全員が合意した内容で意思決定を行います。
チームルールや方針決定などで使われることが多いレベルです。
レベル5:Advise(助言する)
意思決定は部下が行い、マネジャーは助言を行います。
ただし、その助言に従う義務はありません。
レベル6:Inquire(報告を受ける)
部下が意思決定し、実行します。
マネジャーは事後に報告を受けるだけという関わり方です。
レベル7:Delegate(完全に任せる)
意思決定から実行まで、マネジャーは一切関与しません。
専門性が高い領域や、成熟したチームで成立するレベルです。
以前紹介した「7つのステップ」との違いは?
ここで、以前当ブログで紹介した「部下に仕事を任せる7つのステップ」
との違いを整理しておきましょう。
部下に仕事を任せる7つのステップ

同じ「7」という数字を使っていますが、この2つは役割が異なります。
違いを簡単にまとめると以下のような説明になります。
仕事を渡す際の「手順・プロセス」。
任せる前後で、上司がどう関わるかを時系列で整理した考え方。
7つのレベル(今回の記事)
意思決定の「度合い・権限の境界線」。
上司と部下のどちらが、どこまで決めるのかを示す目盛り。
たとえば、
7つのステップ(過去記事)では1つめのステップが「マネージャーが自分でやる」であるに対して、
7つのレベル(今回の記事)ではレベル1が「Tell(指示する):マネジャーが意思決定を行い、部下に指示」となっており、実行をどちらが担うのか?といった違いがあります。
どのレベルが正解、という話ではない
ここで注意したいのは、
レベル7が最も優れているわけではない
という点です。
リスクが高い判断や、法令遵守が絡む領域では、
レベル1〜3が適切な場合もあります。
重要なのは、
を、マネジャーが意図的に選んでいるかどうかです。
デリゲーションポーカーとは?

画像引用:https://nuworks.jp/ja/product/del-poker/
ここまで紹介してきた「権限移譲の7つのレベル」は、
理解するだけでは終わらせにくいという特徴があります。
実際の現場では、
「部下はレベル2だと思って動いていた」
といったように、認識のズレが起こりがちです。
このズレを、感覚や経験談ではなく、具体的な対話と合意によってすり合わせるためのワークが、
デリゲーションポーカーです。
デリゲーションポーカーは、7つのレベルをカードとして用い、上司とメンバーが
「このテーマは、どのレベルが適切か」
を同時に示し、話し合うことで、権限の境界線を明確にしていきます。
権限移譲を「センス」や「覚悟」の問題にせず、チームで話せるテーマに変える。
それが、デリゲーションポーカーの最大の特徴です。
デリゲーションポーカーの具体的な進め方や、研修・チームミーティングでの活用方法については、別の記事で詳しく紹介します。
まとめ:認識のズレを「合意」に変える
権限移譲がうまくいかない原因の多くは、能力や意欲の問題ではありません。
部下は「指示待ち(レベル1)」
という、目に見えない認識のズレにあります。
権限移譲の7つのレベルは、こうしたズレを言葉にして共有するための共通言語です。
そして、その共通言語を使って「どのレベルが適切か」をチームで話し合うための実践的な手段が、
デリゲーションポーカーです。
次回の記事では、このデリゲーションポーカーの具体的な進め方や、研修・チームミーティングでの活用方法について、詳しく紹介したいと思います。
