デリゲーションポーカーのやり方
前回の記事では、権限移譲のグラデーションを可視化する「権限移譲の7つのレベル」を紹介しました。

権限移譲の7つのレベルの記事
しかし、理論を理解するだけでは実務は変わりません。この共通言語を使い、チームの合意をつくるには、もう一歩踏み込む必要があります。
そこで役に立つのが、デリゲーションポーカーです。

画像引用:https://nuworks.jp/ja/product/del-poker/
これはManagement 3.0のプラクティスの一つで、ゲーム形式でチーム内の権限のレベルをすり合わせていくワークショップです。
「権限の境界線が曖昧で、誰が決めるべきか迷う」という状態を、言語化・視覚化していく強力なツールとなります。
デリゲーションポーカーの準備物
ワークを円滑に進めるために、以下の2点を用意しましょう。
参加者全員に1セットずつ配布します。専用カードがなくても、数字を書いた付箋や名刺カードでの提示でも代用可能です。
2. 話し合う「トピック(業務シーン)」のリスト
「何を」任せるかを決めるためのお題です。(後述の具体例を参照)
付箋や模造紙を用意すると良いでしょう。
なお、デリゲーションカードは以下からPDF版が無料でダウンロード可能です。
印刷して利用して下さい。

デリゲーションカード(PDF、無料)
実際の進行手順:4つのステップ
1つのトピックにつき5〜10分程度を目安に進めます。
ステップ1:トピック(お題)を提示する
ファシリテーターが「この業務について考えましょう」とお題を出します。
ステップ2:各自でカードを選ぶ(思考タイム)
各自が「この業務はレベル○で運用するのが適切だ」と考え、カードを1枚選びます。
この際、他人の意見に流されないよう伏せておくのがポイントです。
ステップ3:せーので公開!(ポーカー)
「せーの」でカードを一斉に公開します。
ここで、「上司はレベル2(説明)だが、部下はレベル6(報告)だと思っていた」といった
認識のズレが視覚的に明らかになります。
ステップ4:対話と合意
異なる数字を出した人、特に「最大値」と「最小値」を出した人を中心に理由を共有します。
「責任の所在が不安」「現場の状況を一番知っているから」といった本音を出し合い、
最終的にチームとして納得できるレベルの合意を目指します。
よくある「ズレ」と対応のポイント
1. 「数字を揃えること」をゴールにしない
全員が同じレベルになる必要はありません。大切なのは「なぜそのレベルだと思ったのか」という背景にある期待値や不安の正体を共有することです。
2. 「現在」と「理想」のギャップを話す
「今はレベル2だが、3ヶ月後にはレベル5で任せられる状態を目指そう」といった
育成のロードマップとして活用すると、部下の主体性が高まります。
3. 「全部丸投げ」が正解ではない
マネジャーが責任を持つべき領域(法令遵守や重大リスクなど)はレベル1〜3であっても問題ありません。重要なのは、どのレベルかを意図的に選んでいることです。
決めた内容を可視化し続ける「デリゲーションボード」
デリゲーションポーカーで盛り上がり、合意形成ができたとしても、時間が経てば「あれ、これってどのレベルでやるんだっけ?」と忘れてしまうものです。
そこで活用したいのがデリゲーションボードです。

画像引用:https://developers.cyberagent.co.jp/blog/archives/13234/
デリゲーションボードとは、縦軸に「業務トピック」、横軸に「7つのレベル(1〜7)」をとったマトリクス表です。ポーカーで合意したレベルの箇所に、担当者の名前やアイコンを配置して、
誰でもいつでも「権限の所在」を確認できる状態にします。
- 言った言わないの防止: 「任せたはず」「聞いていない」というトラブルを物理的に防ぎます。
- 透明性の向上: チームメンバー全員が、誰がどこまで決めていいのかを知っているため、情報の淀みがなくなります。
- 継続的な改善: 「このトピック、レベル3でやってみたけど、やっぱりレベル5に上げませんか?」といった見直しのきっかけになります。
ポーカーを「単なるイベント」で終わらせず、このボードとしてオフィスやオンラインホワイトボードに掲示し、定期的にメンテナンス(見直し)すること。これこそが、自律的なチームへと成長し続けるための秘訣です。
サイバーエージェントさんでの事例

少し前の記事にはなりますが、サイバーエージェントでの実施の様子がブログにまとまっております。
※弊社で実施したものではありません
権限委譲で自己組織化を促す!デリゲーションポーカー×実践的ワークショップのススメ
まとめ:権限移譲を「センス」から「仕組み」へ
権限移譲がうまくいかない原因の多くは、能力不足ではなく「境界線の曖昧さ」にあります。
デリゲーションポーカーという「遊び心のある仕組み」で合意をつくり、デリゲーションボードという「可視化の仕組み」で運用する。
この2つをセットで導入することで、上司も部下も安心して挑戦できる自律的な組織へと一歩近づきます。
まずは、次回のチームミーティングで1つだけお題を出して、デリゲーションポーカーを試してみてください。
参考になれば幸いです。
