問題解決研修で学ばせたい3つのこと
「問題解決研修」と聞いて、多くの担当者が真っ先に思い浮かべるのはロジカルシンキングやMECE・ロジックツリーなどの分析フレームワークではないでしょうか。
確かにこれらは問題解決のなかでも重要なスキルですが、それだけでは現場の問題を解決する力は身に付きません。本記事では、問題解決研修を企画する際に本当に学ばせたい3つのことを、問題発見 → 根本原因分析 → 解決策立案の流れに沿って整理していきます。
問題解決研修とは?
「問題解決 研修」を検索してみると、世の中の研修プログラムには以下のようなワードがよく出てきます。
・論理的思考(ロジカルシンキング)
・MECE
・ロジックツリー
・PDCA
・なぜなぜ分析
・クリティカルシンキング
これらを見ると、世の中の問題解決研修はいわゆるロジカルシンキング研修に近い設計になっていることが分かります。つまり、すでに問題が見えている前提で、それを分析するフェーズにフォーカスしている研修が多いのです。
分析だけでは問題解決にならない
しかし、ビジネスの現場では、「分析は上手にできたが実行できない」「そもそも何が問題か見えていない」といった悩みのほうがよく聞かれます。問題解決という言葉が本来持つニュアンスはもっと広く、以下の3ステップをすべて含むものだと考えるべきです。

・What: 問題発見 (そもそも何が問題なのか気づく)
・Why: 根本原因分析 (なぜその問題が起きているのか掘り下げる)
・How: 解決策立案 (根本原因をどう解決するか考える)
この3つがそろって初めて「問題が解決する」ところまで到達できます。研修の設計もこの3ステップの全体像を意識して組み立てる必要があります。
問題解決研修で学ばせたい3つのこと
前節の全体像を踏まえると、問題解決研修では次の3つのことを学んでもらうのが理想です。

・1. 問題を発見する方法 (What)
・2. 問題の根本原因を見つける方法 (Why)
・3. 解決策を考えるための方法 (How)
それぞれを順に見ていきましょう。
1. 問題を発見する方法 (What)
問題解決の第一歩はそもそも問題に気づくことです。現場では、問題が問題として認識されていないことが非常に多くあります。「昔からこういうものだから」「困っているけど仕方ない」と受け入れられてしまっているケースです。
問題とは「あるべき姿と現状のギャップ」
ビジネスでよく使われる定義では、問題 = あるべき姿(To-Be) − 現状(As-Is)です。問題を発見するとは、言い換えればあるべき姿を言語化し、現状との差を見える化することに他なりません。
問題発見が難しい理由は、この「あるべき姿」が曖昧なまま放置されていることにあります。研修ではまず「理想状態を描く」「目標から逆算する」という思考の型を身につけてもらうのが入口です。
「問題」と「課題」の違い
似た言葉に「課題」があります。両者を分けて扱うと議論が整理しやすくなります。
・問題: あるべき姿と現状のギャップそのもの (例: 離職率が業界平均より5%高い)
・課題: 問題を解決するために取り組むべきこと (例: 入社3年目までのフォロー体制を構築する)
「問題と課題がごちゃ混ぜになっている」職場では議論が堂々巡りしがちなので、研修でこの違いを明確に伝えておくと現場で効きやすい知識になります。
デザイン思考の「観察」で問題を発見する
分析だけでは見つからない問題を発見するには、デザイン思考の「観察」が有効です。現場や顧客のそばに行き、行動や発言を丁寧に観察することで、本人すら言語化できていない不便や違和感が浮かび上がります。
研修では「職場の一日を写真と時間軸で記録する」「顧客の行動を第三者視点でメモする」といった観察ワークを取り入れると、座学だけでは得られない気づきが生まれます。
2. 問題の根本原因を見つける方法 (Why)
問題が見つかったら、次はなぜそれが起きているのかを掘り下げます。表面的な原因だけを叩いても問題は再発するので、根本原因(ルートコーズ)の特定が重要です。
ロジックツリー
根本原因分析の定番ツールがロジックツリーです。問題を頂点に置き、「なぜ起きているか」の仮説を枝分かれさせて、ツリー構造で整理する手法です。
ロジックツリーを使う際のコツは、MECE(漏れなく・ダブりなく)を意識することと、1段目の分岐で大きく切り分けることです。「人/モノ/カネ」「内部/外部」「プロセス/スキル/意識」のように、最初の切り口を丁寧に選ぶとその後の分析が深くなります。
なぜなぜ分析
トヨタ生産方式由来のなぜなぜ分析は、「なぜ?」を5回繰り返して真因にたどり着く手法です。シンプルですが、目の前の症状だけで止めないための強力なクセづけになります。
注意点は、「人のせい」で止めないことです。「担当者が確認を怠ったから」で終わらせると再発防止策が「本人の注意」にしかならず、仕組みでの解決につながりません。なぜなぜを回すときは「仕組み」「プロセス」「情報の流れ」にフォーカスを戻す意識が必要です。
システム思考とボトルネック
より複雑な問題にはシステム思考が役立ちます。問題を単独の事象として扱うのではなく、複数の要素が相互に影響し合うループとして捉える思考法です。
また、ボトルネックの特定も重要な視点です。業務プロセスや組織のどこが「詰まり」になっているかを見つければ、そこを集中的に改善することで全体の流れが大きく変わります。制約条件理論(TOC)の考え方とも通じる視点です。
3. 解決策を考えるための方法 (How)
根本原因が特定できたら、いよいよ解決策の立案です。ここで多くの研修が手薄になりがちですが、原因が分かっても解決策がなければ実際の改善には結びつきません。
ブレインストーミング / ブレインライティング
アイデア出しの定番がブレインストーミングです。批判しない・量を出す・自由奔放・結合改善という4原則を守って発想を広げる手法です。
声の大きい人に引っ張られがちな欠点を補うのがブレインライティングです。6人が1人3アイデア × 5分 × 6ラウンドで108個のアイデアを生み出す「6-3-5法」などが有名です。口頭ではなく紙に書くので、内向的な参加者も対等に貢献できる点が大きな強みです。
SCAMPER (アイデア発想の7視点)
発想が行き詰まったときに使える思考ツールがSCAMPERです。Substitute(代替)/Combine(結合)/Adapt(応用)/Modify(修正)/Put to other uses(転用)/Eliminate(除去)/Reverse(逆転)の7つの視点で既存のものに問いをぶつけ、新しい切り口を引き出します。
KJ法 / 親和図法
大量のアイデアが出たあと、それらを分類・構造化するにはKJ法(川喜田二郎氏が考案した親和図法)が便利です。付箋1枚に1アイデアを書き、似たもの同士でグルーピングしていくことで、優先すべき方向性が見えてきます。
なぜ3ステップで設計すべきか
ここまで紹介した3ステップを、別々の研修として実施するのではなく一続きの流れとして学ばせることが、研修設計の要点です。
ステップを分けない研修の罠は、例えば次のようなかたちで現れます。
・「問題発見」だけを教える研修 → 問題リストは増えるが、原因が分からず解決できない
・「根本原因分析」だけを教える研修 → ロジックツリーは綺麗だが、そもそも扱っている問題が些末だったり、解決策まで考えていない
・「解決策発想」だけを教える研修 → アイデアは出るが、実は真因がズレていて効果が出ない
3ステップが繋がっていないと、参加者は「部分最適の道具」を手に入れただけで、現場に戻っても使えません。研修では短時間で良いので、1つのケースについて3ステップを通しで回す体験をさせるのが重要です。
問題解決研修設計の4つの落とし穴
実際に問題解決研修を企画・運営すると、以下のような落とし穴にハマりがちです。事前にチェックしておくと安全です。
落とし穴1: 分析偏重
ロジックツリーやMECEの講義に時間の大半を割いてしまい、問題発見・解決策立案の時間が足りなくなるパターンです。分析フレームワークは強力ですが、全体の1/3程度の比重に抑えるのが目安です。
落とし穴2: 現場から乖離した題材
ケーススタディで使うシナリオが架空すぎると、参加者は「研修では解けるけど職場では使えない」という状態になります。自社の実際の課題やそれに近い題材を使うと、学んだフレームワークがそのまま現場に持ち帰れます。
落とし穴3: 実行計画まで作らない
解決策を出して終わり、では研修の効果は限定的です。「いつ・誰が・どこまでやるか」の実行計画を研修内で作ってもらい、上司と共有するところまで設計すると、研修が行動変容につながりやすくなります。
落とし穴4: 個人スキル止まり
問題解決は個人の頭の中で完結しない仕事が多く、チームでの議論が必要です。研修を個人ワーク中心にすると、「自分は分かるけど上司を説得できない」「チームで合意形成できない」という状態で止まります。グループディスカッションやファシリテーション体験を組み込むと、実務と地続きになります。
具体的なゲーム教材は別記事で紹介
問題解決研修をより効果的にするには、座学だけでなく体験型のビジネスゲームを組み込むのも有効です。ハートクエイクでは、問題発見・分析・解決策立案の3ステップに対応したビジネスゲームをいくつかご用意しています。
具体的なゲーム教材や、3ステップ別の使い分けについては以下の記事で詳しく解説しています。
問題解決研修で使えるビジネスゲーム5選|3つのステップ別に解説
参考書籍
問題解決のフレームワークを体系的に学ぶには、以下の書籍が定番として広く読まれています。
安宅和人氏の『イシューからはじめよ』は、問題解決の”最上流”である「何を考えるべきか(イシュー)」の見極め方を扱った定番書です。本記事で触れた「問題発見」のパートに直結する内容で、問題解決研修の講師側の予習にもおすすめです。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 問題解決研修は何時間くらいかければよいですか?
最低でも半日(4時間)、できれば1日(6〜8時間)を確保するのが理想です。本記事の3ステップを一通り体験するには、各ステップに1〜2時間ずつ割り当てるのが現実的です。半日枠しか取れない場合は、問題発見と解決策立案を削って根本原因分析に絞るのではなく、逆に短いケースで3ステップを通しで回す構成にしたほうが学びが残りやすいです。
Q2. ロジカルシンキング研修とは別物ですか?
重なる部分もありますが、ロジカルシンキング研修は「分析と伝達の思考フレーム」にフォーカスする傾向が強く、問題発見や解決策立案のステップまでカバーしないことが多いです。問題解決研修はその3ステップ全体を扱うため、より実務に近い射程になります。両者を併用するなら、問題解決研修のほうを総合的なプログラムとして位置づけ、ロジカルシンキング研修は分析スキルを補強するオプションと捉えるのが整理しやすい考え方です。
Q3. 新入社員にも問題解決研修は有効ですか?
有効ですが、題材選びに工夫が必要です。新入社員は現場の問題を自分ごととして認識する経験値がまだ少ないため、業務の外側の身近な題材(サークル運営、アルバイト、学生生活など)を起点にしたほうが思考が動きます。慣れてきたら、配属先の業務課題に徐々にシフトしていく設計がおすすめです。
まとめ
問題解決研修で学ばせたい3つのことは、以下の通りです。
・1. 問題を発見する方法 (What: あるべき姿と現状のギャップを見つける)
・2. 問題の根本原因を見つける方法 (Why: なぜその問題が起きているかを掘り下げる)
・3. 解決策を考えるための方法 (How: 根本原因にアプローチする具体策を立案する)
世の中の問題解決研修は「分析」に比重を置きがちですが、実務で成果につながる研修は、問題発見から解決策立案まで3ステップを一続きで扱うものです。分析偏重・現場乖離・実行計画不在・個人スキル止まりといった落とし穴を避けながら、3ステップを通しで体験できるプログラムを設計してみてください。
具体的なビジネスゲーム教材や、ステップ別の使い分けは問題解決研修で使えるビジネスゲーム5選の記事もあわせてご覧ください。
