今回は企業の目標管理手法として定着したOKR(Objectives and Key Results)について、Oの立て方だけでなく「KR(Key Results)の設定」で多くの企業がつまずくポイントと、その解消に役立つ因果ループ図の使い方を解説します。

OKRは2020年前後から日本でも急速に広まり、2025年現在ではメルカリ、サイバーエージェント、freeeなど多くの企業で採用されています。一方で「Oはそれっぽく書けたが、KRが単なるToDoリストになっている」「KRを達成してもOに近づいた実感がない」という相談も増えています。本記事は、そうした”OKRを導入したが効かない”状態から抜け出すためのKR設計の考え方を整理するものです。

OKRとは|GoogleとインテルでうまくいったマネジメントOS

OKR

OKRはObjectives(目標)Key Results(主要な成果指標)の頭文字をつないだ名称で、1つのOに対して3〜5個のKRを紐づけ、四半期ごとに進捗を確認する目標管理フレームワークです。

Googleのre:Workによれば、OKRは創業当初からGoogleに出資してきた投資家であるジョン・ドーア氏がGoogleに持ち込んだものです。ジョン・ドーア氏自身は、インテル在籍時にインテルの元CEOアンディ・グローブ氏からこの考え方を学んだとされています。つまりOKRは、ハイテク企業の急成長を支える現場で磨かれてきた実戦的な目標管理OSなのです。

参照元:Google re:Work|OKRで目標を設定する

OKR・MBO・KPIの違い

よく混同されるのでここで整理しておきます。

手法 目的 サイクル 達成率の目安
OKR チームのベクトルを揃え、挑戦的な成長を促す 四半期 60〜70%(あえて未達上等)
MBO 個人の業績を評価・処遇に反映する 半期〜1年 100%(未達=評価ダウン)
KPI 事業・業務プロセスを数値で管理する 日次〜月次 100%(クリア前提)

OKRは評価制度ではなく「方向性合わせ」のツールです。達成率を人事考課に直結させた瞬間に、メンバーは「達成できるOを設定する」ようになり、OKR本来の”ストレッチ”が失われます。

Objectives(O)の設定ポイント|60〜70%達成のストレッチ目標

Oとなる目標はワクワクする、野心的であることが重要で、達成率が60〜70%になるような目標にすることが求められます。Google re:Workには次のように書かれています。

目標は、場合によっては若干気後れするくらいの高いレベルに設定します。

引用:Google re:Work

「若干気後れするくらい」が重要です。100%達成できるOは、裏を返せばチームの能力を最大限に引き出せていない目標です。OKRは現状の延長ではなく、非連続な成長を引き出すためにあえて背伸びさせる仕組みだからです。

ストレッチ目標を全員でどう体感するかは、以下のゲーム型研修が短時間で効果的です。

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また、Oを言語化する際の具体的な目標設定のコツは、以下の定番フレームワーク「SMARTの法則」と合わせて考えると実務で使いやすくなります。

目標設定の際に参考にしたいSMARTの法則とは

Key Results(KR)の設定ポイント|ToDoではなく「測れる成果」

ここからが本記事の本題です。多くの企業がOKR運用でつまずくのは、OではなくKRの設計においてです。

よくある失敗パターンが、KRが次のようなToDoリスト化してしまうケースです。

NGなKR(ToDo化) OKなKR(成果指標)
新機能を5つリリースする 新機能利用率を20%→45%に引き上げる
営業を100件かける 商談化率を8%→15%に改善する
採用イベントを3回開催する エンジニア応募者数を月10名→30名にする

NGの例は「行動」を書いているだけで、それが達成されてもOに近づいたかどうかはわかりません。一方OKの例は「数値の変化」として成果を定義しており、達成時にOに前進したことが明確に判定できます。

では、どの数値をKRに置けばよいのか?

ここで役に立つのが因果ループ図の発想です。

これは有名な「ジェフ・ベゾスのナプキンメモ」と呼ばれる図で、Amazonの成長エンジンがどの要素同士で回っているかを端的に表しています。

真ん中のGrowth(成長)がObjectives、その周りに配置されたSelection(品揃え)/Customer Experience(顧客体験)/Traffic(来客数)/Sellers(ベンダー数)がKRの候補です。

この4つの数値が上向き続ければ、真ん中のGrowthは自然と加速する、というロジックが一枚の絵で表現されています。

因果ループ図でKRを決める3ステップ

自チームのKRを因果ループ図で導くときは、次の3ステップが使えます。

ステップ やること
①Oを中心に置く 達成したい最終状態(例: ARR 10億円)を図の中心に書く
②引き上げると中心が動く変数を洗い出す 顧客数/単価/解約率/紹介率など、上下すると中心に影響する数値を列挙
③矢印で因果関係をつなぐ 「→」で “AがBを増やす/減らす” を可視化。ループ(循環)を見つける

ここまで描ければ、レバレッジが大きい(=中心を最もよく動かす)変数が見えてきます。そこを3〜5個選んで数値目標化したものが、そのままKRになります。

因果ループ図の書き方をもう少し丁寧に押さえたい方は、以下の記事をあわせて参考にしてください。

システム思考における因果ループ図の読み書き入門

OKR運用でよくある失敗と、それを回避するコツ

OKRを入れても成果が出にくい企業には、共通したつまずきがあります。

つまずきパターン 回避のコツ
①評価制度と直結させる 達成率を報酬・等級と切り離す(60〜70%が正常と宣言)
②KRがToDo化 「数値の変化」で書き切る。動詞ではなく指標で定義
③四半期で置きっぱなし 週次1on1でKRの進捗とネクストアクションを確認
④上位OKRとの紐付けが弱い 会社→部署→個人のOKRを階層で可視化
⑤上司と部下の対話頻度不足 OKRを支える仕組み「CFR」を回す

特に⑤のCFR(Conversation/Feedback/Recognition)はOKRとセットで導入される考え方で、OKRの数値を人の動きに変換するための対話の仕組みです。OKRだけを入れて対話が足りていないチームには効きます。

OKRを支えるCFRとは?

また、KR未達だった部下への向き合い方で悩む管理職の方は、以下の記事も参考になります。

目標未達の部下へのフィードバック|4つのケース別の対処法と声かけ例

まとめ

OKRのやり方として、Objectivesの設定はもちろんですが、成果を決定づけるのはKRの設計です。なぜなら、誤ったKRを置いてしまうと、KRを全て達成してもOには近づかないからです。

KR設計では次の3点を押さえてください。

①ToDoではなく「数値の変化」で書く
②因果ループ図でOを動かす変数を棚卸しする
③レバレッジの大きい3〜5変数をKRに昇格させる

そして、ストレッチな目標を全員で体感する機会として、ゲーム型研修「スピードタッチ」は短時間で導入効果を出しやすい選択肢です。

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