「失敗」を振り返る際の10の原因分析

プロジェクトで失敗が起きた時、「原因は○○さんの注意不足」で片付けて終わっていませんか?多くの組織で、失敗の原因分析は個人の不注意に帰着されがちですが、本来は個人要因だけでなく組織要因まで含めて分析しないと、同じ失敗が繰り返されます。
本記事では失敗学の視点から、失敗を体系的に分類する10の原因分析を紹介します。チームの振り返りに取り入れることで、失敗から学習する組織へと変わっていくヒントが得られます。
目次
1. 失敗の10の原因分類
2. 個人要因と組織要因のグラデーション
3. 医療分野のインシデント分析との共通性
4. チームでの振り返りに取り入れる
5. 失敗を責めない組織文化
6. 関連書籍
7. よくある質問(FAQ)
8. まとめ
失敗の10の原因分類

失敗学で整理される失敗原因の分類は、失敗を大きく10個のカテゴリに分けたものです。面白いのは、1の「無知」から10の「未知」まで、個人に起因する原因から組織・環境に起因する原因までをグラデーションで表現している点です。
2. 不注意:注意や用心の不足など
3. 手順の不遵守:決められた手順の無視など
4. 誤判断:誤った理解や間違った認知など
5. 調査・検討の不足:事前検討の不足など
6. 制約条件の変化:環境の変化など
7. 企画不良:特許や著作権などの権利の構築不良など
8. 価値観不良:異文化理解や世間の理解不足など
9. 組織運営不良:組織の硬直化、管理不良など
10. 未知:異常気象や未知の事象の発生など
個人要因と組織要因のグラデーション
10個の原因は、大まかに以下のように位置付けられます。
個人要因(1〜4)
・無知: 知識・スキルが足りない → 教育で解決しやすい
・不注意: 集中力・注意の欠如 → 仕組みやチェックで予防
・手順の不遵守: ルール破り → 手順を守る仕組み・文化
・誤判断: 判断ミス → 判断基準・経験の蓄積
組織・プロセス要因(5〜9)
・調査・検討の不足: 事前分析の甘さ → 意思決定プロセスの改善
・制約条件の変化: 環境変化 → 適応力とモニタリング
・企画不良: 権利・契約・設計の不備 → 専門家による検証
・価値観不良: ダイバーシティ不足 → 多様な視点の組織的導入
・組織運営不良: マネジメントの問題 → 組織改革
外部要因(10)
・未知: 想定外の事態 → レジリエンス・エンジニアリングで対応
医療分野のインシデント分析との共通性
同様の原因分析は、医療分野でもインシデント分析の標準的フレームワークとして使われています。

画像参照先:レジリエンシャル・メディカル
医療現場は人命に関わるため、原因分析と対策の体系化がビジネス以上に進んでいる領域です。ビジネスの失敗分析にも応用できる知見が多く含まれています。

画像参照先:レジリエンシャル・メディカル 対策
特に対策の分類として態度教育・知識教育・技能教育の3つに分けて処方箋を考える視点は、ビジネスでも有効です。
チームでの振り返りに取り入れる

失敗の10の原因分析をチームでの振り返りに取り入れる場合、以下の流れが効果的です。
1. 失敗・問題を事実ベースで書き出す(5W1H)
2. 10の原因のうち、当てはまるものを複数選ぶ(1つとは限らない)
3. 原因ごとに「個人要因か組織要因か」を仕分ける
4. 個人要因は「態度・知識・技能」のどれか特定する
5. 組織要因は仕組み・プロセス・文化のどこに介入するか決める
6. 具体的な対策を期限付きで合意する
「犯人探し」ではなく、「次に繰り返さないための設計」として原因分析を使うことが重要です。
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プロジェクトの失敗を扱うビジネスゲームをまとめて比較したい方は、別記事のプロジェクトマネジメント研修で使えるビジネスゲーム4選もご覧ください。管理職研修全般で使えるゲームを探している方には管理職研修で使えるビジネスゲーム10選|目的別の選び方と比較表つきが便利です。
失敗を責めない組織文化
失敗の原因分析が機能するには、失敗を責めない組織文化が前提になります。失敗したメンバーを責める文化では、以下が起きます。
・失敗を隠す(報告されない)
・原因が個人要因に短絡される(組織要因が見えなくなる)
・挑戦しなくなる(失敗リスクのある仕事を避ける)
心理的安全性の確保は、失敗から学ぶ組織の土台です。
関連書籍
失敗学・失敗から学ぶ組織論に関する書籍では以下がおすすめです。
よくある質問(FAQ)
Q. 失敗学とは何ですか?
A. 失敗学は、失敗の原因を体系的に分類・分析し、再発防止と組織学習につなげる学問です。畑村洋太郎氏らが提唱し、個人の不注意で済ませず、組織要因・環境要因まで含めて原因を構造化するのが特徴です。
Q. 失敗の10の原因分類はどのように使えばよいですか?
A. プロジェクトの振り返り(KPT・ポストモーテム)で、失敗の原因が「無知(教育で解決)」なのか「組織運営不良(仕組みで解決)」なのかを判別する分類軸として使います。原因のレイヤーが特定できれば、打ち手の方向性も明確になります。
Q. 個人要因と組織要因はどう見分けますか?
A. 1〜4(無知/不注意/手順不遵守/誤判断)は個人要因寄り、5〜9(調査不足/環境変化/企画不良/価値観不良/組織運営不良)は組織要因寄り、10(未知)は外部要因として位置づけられます。実際は複数原因が重なるためグラデーションで捉えるのが推奨です。
Q. 医療業界でもこの分類は使われていますか?
A. はい。医療現場のインシデント・アクシデント分析でも類似の分類体系(人的要因/設備要因/組織要因など)が使われており、SHELLモデルやスイスチーズモデルと組み合わせて活用されています。
Q. 失敗を責めない組織文化を作るにはどうすればよいですか?
A. 心理的安全性を確保した上で、個人の不注意ではなく仕組み・組織の問題として原因を分析するルールを徹底することが重要です。失敗報告のテンプレート化や、ブレームレス・ポストモーテムの導入が代表的な手法です。
まとめ
失敗の10の原因分析は、失敗学で整理された個人要因から組織要因までをグラデーションで捉えるフレームワークです。チーム振り返りに取り入れることで、「犯人探し」ではなく「次に繰り返さないための設計」として失敗を活用できます。
失敗を責めない組織文化と併せて運用することで、失敗から学習する組織への変革が進みます。
