その目標が組織をダメにする(東芝の不正会計より)
2015年7月現在、東芝の不正会計が話題となっています。
「チャレンジ」と呼ばれる過剰な目標設定が不正会計の根本的な原因だと思います。
※challengeには挑戦という意味の他に「難問」という意味もあります。
目標設定は適切に行われれば、個人や組織の能力を超えて成長させる要員になります。
しかし、「度を越えた目標」 は個人や組織を追い詰め、過労死や不正会計の温床となります。
ポイントは「適切な目標設定」のさじ加減がわからないということでしょう。
一方、「利益を2倍にしなさい」と無茶ぶりな目標を設定することでこれまでとは全く違う発想で仕事に取り組み、実際に2倍にできてしまったというケースもビジネス書などではよく見る例です。
目標と行動のイタチごっこ
目標が会社をダメにするという話は以下の本でとても面白く取り上げられています。
「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」
この本の中では、目標は「障害」になるという言葉で以下の様に記載されています。
:
したがって、理にかなう唯一の方法は、売上と利益率と顧客満足度で評価することだ。
すると今度は返品を増やすことになる。返品を無条件で受け付けると、顧客の購買意欲が高まるからだ。ならば返品率の低さも評価基準に加えよう。
さて、この調子でやっていたら、評価基準と目標が際限もなく並ぶだろう。
システム思考(因果ループ図)で考える東芝の例
システム思考の因果ループ図を用いて東芝の例を見てみましょう。
システム思考、因果ループ図についてはこちらを御覧ください。
システム思考における因果ループ図の読む書き入門
下図の様に、一般的にやや高い目標があり、それが質の高い行動を生む要因となります。
その結果として成果が上がった場合、翌年の目標はさらに高いものとなります。
このループを自己強化ループと呼びます。
不正が起こり、膨らむ構造
しかし、ひとたび、行動が成果を生み出さなければ、その穴埋めとして不正が起こります。
その結果、見かけの成果は出ていますから、目標はさらに高くなっていきます。
下の図はそれを表したものです。
さらに高い目標を達成するためにより多くの不正が必要となります。
こうやって不正額が膨らんでいくのです。
第三者委員会の会見では「当期利益至上主義」と言われていましたが、問題の根幹となるメンタルモデルとして、「毎年、利益は上がり続けなければならない」という価値観があります。
企業では当たり前のような価値観ですが、人間の身長や、稲の成長などを考えると(比較対象があまりにも・・・ですが)毎年上がり続けるということ自体に無理があるような気がします。
まとめ
今、自分のしている行動や、会社の戦略・取り組みが中長期的にどのような影響をおよぼすのかを考える上で、システム思考はとても役立ちます。
ぜひ本屋などでシステム思考の本を探してみてください。