論文に見るコンセプチュアルスキル(カッツモデル)の具体例
今回はカッツモデルのコンセプチュアルスキルについて書いてみたいと思います。
カッツモデルとは米国の経営学者であるロバート・カッツ氏が提唱した『役職に応じて必要とされる能力』の割合を考えるフレームワークです。
提唱されている比率は以下の画像のようになっています。
画像引用:https://www.ginza-coach.com/forcustomer/keyword/cat_k/022317.html
上画像の通り、役職が上がるにつれて テクニカルスキル⇒ヒューマンスキル⇒コンセプチュアルスキルと求められる能力が変わってくるというものです。
テクニカルスキルやヒューマンスキルは比較的イメージしやすいですが、コンセプチュアルスキルというのがよくわからないという声がとても多いのです。
HR関連の他の記事を見てみるとよく出てくるのは下記の10個の要素ですが(14個記載しているサイトもあります)、その出典が明らかになっていないように見えます(私の調査不足の可能性もあります)。
・水平思考を意味する「ラテラルシンキング」
・批判的思考を意味する「クリティカルシンキング」
・複数の課題に対応していく「多面的視野」
・多様な価値観を受け入れられる「受容性」
・臨機応変に対応できる「柔軟性」
・新しいものを取り入れていく「知的好奇心」
・物事に深い興味を寄せる「探究心」
・リスクを恐れない「チャレンジ精神」
・全体像を把握する「俯瞰力」
そこで、今回は研究から見いだされたコンセプチュアルスキルの要素というものを探してみました。見つけたのが下記の論文です。
ヒューマンスキル・テクニカルスキル尺度の開発(2018)
荒添美紀,天野雅美,齊藤茂子,金子多喜子
看護教育研究学会誌 (Journal of Academy of Nursing Education Research)
タイトルにもある通り、こちらの論文は中堅看護師の方を対象としてリサーチを行っていますので、ここで抽出された要素がそのまま一般のビジネスの現場でも活用できるかどうかは明確ではないのですが、参考になればと思い、紹介していきます。
画像引用:表 2 中堅看護師のコンセプチュアルスキル尺度の因子分析結果
上の表がリサーチにより抽出された中堅看護師のコンセプチュアルスキルの要素です。
「C3 私は、看護における倫理とは何かを考えている。」や、「C15 私は、看護基準やマニュアルの改善策を考えている。」といった項目は看護師の方ならではの項目だと思いますが、多くの項目については一般のビジネスの現場に置き換えられると思います。(とはいえ、本論文の結果が一般のビジネスの方に適用できるというわけではありません)
より抽象度を高めて、コンセプチュアルスキルの4つの因子について注目してみたいと思います。それが下記の4つです。
第II因子 応用力(α=.84 )
第III因子 問題解決力(α=.83 )
第IV因子 組織貢献力(α=.81 )
この4つの因子まで抽象化すれば一般のビジネスのミドルからトップマネジメントにも必要な因子と言えるのではないでしょうか。
さて、これらの4つの因子を前半で紹介した10個の要素と合わせて考えてみたいと思います。
第I因子 本質を思考する力(α=.89 )
・論理的思考を意味する「ロジカルシンキング」
・水平思考を意味する「ラテラルシンキング」
・批判的思考を意味する「クリティカルシンキング」
第II因子 応用力(α=.84 )
・複数の課題に対応していく「多面的視野」
・臨機応変に対応できる「柔軟性」
・新しいものを取り入れていく「知的好奇心」
第III因子 問題解決力(α=.83 )
・物事に深い興味を寄せる「探究心」
・リスクを恐れない「チャレンジ精神」
第IV因子 組織貢献力(α=.81 )
・多様な価値観を受け入れられる「受容性」
・全体像を把握する「俯瞰力」
正直、これはあっちかなーと悩む要素もありますが、ざっとこんな感じかなというところです。
ただし。論文中の本質を思考する力の具体的な項目には倫理を問うような多く、この部分が10個の要素から漏れているように思えます。
確かに、トップマネジメントにはビジネス的なスキルはもちろん、正しい倫理観を持っていてほしいような気がします。みなさんもぜひ論文中の項目とネットで記載されている10や14個の要素を比較してみてください。
まとめ
今回は、カッツモデルのコンセプチュアルスキルについて論文やネット上の記事に掲載されている10個(14個)の要素を紹介しました。
論文では、コンセプチュアルスキル以外のヒューマンスキル、テクニカルスキルについても記載されていますのでぜひ読んでみてください。
ヒューマンスキル・テクニカルスキル尺度の開発(2018)
荒添美紀,天野雅美,齊藤茂子,金子多喜子
看護教育研究学会誌 (Journal of Academy of Nursing Education Research)