コンセプチュアルスキルとは|論文に見る4因子と具体例

2018年の論文では、本質を思考する力・応用力・問題解決力・組織貢献力の4因子に整理され、ビジネス現場での具体例とともに解説しました。
このスキルは経験学習サイクルやケーススタディに加え、体験型研修である部課長ゲームで効果的に鍛えることが可能です。
目次
1. カッツモデルとは|役職に応じて必要なスキルの割合
2. コンセプチュアルスキルとは|概念化能力の定義
3. ネット上でよく見るコンセプチュアルスキル10要素
4. 論文で抽出されたコンセプチュアルスキルの4因子
5. 4因子と10要素の対応表
6. ビジネス現場での具体例
7. コンセプチュアルスキルの鍛え方
8. 体験型研修・ビジネスゲームで疑似経験を積む
9. 研修ゲームでコンセプチュアルスキルを鍛える|部課長ゲーム
10. よくある質問
11. マネジメント研修のお問い合わせ
カッツモデルのコンセプチュアルスキルは、ミドルからトップマネジメントに必須とされる「概念化能力」のことです。具体的に何を指すのかが曖昧になりがちですが、2018年に発表された看護師を対象とした論文を読み解くと、本質を思考する力・応用力・問題解決力・組織貢献力の4つの因子に整理できることが分かります。本記事ではカッツモデルの復習から、論文で抽出された4因子の中身、ビジネス現場での具体例、そして研修での鍛え方までを一気に解説します。
本記事はコンセプチュアルスキルの論文ベース深掘り編です。カッツモデル全体(3階層スキル/階層別重要度配分/育成方法)の解説は 定義編記事 をご覧ください。
カッツモデルとは|マネジメント3階層スキル(テクニカル/ヒューマン/コンセプチュアル)を解説
カッツモデルとは|役職に応じて必要なスキルの割合
カッツモデルとは、米国の経営学者ロバート・L・カッツ(Robert L. Katz)氏が1955年にハーバード・ビジネス・レビューで提唱した、役職(階層)に応じて必要とされる能力の割合を示したフレームワークです。カッツ氏は管理者に必要なスキルを「テクニカルスキル」「ヒューマンスキル」「コンセプチュアルスキル」の3つに分類し、階層が上がるほどコンセプチュアルスキルの比重が増すことを示しました。
ロワー層(現場リーダー・主任)はテクニカルスキルが中心で、ミドル層(課長・部長)になるとヒューマンスキルの比重が増え、トップ層(経営層)ではコンセプチュアルスキルが最も重要になります。
コンセプチュアルスキルとは|概念化能力の定義
コンセプチュアルスキル(conceptual skill)は、日本語で「概念化能力」と訳されます。個別の事象を抽象化し、全体像や本質を捉えて適切に意思決定する能力のことで、「複雑な情報を整理して、何が重要か判断する力」と言い換えることもできます。
テクニカルスキル(業務遂行能力)やヒューマンスキル(対人関係能力)と比べて抽象度が高く、「結局何を指しているのか分かりにくい」と言われることが多いスキルです。
ネット上でよく見るコンセプチュアルスキル10要素
HR関連のWebサイトを見ると、コンセプチュアルスキルの構成要素として以下の10個(サイトによっては14個)が紹介されていることが多いです。ただし、これらの出典が明確でないケースがほとんどです。
1. ロジカルシンキング(論理的思考)
2. ラテラルシンキング(水平思考)
3. クリティカルシンキング(批判的思考)
4. 多面的視野(複数の課題に対応する力)
5. 受容性(多様な価値観を受け入れる力)
6. 柔軟性(臨機応変に対応する力)
7. 知的好奇心(新しいものを取り入れる力)
8. 探究心(物事に深い興味を寄せる力)
9. チャレンジ精神(リスクを恐れない力)
10. 俯瞰力(全体像を把握する力)
これらの3つの思考法については雲雨傘で学ぶロジカルシンキングの基本やゲームを用いた水平思考(ラテラルシンキング)研修のやり方で具体的なトレーニング方法を解説しています。
論文で抽出されたコンセプチュアルスキルの4因子
ネット上の10要素とは別に、実際のリサーチに基づいたコンセプチュアルスキルの要素を示した論文があります。
中堅看護師の職場で求められているコンセプチュアルスキル・ヒューマンスキル・テクニカルスキル尺度の開発(2018)
荒添美紀, 天野雅美, 齊藤茂子, 金子多喜子
看護教育研究学会誌 Vol.10 No.2
タイトルの通り中堅看護師を対象とした研究ですが、因子分析で抽出された4つの因子は看護師に限らずミドル以上のマネジメント職にも応用できる内容です。

画像引用: 荒添ほか(2018) 表2 中堅看護師のコンセプチュアルスキル尺度の因子分析結果
論文から抽出された4因子は以下の通りです。
| 因子 | 内容 | 信頼性係数 α |
|---|---|---|
| 第I因子 本質を思考する力 |
倫理・価値観・物事の根本を考え抜く力 | .89 |
| 第II因子 応用力 |
既存の知識を別の状況に活かす力 | .84 |
| 第III因子 問題解決力 |
課題を特定し、解決策を導き出す力 | .83 |
| 第IV因子 組織貢献力 |
組織全体の成果につながる行動を取る力 | .81 |
4因子すべてで信頼性係数α(クロンバックα)が.80を超えており、尺度として十分な内的整合性が確認されています。
4因子と10要素の対応表
論文で抽出された4因子に、ネット上でよく見る10要素を対応させると以下のようになります。
| 因子 | 対応する10要素 |
|---|---|
| 本質を思考する力 | ロジカルシンキング ラテラルシンキング クリティカルシンキング |
| 応用力 | 多面的視野 柔軟性 知的好奇心 |
| 問題解決力 | 探究心 チャレンジ精神 |
| 組織貢献力 | 受容性 俯瞰力 |
注意したいのは、論文の「本質を思考する力」には「倫理」を問う項目が多く含まれている点です。ネット上の10要素は思考法スキルに寄っている一方、論文は倫理観・価値観も含めた本質理解を重視しています。トップマネジメントに求められる力として、ビジネススキルだけでなく正しい倫理観も欠かせないという示唆と言えます。
ビジネス現場での具体例
4因子がビジネスの現場でどのように使われるのか、具体的なシーンを整理しました。
本質を思考する力:戦略立案・意思決定
新規事業の是非を判断する際、表面的な数字だけでなく「なぜこの事業が必要なのか」「社会にどんな価値を生むのか」を問う場面です。倫理的判断も含まれ、短期の利益と長期のブランド価値をどう両立させるかといった問いが典型例です。
応用力:他部署の知見を自部署に持ち込む
営業部門で成功しているKPI設計を、開発部門の進捗管理に応用するようなケースです。他業界の事例を自社に落とし込んだり、過去のプロジェクトの失敗経験を別案件に活かしたりする力が求められます。
問題解決力:原因特定から打ち手設計まで
売上が下がっている事業の原因を、市場・競合・自社の3C分析で構造化し、ボトルネックを特定して打ち手を設計する能力です。表面的な症状ではなく根本原因を見つける力が重要で、ピラミッドストラクチャーのような思考整理の型が役立ちます。
組織貢献力:部門横断のプロジェクト推進
自部署の利害だけでなく、全社最適の視点でプロジェクトを動かす力です。複数部署の意見を調整し、組織全体の成果につなげる判断が求められます。マネジメント層にとっては「部分最適に陥らない」ための最重要スキルです。
コンセプチュアルスキルの鍛え方
コンセプチュアルスキルは知識の詰め込みだけでは身につきません。実体験を振り返って概念化するプロセスを繰り返すことで、徐々に鍛えられていきます。
1. 経験学習サイクルを回す
コルブの経験学習モデルでは「具体的経験→内省的観察→抽象的概念化→能動的実験」の4ステップを循環させることで学びが定着するとされています。日々の業務で起きた出来事を「何が起きたか」だけで終わらせず、「なぜそうなったか」「一般化するとどういう原則か」「次はどう動くか」まで深掘りする習慣が重要です。
2. ケーススタディ・書籍での間接体験
自分一人の経験量には限界があります。ビジネススクールで扱うようなケーススタディや、経営者の自伝・事業ケースを読むことで、他社の意思決定を疑似体験できます。読むだけでなく「自分ならどう判断したか」を書き出すことがコツです。
3. 体験型研修・ビジネスゲームで疑似経験を積む
最も効率的なのは、短時間で意思決定の体験を凝縮できる体験型研修です。リスクのないゲーム環境で「全体を俯瞰する→本質を見抜く→応用的に打ち手を出す→組織貢献に結びつける」という一連のプロセスを繰り返し練習できます。具体的な研修ゲームの選び方は管理職研修で使えるビジネスゲーム10選や階層別研修にゲームを導入するメリットで整理しています。
研修ゲームでコンセプチュアルスキルを鍛える|部課長ゲーム

弊社ではミドルマネジメント層のコンセプチュアルスキル養成に部課長ゲームをご提案しています。部長・課長・一般社員の3階層に分かれて組織運営をシミュレーションするビジネスゲームで、情報が階層間で非対称に伝わる中、「部分最適と全体最適」「本質を見抜く判断」「部署をまたいだ問題解決」を体験的に学べます。
部課長ゲームはフォロワーシップ研修や指示待ち社員向けの研修にも活用されており、三菱ガス化学株式会社様の配属後研修など大手企業でも導入実績があります。論文の4因子で言えば「本質を思考する力」と「組織貢献力」を同時に鍛えられる構造になっているのが特徴です。
よくある質問
Q. コンセプチュアルスキルとは具体的にどのような能力ですか?
コンセプチュアルスキルは「概念化能力」と訳され、個別の事象を抽象化し、全体像や本質を捉えて適切に意思決定する能力です。カッツモデルでは、ミドルからトップマネジメント層に必須のスキルとされています。複雑な情報を整理し、何が重要か判断する力が求められます。
Q. 論文で示されたコンセプチュアルスキルの4因子について教えてください。
2018年の論文では、コンセプチュアルスキルが「本質を思考する力」「応用力」「問題解決力」「組織貢献力」の4つの因子に整理されています。これらは看護師を対象とした研究ですが、マネジメント職にも応用できる普遍的な要素を含んでいます。ビジネス現場での具体例は記事内で詳しく解説しています。
Q. コンセプチュアルスキルはどのように鍛えられますか?
コンセプチュアルスキルは、経験学習サイクルを回し、日々の業務を内省し概念化するプロセスで鍛えられます。また、ケーススタディによる間接体験や、部課長ゲーム(カード版)のような体験型研修で疑似経験を積むことも非常に有効です。
Q. 部課長ゲームはコンセプチュアルスキル研修にどのように役立ちますか?
部課長ゲームは、参加者が部課長として組織運営を疑似体験するビジネスゲームです。複雑な状況下で意思決定を行い、問題解決や組織貢献の視点を養うことで、コンセプチュアルスキルを実践的に鍛えることができます。多くの企業で導入実績があり、高い満足度を得ています。詳細は部課長ゲーム(カード版)のページをご覧ください。
Q. オンラインでコンセプチュアルスキル研修を実施することは可能ですか?
はい、可能です。対面での実施が難しい場合や、遠隔地の参加者がいる場合は、Zoomなどのウェブ会議システムを活用した部課長ゲーム オンラインをご検討ください。オンライン版でも、対面版と同様に実践的な学びを提供し、コンセプチュアルスキルを効果的に育成できます。
Q. コンセプチュアルスキルはどの役職に特に重要とされますか?
カッツモデルによると、コンセプチュアルスキルは階層が上がるほど重要性が増し、特にミドルマネジメント層(課長・部長)からトップマネジメント層(経営層)にとって最も重要なスキルとされています。全体像を捉え、本質的な課題解決や戦略立案を行う上で不可欠な能力です。
マネジメント研修のお問い合わせ
ミドル・管理職層のコンセプチュアルスキル強化を目的とした研修や、部課長ゲームの資料請求は下記フォームよりお問い合わせください。
詳細な資料、お見積りをご希望の方はまずは下記より資料請求をお願いします。
※同業他社様からのお問い合わせはご遠慮ください。
カッツモデルのコンセプチュアルスキルは、トップマネジメントに近づくほど重要度が増す「概念化能力」です。論文の4因子を意識しながら、日々の業務・読書・研修を通じて継続的に鍛えていきましょう。
