組織変革を推進する立場にある方やチームにとって、常にやっかいなのが抵抗勢力の存在です。生成AIの業務実装、リスキリング、事業ポートフォリオの再編と、2026年の企業は次から次へと変革を迫られ続けていますが、変革の失敗の多くは、戦略の誤りではなく「抵抗の扱い方」に起因します。

そこで今回は、敵を知り己を知れば百戦危うからずということで、抵抗勢力をひとくくりにせず、どんなパターン・分類が存在するかを11パターンで整理します。まずは敵を知る(それは自分の中にも当然あるものです)、そのうえで、対策を考えていきます。

スティーブン・ロビンスの変革への抵抗

ここでは、変革への抵抗の11パターンとして、組織行動学の権威であるスティーブン・ロビンスの分類を紹介します。書店で下記書籍を見かけたことがある人は多いかもしれません。

ロビンスは変革への抵抗を個人の抵抗5つ組織の抵抗6つに分けて整理しています。

個人の5つの抵抗要因

まずは個人側の5つの抵抗要因です。生成AI・自動運転技術・配置転換など、身近な変化に当てはめてみると、自分の中にも少なからず変革への抵抗があることがわかります。

要因 内容 2026年の現れ方
①習慣 慣れからの脱却 「紙で出したほうが早い」と言い続ける
②安全 安全が脅かされる脅威 AI導入で自分の業務がどうなるか不安
③経済的要因 収入減・職の喪失の脅威 リスキリング不要論/評価制度変更への反発
④未知への不安 何が起こるか見えない脅威 新制度の詳細が決まらないことへのイライラ
⑤選択的情報処理 聞きたくないことを聞かない 変革のメリットだけを拾い不都合を流す/その逆

とくに①習慣⑤選択的情報処理は、本人も自覚しにくい形で現れます。「理屈ではわかっているが体が動かない」という現象は、この2つの合わせ技であることが多いです。

組織の6つの抵抗要因

次に組織側の6つの抵抗要因です。個人と内容が重なる部分もありますが、グループや権力関係として現れるところが特徴です。

要因 内容 2026年の現れ方
①構造的慣性 これまでのやり方へ向かう組織の慣性 既存制度・システムが変革を押し戻す
②変革の限られた焦点 変革を進める一部と全体の整合性欠如 DX部署だけ先行、本体は旧来のまま
③グループの慣性 個人が変えたくてもグループのルールが邪魔 部署の暗黙の決裁ルールが優先
④専門性への脅威 特定の専門性が排除される脅威 AI導入で熟練者の判断業務が代替される
⑤権力関係への脅威 組織の権力が削がれる脅威 機能横断チーム導入で部門長の決定権が縮小
⑥既存の資源配分 自組織の資源が縮小される脅威 新事業に人員・予算が移る際の既存事業の抵抗

ロビンス自身が「個人と組織で同じようなことを言っている」印象を持つ分類ですが、重要なのは抵抗が発生する層(個人/グループ/組織)が異なると、打つ手も変わってくるという点です。技術変化で「専門性への脅威」を感じる業界団体、人員・予算が削減される部門の部長、といった具体的な像を思い浮かべると、施策を当てやすくなります。

抵抗勢力への6つの対策

ロビンスは同時に、抵抗勢力への6つの対策も整理しています。対策は上から順に主体性を尊重、下に行くほど強制的で、現場では組み合わせて使うのが実務的です。

対策 内容 有効な状況
①教育・コミュニケーション 必要性を感じてもらう対話 時間があり、知識ギャップが主因の時
②変革プロセスへの参加 変革自体に関与してもらう 主体性を持って当事者化させたい時
③カウンセリング/研修 新スキルの習得サポート スキル不足が不安の源になっている時
④交渉 資源配分などでの妥協点探し 利害が明確にぶつかっている時
⑤操作 発表タイミング・情報の扱いを操作 倫理的に慎重にすべき短期の選択肢
⑥強制 権力で押し切る 他の手段が尽きた/緊急時の最終手段

できれば①〜③の対策で、抵抗勢力の方が主体性を持って変革に参画してもらうことが望ましいです。ただし、全員が納得してくれるわけではないため、④〜⑥も時には必要になります。⑤操作と⑥強制は、短期的には効いても信頼残高を大きく削るため、多用しないことが鉄則です。

まとめ

変革への抵抗は11パターン(個人5+組織6)に分解でき、対策も6種類(教育・参加・研修・交渉・操作・強制)が整理されています。重要なのは、抵抗勢力を「敵」としてひとくくりにせず、どの層でどの要因から抵抗しているのかを見極め、主体性を尊重した対策から順に試していくことです。個人の5要因については自分にも思い当たるところがあるはずで、まずは相手を知ること、そして自分の中の抵抗にも気づくことが出発点になります。


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