採用弱社の戦略論

前回から複数回に渡って、新卒採用領域について書いています。
シリーズの名称は “採用弱社”の戦略論ということで、学生から見たネームバリューや認知が弱い企業(これを採用弱者、または、採用弱社と呼びます)に向けた記事となります。

シリーズの記事はこちらからご確認いただけます。

”採用弱社”の戦略論

低知名度企業のためのスカウトメールの活用

今回のテーマはスカウトメールの活用です。採用弱社が苦労することの1つが母集団形成だと思います。

ナビサイトの活用だけではどうしても大手企業や高知名度企業に負けてしまい、認知が広がらないというのが現実だと思います。そこで今回はこの数年注目されているスカウトメールを使った採用について書いてみたいと思います。

まずはクイズです。

<問題>
ABC商事は今期2名の採用をスカウトサービス経由で実現したいと思っています。
(残りはナビサイトや大学紹介など)
この状況下で取るべきスカウトメール送信戦略はどれでしょうか? 
なお、採用担当者は2名、ABC商事は例年採用に苦戦している採用弱“社”とします。

A.テンプレ率100%のスカウトメール送信戦略
B.テンプレ率70%・カスタマイズ率30%のスカウトメール送信戦略
C.カスタマイズ率100%のスカウトメール送信戦略

正解と解説

<正解>
B.テンプレ率70%・カスタマイズ率30%のスカウトメール送信戦略

<解説>
スカウトメール経由の応募・内定者数を増やす方程式は簡略化すると以下のよう表すことができます。

スカウトメール経由の内定者数
スカウトメール送信数 × 内定承諾率

スカウトメール経由の応募・内定者数を増やすには、量を取る(スカウトメール送信数を増やす)、質を取る(承諾率を高める)の2つの方向性があることが方程式から分かります。

このスカウトメール経由の応募を増やす2つの方向性で、先程の3つのスカウトメール送信戦略を評価すると以下のようになります。

スカウトメール送信戦略

量を取る方向性は工数負担を抑えられるテンプレ型のスカウトメールと相性が良く、質を取る方向性はスカウトメール文面を工夫できるカスタマイズ型のスカウトメールと相性が良いと言えます。

この前提を踏まえて、ABC商事が取るべきスカウトメール送信戦略を検討します。
まず、前提として2名の内定承諾を獲得するために送信するスカウトメールの数はどのぐらいになるでしょうか。

今回は下記のように考えて300通としました。

内定承諾者数:2.1名
=内定者数:3.5名 × 内定承諾率:60%
=最終面接対象者数:5.9名 × 内定率:60%
=高評価者数:19.5名 × 次選考への参加率:30%
=面接参加者数:39名 × 高評価者出現率:50%
=メールへの返信数:60名 × 面接設定率:65%
=スカウトメール送信数:300通 × 返信率:20%

2名の採用担当者で300名通のスカウトメールを送信することを考慮すると、工数負担の大きいC.カスタマイズ率100%のスカウトメール送信戦略は現実的ではありません

残るは、A.テンプレ率100%のスカウトメール送信戦略と、B.テンプレ率70%・カスタマイズ率30%のスカウトメール送信戦略。どちらがABC商事が取るべき戦略として適しているのか?

判断のポイントは開封率と内定承諾率です。

まず、スカウトメールの開封率ですが、メルマガの開封率に関するこんな調査結果があります。スカウトメールとメルマガでは異なりますが、メール送信という手法が共通するスカウトメールの開封率の参考にもなります。

EメールマーケティングメディアMarketingProfsの記事によると、
平均開封率9.7%~10%
(ベンチマーク対象:2012年に配信された14億のオプトインメルマガ)という数字が出ています。

参考:メルマガの開封率はどれくらい?平均から見るKPI設定について

メルマガは定型文の一斉送信形式である点を踏まえると、A.テンプレ率100%のスカウトメールを大量送信する場合の開封率に近いと考えることができます。(ただし、新卒採用という狭いセグメントに対する送付を考慮するともう少し高い気もします)

視点を広げて新卒採用マーケットにおけるスカウトサービスの浸透度の視点からも考えてみたいと思います。

2020年卒の採用情報提供・コミュニケーションの予定(全体/複数回答)

① 自社ホームページ 92.2%|2019年卒差0.6
② 就職情報サイト 90.2%|2019年卒差-1.0
③ 自社単体説明会計 81.6%|2019年卒差 0.2
④ 自社単体説明会・セミナー(対面) 80.8%|2019年卒差 -0.2
⑤ 学校主催の合同企業説明会・セミナー 80.4%|2019年卒差1.1
⑥ 学校への求人票 78.8%|2019年卒差-0.0
⑦ 企業主催の合同企業説明会・セミナー 70.2%|2019年卒差0.2
⑧ 自社紹介するパンフや映像メディア 64.1%|2019年卒差 0.2
⑨ 行政主催の合同企業説明会・セミナー 36.7%|2019年卒差1.3
⑩ 就職情報誌 29.7%|2019年卒差0.5
⑪ OB・OG訪問 25.7%|2019年卒差1.8
⑫ リクルーター 22.7%|2019年卒差 2.2
⑬ スカウト型メール 20.6%|2019年卒差 2.0
⑭ 自社の社員に対する学生の紹介依頼 15.8%|2019年卒差2.6
⑮ 自社単体説明会・セミナー(Web) 15.0%|2019年卒差4.5
⑯ ソーシャルメディア 14.3%|2019年卒差 3.6
⑰ 新聞広告 7.0%|2019年卒差 -0.8
⑱ 動画配信サービス 6.6%|2019年卒差1.9

参考:就職白書2019|リクルートキャリア P21

ご覧の通り、スカウトサービスの利用(予定)企業は全体の2割程度に達しており、かつ、前年度からの伸び率も高い状況にあります。2割を多いと見るか、少ないと見るかはそれぞれだと思いますが、利用者数が増えるにつれて今後、スカウトメールの平均承諾率が下がっていくことは想像に難くないといえます。

以上のことから、A.テンプレ率100%のスカウトメール送信戦略には、その効力に不安が残ります。ABC商事が採用強“社”であったならば、テンプレ率100%のスカウトメール送信戦略でも知名度の高さによって高い成果を期待できるのですが同社は採用弱“社”です。

ゆえに、ABC商事としては、承諾率を改善するためのカスタマイズが可能なB.テンプレ率70%・カスタマイズ率30%のスカウトメール送信戦略を取るべきであると考えられます。

採用担当者の工数の制約を踏まえてテンプレに比重を置きながらも、承諾率を改善するためにスカウトメール文面をカスタマイズする。この量と質のバランスを取る方向性が採用弱“社”の取るべき戦略になります。

スカウトメールのカスタマイズ例

では、具体的に30%のカスタマイズとはどんなことが考えられるのでしょうか。
ここでは大きく2つのカスタマイズ例をご紹介したいと思います。

1.スカウトメールの件名
2.スカウトメールの内容

まずはスカウトメールの件名から考えてみましょう。
スカウトメールの件名は開封率に直結します。

スカウトメールを開封してもらうためには「文脈」が必要です。
件名には、学生視点で「なぜ、この会社は私にスカウトを送ってきたのか?」の答えを書きましょう。ポイントは3つあります。

1. プロフィール情報

「この会社は自分のことを理解した上でスカウトを送ってきているな」と感じられるスカウトメールには自分だけに送られてきた特別感があり、開封されやすくなります。学生のプロフィール情報を閲覧し、学生の理解を深めましょう。

2. 学生のやりたいこと(興味・価値観)を理解する

一般論として、できること(経験・能力)を活かしたいと考える学生は少なく、やりたいこと(興味・価値観)を重視する学生が多い傾向があります。スカウト時は学生のやりたいことへの理解を優先させましょう。

3. 学生のやりたいことと自社の共通点を考える

やりたいことを重視する学生に対しては「当社であれば、そのやりたいことができます(できるかもしれません)」と伝えることが効果的です。

では、実際に3つのポイントを押さえた件名の例を紹介します。

グローバルに活躍したい○○さんに「海外駐在に挑戦できる可能性」を提案します(株式会社△△△)

手に職をつけたい○○さんに「成長市場で活躍するキャリア」を提案します(株式会社△△△)

○○さんの「人の役に立ちたい」考えを活かせる仕事のご紹介です(株式会社△△△)

※ハイライト部分は学生のプロフィール情報から引用

次にスカウトメールの内容についてです。件名が開封率に影響を与えるのに対して、スカウトメールの内容は承諾率に影響します。

ポイントは、学生視点で「この会社のスカウトを私が承諾する理由は何だろうか?」です。

<スカウトメールの内容の例>

○○さん

初めまして、株式会社△△△の◇◇◇と申します。

◎◎◎(スカウトサービス名)に登録されているプロフィール情報を拝見させていただく中で、下記の内容に興味を抱きました。

<プロフィール内容>
私は将来的に、事業を創れるような仕事に挑戦していきたいと思っています。

当社は、専門商社の中でXXXのサービスを提供する会社です。お陰様で直近3年間は右肩上がりの成長を続けています。しかし、5年・10年の長期の未来を考えると、新規事業への挑戦をすることで未来への種まきをしていく必要性があります。そして、実際に、新規事業提案制度や新卒採用入社者の事業企画部署への配属などのアクションを2年前から始めています。

こんな当社にとって、プロフィール内容(上記)のようなお考えを持っている方はとても魅力で相性が良いと考えています。

以上、ご興味をいただければ、オファー承諾をお願いします。

※ハイライトはカスタマイズする箇所
※ハイライト+下線は一度作成すれば使い回しができる箇所

まとめ

いかがでしょうか。今回は採用弱社のためのスカウトメールの活用法をお伝えしました。
なお、スカウトメールを用いたサービスを提供している企業様の代表格は下記となります。

1.OfferBox(オファーボックス)

https://offerbox.jp/

2.キミスカ

https://kimisuka.com/2020/

3.iroots

https://iroots.jp/

参考になれば幸いです。


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