採用弱社の戦略論

本記事は“採用弱社”の戦略論シリーズの第7弾として、リクルーター制度をゼロから設計・運用するための勘所を整理したものです。学生から見たネームバリューや認知度が高くない企業、いわゆる採用弱者(採用弱”社”)に向けて、現場社員を巻き込みながら新卒採用の母集団形成と歩留まり改善を両立させるヒントをお届けします。

読み終える頃には、「誰を・いつ・何のために」リクルーターとしてアサインすればよいかが具体的にイメージできる状態を目指しました。2026年の採用環境に合わせて、オンライン面談やリファラル採用の広がりなど最新の動向も反映しています。

シリーズ全体は以下のタグページからまとめてご確認いただけます。

“採用弱社”の戦略論シリーズ一覧

リクルーター制度とは?2026年に改めて注目される理由

リクルーター制度とは、自社の現場社員を採用活動のメンバーに任命し、学生との接点づくりや動機づけを担ってもらう仕組みのことです。近年はスクラム採用全社型採用、あるいはリファラル採用の延長線として語られることも増えました。

採用弱社では、採用担当者が研修運営・労務・広報などを兼務しているケースが珍しくありません。1〜2名の担当者だけで母集団形成から内定者フォローまでを抱え込むのは現実的ではなく、現場社員を採用活動に巻き込むことが戦略の要になります。

2026年の新卒採用は、インターンシップの早期化・通年化、オンラインとオフラインのハイブリッド面談、ワークライフバランスを重視する学生意識の高まりなど、2019年当時と比べても環境が大きく変化しました。1対1で学生の不安に向き合えるリクルーターの価値は、以前にも増して高まっていると言えます。

前回記事にあたる新卒紹介サービスで採用成果を出すための3つのポイントでは外部サービスの使い方を扱いましたが、今回はその前段、あるいは並行して走らせたい社内施策としてリクルーター制度を取り上げます。

リクルーターの印象が学生の志望度を左右する

株式会社ディスコ「キャリタスリサーチ」の就活生モニター調査では、以前からリクルーターの印象が志望度に影響すると回答した学生が9割前後で推移しており、近年の調査でも同じ傾向が確認されています。内々定獲得後に入社意思を固めるフェーズでも、リクルーター面談の印象が決め手になったという声は多く見られます。

リクルーターの印象と志望度の関係

画像参照:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ 就活生モニター調査 https://www.disc.co.jp/

リクルーター制度は「採用強社が優秀層を囲い込むための仕組み」という印象を持たれがちですが、採用弱社にこそ工夫次第で効く施策です。ネームバリューで勝てない分、「この会社で働く人の顔と温度感」を直接届けられるのは中堅・中小企業ならではの強みになります。

リクルーター制度活用の「3つの要素」

ここからが本題です。リクルーター制度を設計するときに必ず押さえたい3つの要素を整理しました。

1. リクルーターは何をするのか?(What)
2. リクルーターはいつ動くのか?(When)
3. リクルーターにふさわしいのは誰か?(Who)

この3点を曖昧にしたままリクルーターをアサインすると、「良い社員を巻き込んだのに学生に響かない」「現場から工数ばかり削って成果が見えない」という典型的な失敗に陥ります。順番に見ていきましょう。

1. リクルーターは何をするのか?(What)

そもそもリクルーターは何をする存在なのでしょうか。一見当たり前のようで、企業ごとに期待する役割はバラバラです。代表的な役割には次のようなものがあります。

・優秀層(ターゲット人材)を早期に把握し、志望度を引き上げる
・ターゲット大学や特定領域の学生に自社を認知させ、応募を促す
・選考途中の学生の不安を解消し、辞退率を下げる
・内定後の内定者フォローと入社意向の維持
・リファラル採用につながる学生ネットワークの拡張

重要なのは、自社の採用課題に照らして「どの役割を重点的に期待するのか」を1つか2つに絞ることです。母集団が足りないのか、選考途中で離脱するのか、内定辞退が多いのか。課題によって、リクルーターに任せるべき動きは大きく変わります。

採用課題の切り分け方は母集団形成か、選考歩留まり改善かそれが問題だでも詳しく解説しています。

2. リクルーターはいつ動くのか?(When)

リクルーターはその気になれば、採用プロセスのほぼ全フェーズで学生と接触できます。考えられるタイミングは次のとおりです。

・インターンシップ/オープンカンパニーのタイミング
・OB/OG訪問のタイミング
・会社説明会・採用イベント(オンライン含む)のタイミング
・エントリーシート提出前後の個別面談
・選考途中のフォローアップ面談
・最終面接前後の役員クラスとの擦り合わせ
・内々定から入社までの内定者フォロー

2026年時点では、インターンシップが実質的な選考の入り口として機能する企業が増えています。インターンシップとオープンカンパニーの違いはオープンカンパニーとインターンシップの違いの記事でも整理していますので、自社のフェーズ設計に迷っている方は参考にしてください。

とはいえ「全タイミングで動いてもらう」は現場社員の工数がもちません。Whatで定めた期待役割に合致するタイミングだけに絞り込むのが鉄則です。たとえば「歩留まり改善が最優先課題」なら、説明会よりも一次選考通過直後のフォロー面談にリクルーターを投入したほうが効果的です。

リクルーター制度 What × When の整理

3. リクルーターにふさわしいのは誰か?(Who)

リクルーターは人選で成果の大半が決まると言っても過言ではありません。タイプ別に整理すると、次のような社員像が候補になります。

・優秀層から一目置かれるエース社員(動機づけ役)
・ターゲット大学出身の若手〜中堅社員(親近感を生む役)
・自社の文化や事業の面白さを熱量高く語れる社員(魅力訴求役)
・学生が緊張せず本音を話しやすい若手社員や女性社員(不安解消役)
・現場のマネジャークラス(仕事の具体像を語る役)

前述のディスコ調査では、リクルーター次第で逆にマイナス印象を与えてしまうケースも指摘されています。「上から目線だった」「準備不足で質問に答えられなかった」「会社の愚痴を言っていた」といった態度はすべて志望度を下げる要因です。

リクルーターの印象マイナス要因

画像参照:株式会社ディスコ キャリタスリサーチ 就活生モニター調査 https://www.disc.co.jp/

人選の精度を高めるために、What×Whenの組み合わせごとに、どのタイプのリクルーターが効きやすいかを整理した図が以下です。

リクルータータイプ別 活用タイミング

さらに、どのタイミングで誰が動く場合も、事前に学生の就職観や志向性を把握したうえで面談に臨むことが必須です。学生の価値観の捉え方は学生の就職観を知ることの意味の記事で詳しく扱っています。

リクルーター育成で避けて通れない「面接官スキル」

リクルーター面談は選考ではない、と位置づける企業もありますが、学生側から見ればれっきとした「評価されている場」です。雑談レベルでの接点であっても、その場での質問・態度・情報提供の質は選考と同等のクオリティを求められます。

特に大切なのが、アンコンシャス・バイアスに気づいたうえで学生と接する姿勢です。自分の価値観を無自覚に押し付けていないか、出身校や性別で判断していないかといった点は、採用時に注意したい6つのアンコンシャス・バイアスも併せて確認しておくと、リクルーター研修の材料として使いやすくなります。

質問設計や態度面のリスクについては、シリーズ後続の面接官が心得るべき「態度」の影響力面接官が心得るべき「質問」のNGワードも参考になります。リクルーター面談の前に読み合わせをしておくと、現場社員の初動品質が揃います。

2026年の採用環境を踏まえた運用アップデート

最後に、2019年当時から変化が大きい3つのポイントに触れておきます。

1点目はオンライン面談の標準化です。地方学生・海外留学中の学生にもリーチできる一方で、表情や温度感が伝わりづらいため、リクルーター側の話し方や資料提示の工夫が一段と重要になっています。

2点目はリファラル採用との境界線の曖昧化です。リクルーター経由で知人の学生を紹介してもらう動きが一般化し、既存社員の人脈が採用チャネルそのものになりつつあります。社員が安心して紹介できるよう、リクルーター制度側で面談ルールや個人情報の取り扱いを明文化しておくと安全です。

3点目は学生の就職観の多様化です。ワークライフバランス、成長環境、副業可否、リモートワークの可否など、従来の待遇面だけでは語りきれない論点が増えています。リクルーターがこれらに自信をもって答えられるよう、広報・人事から最新の制度情報をこまめに共有する仕組みが欠かせません。

まとめ

今回はリクルーター制度活用の「3つの要素」として、以下の観点を整理しました。

1. リクルーターは何をするのか?(What) — 採用課題から役割を逆算する
2. リクルーターはいつ動くのか?(When) — 期待役割に合致するフェーズに絞る
3. リクルーターにふさわしいのは誰か?(Who) — タイプ別に人選し、事前情報を共有する

採用弱社にとってのリクルーター制度は、「知名度の不足を、人の魅力で補う仕組み」です。What→When→Whoの順に設計し、面談前の事前準備と振り返りを丁寧に回すことで、限られた人数でも十分に戦える採用チームを作れます。自社の状況に合わせて運用を少しずつアップデートしていただければ幸いです。


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