“採用弱社”の戦略論シリーズの最終回となる本記事は、学生から見たネームバリューや認知が弱い企業=採用弱者、または採用弱”社”に向けた、面接官が絶対に避けるべき「質問」のNGワードの解説です。

採用弱社が採用強社と同じ土俵で勝負できる数少ない局面が面接です。たった一度のNG質問で志望度を下げ、不要な選考辞退を招いてしまえば、そこまで積み上げた採用活動が無駄になりかねません。

この記事では、2026年時点の厚生労働省ガイドラインと最新の採用動向を踏まえ、面接官トレーニングの実務に直結する形でNG質問を整理します。

“採用弱社”の戦略論シリーズ一覧

面接官が心得るべき「質問」のNGワードとは

面接は面接官と学生が1対1で向き合う場であり、「会社の力」ではなく「面接官個人の力」が合否判断と志望度維持の両方を左右する場面です。

採用弱社にとって、ここは強者と唯一対等に戦える舞台であり、だからこそ明らかな失点は絶対に避けたいところ。NG質問の全体像は大きく3カテゴリーに整理できます。

1. 就職差別につながる恐れがある質問
2. プライベートに関わる質問
3. 意図が不明な質問(奇抜な質問)

さらに2020年代以降は、SNS運用やオンライン面接の普及によって、従来の対面面接にはなかった新たなNG領域も生まれています。後半で解説します。

1. 就職差別につながる恐れがある質問はNG

厚生労働省は、就職の機会均等を確保するために応募者の基本的人権を尊重した公正な採用選考の実施を継続的に呼びかけています。

厚労省のガイドラインが示す基本的な考え方は以下の2点です。

・応募者の基本的人権を尊重すること
・応募者の適性・能力のみを基準として行うこと

この考え方に基づけば、「応募者の適性・能力と関係のない質問」は控えるべきという結論になります。NGとされる質問は大きく2領域に分類されます。

<a 本人に責任のない事項の把握>

・本籍・出生地に関すること
・家族に関すること(職業、続柄、健康、病歴、地位、学歴、収入、資産など)
・住宅状況に関すること(間取り、部屋数、住宅の種類、近郊の施設など)
・生活環境・家庭環境などに関すること

<b 本来自由であるべき事項(思想信条にかかわること)の把握>

・宗教に関すること
・支持政党に関すること
・人生観、生活信条に関すること
・尊敬する人物に関すること
・思想に関すること
・労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)
・学生運動など社会運動に関すること
・購読新聞・雑誌・愛読書などに関すること

参考:公正な採用選考の基本|厚生労働省

厚労省の集計によれば、就職差別につながるおそれのある不適切な質問・書類等に関する指摘は、公共職業安定所を通じて毎年継続的に報告されています。学生側の意識も年々高まっており、SNSで面接内容が即座に拡散される時代には、一度のNG質問が企業ブランド全体のダメージに直結するリスクがあります。

画像参照:2020年卒マイナビ学生就職モニター調査6月の活動状況

「この質問、面接時に聞いていたな」と心当たりがある方も多いはずです。特に家族構成・家族の職業・居住地域の具体名など、アイスブレイクのつもりで触れがちな話題は要注意です。

2. プライベートに関わる質問もNG

「応募者の適性・能力と関係のない質問は控えるべき」という基本に立てば、プライベートに踏み込む質問も避けるべき領域です。

<質問例>
・「彼氏(彼女)はいますか?」
・「結婚の予定はありますか?」
・「何歳で結婚をしたいですか?」
・「休日は何をして過ごしていますか?」

なかでも女性に対する結婚・出産関連の質問は男女雇用機会均等法に違反する可能性が高く、企業としての法令遵守姿勢が問われます。

問(女性労働者からの質問)
採用面接で、「子どもが生まれたらどうするのか」と聞かれました。これは性差別ではないでしょうか。


女性に対し、男性には聞かない質問をするなど、男女で異なる採用選考をすることは均等法に違反します。

また、「女性には大変な仕事なので採用は難しい」「女性の採用は終わりました」などの発言があった場合も均等法に違反する募集・採用が行われている可能性がありますので、ぜひ雇用均等室へご相談ください。

参考:均等法Q&A|厚生労働省

近年は、性別・婚姻歴にとどまらず、LGBTQや介護・育児との両立、信仰上の配慮などに関わる質問も、応募者側から「踏み込みすぎ」と受け取られるケースが増えています。「その質問は、業務遂行能力の判断に本当に必要か?」をすべての質問に適用することが、最もシンプルで安全な判断基準です。

3. 意図が不明な質問(奇抜な質問)はお勧めできません

「何の目的でそんな質問をするのか分からない」と学生が感じる奇抜な質問は、学生にとって大きなストレスとなり、自社の志望度を下げる要因になります。

<質問例>
・「あなたを動物に例えると何ですか?」
・「あなたの就活を色に例えると何色ですか?」
・「今日はどうやってここに来ましたか?」
・「もし100万円あったら何に使いますか?」
・「100円のジュースを1000円で売る方法を考えてください」

これらはアイスブレイクとして利用している面接官も多いですが、NGとまでは断定できないものの、気づかぬ間に学生の志望度を下げているリスクがある以上はお勧めできません。

判断基準として、「学生の志望度を下げるリスクを取る価値のある質問なのか?」をGoogle社のように検証してみることをお勧めします。Googleはかつて地頭力を測る奇抜な質問(フェルミ推定系)を多用していましたが、その後方針を転換しました。

グーグルの広報担当者は米ABCニュースの取材に、試験内容を変更すると認めた。入社希望者から不評をかっており、何よりも「この種の質問を解き明かす力と、将来業務で発揮できる能力やIQとの関連性に疑問が生じた」のが大きな理由だと答えた。

参考:「地頭力」試すのは時間の無駄だった グーグル人事責任者、衝撃の告白|J-CASTニュース

Googleのような大規模な検証はできなくとも、自社の内定者・新入社員に以下のヒアリングを行うだけで、多くのNG質問は事前に排除できます。

・自社の面接で聞かれて嫌な思いをした質問
・他社の面接で聞かれて嫌な思いをした質問

4. SNS・オンライン面接時代の新しいNG領域

2020年代以降、採用面接の形態は大きく変わりました。オンライン面接の普及とSNSの一般化によって、従来の対面面接では発生し得なかった新しいタイプのNG質問・NG行為が生まれています。面接官研修のアップデートが追いつかず、うっかり踏んでしまうケースが増えています。

<オンライン面接固有のNG>
・背景の映り込みを指摘する質問(「部屋が散らかってますね」「このポスターは?」等)
・家族や同居人の存在を詮索する質問(「誰かいるんですか?」「ご家族は?」)
・通信環境を能力評価と結びつける発言

<SNS時代のNG>
・面接前にSNSを検索した内容を前提にした質問
・プライベートアカウントの開示を求める質問
・ハンドルネームや投稿内容への言及

オンライン面接の背景は学生の住環境を反映し、住宅状況や家族構成など本人に責任のない事項の把握に直結する情報です。対面では一切尋ねないであろう家庭環境が、画面越しには視覚的に入ってきてしまうため、面接官側の意識的な「見ない・触れない」姿勢が必要です。

SNS検索についても、採用選考の場で用いる情報は「応募者本人が選考プロセスに提出した情報」に限定すべきというのが厚労省の考え方の延長線上にあります。プライベートアカウントの投稿を根拠に判断することは、思想信条・交友関係の把握にあたる可能性が高く、公正な採用選考の原則から外れます。

まとめと面接官トレーニングのご案内

今回は面接官が心得るべき「質問」のNGワードとして、以下の4カテゴリーを紹介しました。

1. 就職差別につながる恐れがある質問
2. プライベートに関わる質問
3. 意図が不明な質問(奇抜な質問)
4. SNS・オンライン面接時代の新しいNG領域

これらは事前に面接官トレーニングを実施すれば高い確率で回避できます。不要な選考辞退を避けるためにも、面接官全員にNG質問の型と判断基準を共有しておくことが、採用弱社が強社と対等に戦うための土台となります。

面接官トレーニングや採用設計の実務を体系的に学びたい方には、以下の書籍がおすすめです。研修設計・研修転移の理論と実践を網羅しており、面接官トレーニングの内製化や効果測定の設計にも応用できる一冊です。


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