システム思考の研修を行う前に注意したいこと — ロジカル土台→ビールゲーム体験→因果ループ図/原型 座学の3ステップ

【結論】システム思考の研修を行う前に注意したいこと
システム思考の研修をいきなり実施しても、参加者が因果ループ図の描き方や複雑な要素の整理についていけず効果が出にくい場合があります。研修前に押さえておくべきポイントは ①ロジカルシンキングの土台があるか確認する ②座学だけでなく体験型ゲームを組み合わせる ③段階的にシステム原型まで進める の3つです。

【この記事で分かること】
・システム思考研修が増えている背景
・研修でつまずく3つの典型パターン
・ロジカルシンキングを先に行う必要性
・効果的なシステム思考研修の3ステップ設計

目次

1. システム思考研修が増えている背景
2. システム思考研修でつまずく3つの典型パターン
3. 注意1|ロジカルシンキングの土台がないと因果ループ図が描けない
4. 注意2|座学だけでは身につかない(体験型が必要)
5. 効果的なシステム思考研修の3ステップ設計
6. 関連研修|ビールゲームでシステム思考を体感する
7. 「システム思考研修の前の注意点」に関するよくある質問(FAQ)
8. まとめ|ロジカルシンキング→体験→座学の順序設計が研修効果を決める

システム思考研修が増えている背景

ここ数年、システム思考の研修ニーズが企業で急速に高まっています。HEART QUAKEでもビールゲーム研修への問い合わせが年々増加しており、システム思考そのものへの関心の高まりを実感しています。

注目される要因は複数ありますが、大きくは3つあります。

1. ビジネス書で因果ループ図やシステム思考が頻繁に取り上げられるようになった

2. SDGs・サステナビリティ経営の文脈で、複雑な相互作用を扱う思考法が必要になった

3. DXやプラットフォーム戦略など、好循環を設計する論点でビジネスモデルそのものをシステム的に捉える視点が経営層に求められている

ビジネス書の事例として、最近読んだ『世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑』では、各社のビジネスモデルが好循環を生んでいる構造を因果ループ図で説明しています。事業の伸びを「個別施策の集合」ではなく「強化ループの設計」として捉える視点は、経営者・事業企画担当者にとって有用です。

世界最速ビジネスモデル 中国スタートアップ図鑑

また、システム思考の名著として知られる『学習する組織』も、システム思考に関心を持つきっかけになっている代表的な書籍です。組織が学習し続ける条件を5つのディシプリンで整理した古典で、システム思考はその中核に位置づけられています。

システム思考研修でつまずく3つの典型パターン

研修ニーズが増えている一方で、いきなりシステム思考の座学研修を実施すると、参加者が消化不良になるケースが少なくありません。代表的な3つのつまずきパターンを整理します。

パターン1: 因果ループ図を描けない

「事象Aが増えると事象Bが増える」「Cが増えるとDが減る」というシンプルな関係でも、実際に矢印を描こうとすると要素同士の前後関係や粒度が揃わず、何を書けばよいか分からなくなる参加者が多くいます。これは因果関係を整理する基礎スキル、つまりロジカルシンキングが固まっていないことに起因します。

パターン2: 自社の課題に応用できない

教材内の例題(ビールゲームのサプライチェーンや人口モデル)は理解できても、「では自社の課題で因果ループ図を描いてみましょう」となった瞬間に手が止まるケースです。これは抽象化スキル(自社の現象を一般構造に翻訳する力)が育っていないために起きます。

パターン3: システム原型まで到達できない

成長の限界・問題の転嫁・共有地の悲劇などのシステム原型は、システム思考研修の本来のゴール領域です。しかし基礎が固まっていないと、原型の名前と図を見せられても「どこで使うのか」が腹落ちせず、研修後の現場で活用されない状態に陥ります。

注意1|ロジカルシンキングの土台がないと因果ループ図が描けない

システム思考はロジカルシンキングの土台の上に成り立つスキルです。因果ループ図を描くには、要素間の因果関係や主従関係をロジカルに整理する力が必要で、ロジカルシンキングが身についていない状態でシステム思考を学ぼうとすると、「図の描き方」のテクニックだけが残り、構造を見抜く本質的な思考が育ちません。

システム思考とロジカルシンキングの関係

具体的には、システム思考研修の前に以下のロジカルシンキング基礎を押さえておくと、研修効果が大きく変わります。

・MECE(漏れなくダブりなく)で要素を分解する力
・原因と結果を区別して捉える力(相関と因果の違い)
・抽象度を揃えて要素を並べる力
・前提と結論を切り分けて議論する力

これらが備わっていれば、因果ループ図を描く際にも要素の粒度が揃い、矢印の方向にも迷いが少なくなります。社内のロジカルシンキング研修が未実施なら、システム思考研修の前にロジカルシンキング研修を入れる順序設計が推奨されます。

注意2|座学だけでは身につかない(体験型が必要)

ロジカルシンキングの土台があっても、いきなり座学でシステム思考を教えると参加者の腹落ちが浅くなりがちです。実際、システム思考の名著『学習する組織』の中でも、システム思考の章はビールゲームというビジネスゲームを例題にして説明が展開されています。

ビールゲームを使ったシステム思考の学習

座学だけだと「自分が登場人物として動いた結果、システム全体がどう動くか」という主観的な体験が伴わないため、構造の理解が机上のまま終わります。体験型ゲームを通じて「個別最適に動いた結果、全体として困った状況になる」を肌で体験すると、その後の座学(システム原型・因果ループ図)の納得度が格段に上がります。

ビールゲーム以外でも体感できるアクティビティはありますが、サプライチェーンを4ステップで体験できるビールゲームは、シンプルさとシステム思考的な気づきのバランスが優れた古典的教材として企業研修で広く使われています。

効果的なシステム思考研修の3ステップ設計

ここまでの内容を踏まえると、システム思考研修は以下の3ステップで設計するのが効果的です。

ステップ1: ロジカルシンキングの基礎を固める

MECE・因果関係・抽象度などの基礎を押さえます。既にロジカルシンキング研修を実施済の組織であればスキップ可能ですが、未実施であればここを最初に置きます。座学+簡易ワークの組み合わせで半日〜1日程度が目安です。

ステップ2: ビールゲームでシステム思考を体感する

ロジカルシンキングの土台ができたら、ビールゲームのような体験型研修でシステム思考の感覚を掴みます。サプライチェーンの4ロールに分かれて発注を回すうちに、需要変動の増幅(ブルウィップ効果)が起きるのを実感し、「個別最適」と「全体最適」のズレを体験的に理解できます。

ステップ3: 因果ループ図とシステム原型の座学に進む

体験で得た直感を理論にひも付ける段階です。因果ループ図の描き方と読み方、応急処置の失敗・成長の限界・共有地の悲劇などのシステム原型を学びます。このタイミングで座学を入れると、ステップ2の体験と結びついて深い理解になります。

この3ステップを順序通りに踏めば、研修後に各自が自社の課題で因果ループ図を描き、原型を当てはめて打ち手を考えられる状態に近づきます。

「システム思考研修の前の注意点」に関するよくある質問(FAQ)

Q1. システム思考研修だけを単独で実施するのは効果が薄いのですか?
完全に効果がないわけではありませんが、ロジカルシンキングの土台が無いまま座学でシステム思考を学ぶと、図の描き方は覚えても自社の課題に応用できない状態に陥りやすいです。研修効果を最大化するには、ロジカルシンキング→体験型→座学の3ステップが推奨されます。

Q2. ロジカルシンキング研修はどの程度のレベルが必要ですか?
MECE・因果関係(相関と因果の違い)・抽象度の整え方・前提と結論の切り分け、の4点が押さえられていれば十分です。一般的な新入社員向けのロジカルシンキング研修で扱われる範囲がカバーされていれば問題ありません。

Q3. ビールゲーム以外の体験型教材でも代用できますか?
代用可能ですが、ビールゲームはシンプルさとシステム思考的な気づきのバランスが優れた古典です。MITスローン経営大学院発祥で半世紀以上使われ続けている実績があり、迷ったらこれが最も再現性の高い選択肢です。

Q4. 全3ステップを実施するのにどのくらいの時間がかかりますか?
組織の状況にもよりますが、ロジカルシンキング基礎(半日〜1日)+ ビールゲーム体験(半日)+ システム原型座学(半日)の合計1.5〜2日が標準的な構成です。詰めれば1日でも実施可能ですが、原型まで踏み込むなら2日構成が望ましいです。

Q5. 経営層向けにシステム思考研修を行う場合も同じ順序ですか?
基本的な順序は同じです。経営層はロジカルシンキングの土台ができている前提で、ビールゲーム + 因果ループ図 + 自社課題への適用ワークの組み合わせが推奨です。経営層の場合は「自社のビジネスモデルの強化ループ設計」を最終課題に据えると効果が高まります。

関連研修|ビールゲームでシステム思考を体感する

HEART QUAKEではシステム思考の体感研修としてビールゲームを提供しています。座学に入る前に体験型でシステム思考の感覚を掴んでもらうことを目的としており、ステップ2の位置づけで多くの企業に導入いただいています。

ビールゲーム|MITスローン経営大学院発祥の古典的システム思考教材

サプライチェーンを「小売/卸/メーカー/工場」の4役割に分けて発注を回すゲームです。各プレイヤーが個別最適で動くと、サプライチェーン全体としては需要変動が拡大していく「ブルウィップ効果」が観察され、システム思考の中心概念である「全体最適と個別最適のズレ」を体感できます。

ビールゲーム

詳しくはこちらをご覧ください。

システム思考を学ぶゲーム型研修「ビールゲーム」

なお、ステップ1のロジカルシンキング研修については、自社内製化を支援するロジカルシンキング研修用のパワーポイントスライドを販売しています。詳しくはこちらをご覧ください。

ロジカルシンキング研修資料販売

ロジカルシンキング研修で使えるパワーポイント資料の販売について

まとめ|ロジカルシンキング→体験→座学の順序設計が研修効果を決める

システム思考研修を効果的にするには、いきなり座学に入るのではなく、ロジカルシンキングの土台を固めた上で、ビールゲームのような体験型ゲームを挟み、最後に因果ループ図とシステム原型の座学に進む3ステップ設計が推奨されます。順序を間違えると「図の描き方は覚えたが自社で使えない」状態に陥りやすいので、研修企画の段階で順序を意識した設計を心がけましょう。


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