2022年カタールワールドカップ、日本のグループリーグ初戦・ドイツ戦での森保監督の采配は、多くのビジネスパーソンにとっても強烈な学びになりました。本記事ではこの歴史的逆転勝利を氷山モデルとシステム思考の枠組みで分析し、ビジネス現場の問題解決にも通じる示唆を整理します。

結論:森保采配は「構造への介入」だった

本記事の結論を先に提示します。

・前半の日本は「できごと(ボールを奪えない/守備がずれる)」に現象的に翻弄されていた
・森保監督の采配は個別プレーへの叱咤ではなく、フォーメーションという構造(システム)そのものを変えるハーフタイムの意思決定だった
・これは氷山モデルでいう「構造への介入」で、システム思考がビジネスに示唆する問題解決の王道パターンと重なる

試合経過の振り返り

ドイツ戦は2-1で日本の逆転勝利という歴史的な結果となりました。筆者は友人たちと試合前にスコア予想をしており、7名ほどで行ったうち誰一人として勝利を予想していませんでした(筆者自身は0-3で日本敗戦と予想)。前半終了時点では0-2になってもおかしくない内容で、0-3予想は前半で確信に変わりつつありました。

しかし後半の日本は別チームのように変貌します。なぜか──その鍵が森保監督のハーフタイム采配にありました。

元日本代表で現在は起業家の鈴木啓太氏のYouTubeチャンネルでも、この采配は詳しく解説されています。

氷山モデルとは

氷山モデル 4層構造

氷山モデルはシステム思考の入門として使われる代表的なフレームワークで、水面下に何が潜んでいるかを4層で捉えます。

できごと(Events):表面に見える個別の出来事
パターン(Patterns):できごとの繰り返しに見える傾向
構造(Systems/Structures):パターンを生み出しているルール・関係性
メンタルモデル(Mental Models):構造を無意識に正当化している前提・信念

問題解決の効果は下層にいくほど大きく、表層のできごとに反応するだけでは根本解決に至りません。

ドイツ戦を氷山モデルで分解する

できごと:思うように攻められない前半

前半は日本の強みだったサイドからの速攻が20分以降ほぼ出なくなり、ボール保持率でも劣勢、失点シーンを含めてドイツペースが続きました。表層で観測できる「できごと」は、この一連のプレーそのものです。

パターン:キミッヒ周りで守備がずれる

前半に繰り返し発生していたのが、ドイツのミッドフィルダーキミッヒ選手を日本がうまく捕まえられず、守備陣形がずれてドイツ側の誰かがフリーになるというパターンです。単発の失点でなく、構造的に繰り返される事象がここにありました。

構造(システム):4バック×中盤4人の陣形

このパターンを生んでいたのがフォーメーション(システム)そのものです。日本の4-2-3-1型では中盤4人でドイツの中盤5〜6人を捕まえきれず、キミッヒを自由にさせる構造が固定化されていました。

メンタルモデル:日本は3バックを使わない

さらに下層には「3バックは日本代表の伝統フォーメーションではない」という暗黙の前提(メンタルモデル)がありました。この前提があるからこそ、4バック堅持が意思決定のデフォルトになっていたと見立てられます。

森保監督の「構造への介入」

森保監督はハーフタイムにこの構造そのものに手を入れます。

ディフェンダー冨安選手投入で4バック→3バックへ移行
・中盤を4人→5人に増やしドイツの中盤厚みに対抗
・キミッヒ選手を遠藤選手が監視+鎌田選手がサポートする2段構えに変更

この構造変更により前半のパターンは解消され、中盤のボール支配が回復。後半はさらに三苫選手・堂安選手を投入し、三苫選手の仕掛けから堂安選手が同点ゴール、逆転弾の浅野選手も交代出場と、交代カード全員が勝利に直結する結果となりました。

これはまさに、氷山モデルでいう構造層への介入であり、さらに「3バックは使わない」というメンタルモデルを打ち壊すゼロベースの意思決定でもありました。

ビジネスへの示唆:現象に反応せず構造を変える

ドイツ戦の采配は、ビジネスの問題解決にもそのまま応用できる視点を与えてくれます。

・個別の失敗(できごと)に対して叱咤や増員で反応しても、同じパターンは再発する
・再発の背景には業務プロセス・組織体制・評価制度といった構造が潜む
・さらに「〜すべき」「〜はうちらしくない」というメンタルモデルが構造を固定化している

組織の問題が繰り返し起きるときに本当に必要なのは、現象への反応ではなく構造とメンタルモデルへの介入です。ドイツ戦はその象徴的なケースとして、研修教材としても強力な事例になります。

氷山モデルとシステム思考について、さらに事例で学びたい方は以下の記事もご覧ください。

事例で学ぶ氷山モデルとシステム思考

氷山モデルとシステム思考の関係

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システム思考を学ぶ推薦書

氷山モデルとシステム思考を深く学びたい方には以下の書籍がおすすめです。

より入門的に学びたい方は、同じ小田理一郎氏が関わる漫画版がおすすめです。

よくある質問

Q. 氷山モデルとシステム思考の違いは何ですか

氷山モデルはシステム思考の入門フレームワークの1つで、現象の背景を4層に分けて捉える視点を提供します。システム思考はより広い概念で、要素の相互作用とフィードバックループに注目する思考法全般を指します。

Q. 組織の問題に氷山モデルを適用する際のコツは

「できごと/パターン/構造/メンタルモデル」を1つずつ言語化することです。特にメンタルモデル層は当事者が自覚しにくいため、外部ファシリテーターや研修の場を活用すると掘り下げやすくなります。

Q. 経営会議で氷山モデルを使うと効果的ですか

はい、経営アジェンダの多くは「できごと」レベルで議論が止まりがちです。氷山モデルの4層に落として議論することで、本質的な打ち手が見えやすくなります。

まとめ

ドイツ戦の森保采配は、氷山モデルでいう「構造への介入」と「メンタルモデルを越えたゼロベース意思決定」が見事にハマった事例でした。ビジネスの問題解決でも同じ発想が有効です。

現場で起きる繰り返しの問題に対して、「見えている現象」に反応するのか、「それを生み出している構造」に手を入れるのか──本記事が日々の意思決定のヒントになれば幸いです。


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