キャリア・アダプタビリティとは何か?診断テスト付き
キャリア・アダプタビリティとは何か?
― 診断テストと、企業ができる具体施策まで ―
働き方やキャリアの前提が大きく変わる中で、企業にとっても個人にとっても「変化への適応力」が強く求められる時代になっています。
・変化のたびに、現場のエンゲイジメントが下がる
・育成や研修をしても、定着につながらない
こうした現場の課題を読み解く概念として、近年注目されているのが
「キャリア・アダプタビリティ(Career Adaptability)」です。
本記事では、キャリア・アダプタビリティの基礎知識から、
「離職率を下げる」という意外な研究結果、
そして明日から使える「診断チェックリスト」までを一挙に解説します。
1. キャリア・アダプタビリティとは?
キャリア・アダプタビリティとは、
意味づけしながら行動していく力」
を指します。
この概念は、キャリア構築理論で知られる米国の心理学者
マーク・サビカス(Mark Savickas)によって提唱されました。
重要なのは、特定のスキル(英語ができる、プログラミングができる等)そのものではなく、
「変化にどう向き合うか」という“姿勢と基礎体力”に焦点を当てている点です。
2. キャリア・アダプタビリティの4つの側面(4C)
キャリア・アダプタビリティは、以下の4つの側面(4C)から構成されます。

【Concern:関心】未来への関心
将来に目を向け、自分のキャリアについて考えようとする姿勢。
・今の経験を将来と結びつけて考えている
【Control:統制】キャリアの統制
自分のキャリアを「自分で選んでいる」と感じられる感覚(主体性)。
・環境のせいにせず、自分で動こうとする
【Curiosity:好奇心】周囲への好奇心
可能性を探り、視野を広げようとする姿勢。
・複数の選択肢を検討する
【Confidence:自信】課題解決への自信
困難に直面しても「何とかできる」と信じて行動できる力(自己効力感)。
・失敗を学習として捉えられる
これら4つが高い人ほど、環境変化を「脅威」ではなく「成長の機会」と捉えやすくなります。
3. キャリア・アダプタビリティは離職を防ぐのか?
企業として気になるのは、
「キャリア・アダプタビリティを高めると、市場価値が上がって転職してしまうのではないか?」
という点ではないでしょうか。
しかし、近年の研究では、むしろ逆の傾向が示されています。

2024年に発表された研究
キャリア・カウンセリング研究 2024年 第26巻 第1号 1‒12
https://www.jstage.jst.go.jp/article/careercounseling/26/1/26_1/_article/-char/ja
において、キャリア・アダプタビリティと
「移動への選好(転職して会社を移ることを好む傾向)」との間には、
「-0.322」という負の相関(逆の関係)が確認されています。
これは、キャリア・アダプタビリティが高い人ほど、不満や変化に直面した際に
「すぐに辞める(逃避)」のではなく、「今の環境で工夫し、適応しようとする」傾向が強い
ことを示唆しています。
また、同研究では「自己効力感(仕事への自信)」と強い正の相関(0.719)がある
ことも確認されており、結果としてワーク・エンゲイジメントの向上にもつながりやすい
とされています。
つまり、キャリア・アダプタビリティを高めることは
「離職を防ぐために縛る施策」ではなく、「前向きに定着する状態」をつくる施策だと言えます。
4. 【24問】キャリア・アダプタビリティ診断(CAAS)
では、自社の社員やあなた自身のキャリア・アダプタビリティはどのくらいでしょうか?
前述の論文で信頼性が検証された
「日本語版キャリア・アダプタビリティ尺度(CAAS-J)」の24項目をご紹介します。
各項目について、
「5:かなり身につけている」〜「1:ほとんど身につけていない」
の5段階でセルフチェックをしてみてください。
【関心(Concern)】
2. 今日の選択が自分の将来を形づくると認識すること
3. 将来に向けて準備をすること
4. 教育上・職業上の選択を自分がしなければならないと意識すること
5. 自分の目的を達成するための方法を計画すること
6. 自分のキャリアに関心を持つこと
【統制(Control)】
8. 自分で決断すること
9. 自分の行動に責任を持つこと
10. 自分の信念を貫くこと
11. 自分自身を信じること
12. 自分にとって正しい行いをすること
【好奇心(Curiosity)】
14. 人として成長する機会を見つけること
15. 選択する前に選択肢を吟味すること
16. 物事を進める多様なやり方を観察すること
17. 自分の疑問を深く掘り下げること
18. 新しい機会に好奇心を持つこと
【自信(Confidence)】
20. 物事がうまくいくように気を配ること
21. 新しいスキルを習得すること
22. 自分の能力を最大限に発揮すること
23. 困難を乗り越えること
24. 問題を解決すること
診断の目的は、評価や選抜ではありません。
「自分は今、どの側面が強く、どこが弱いのか」を可視化し、
キャリアを考えるための“鏡”として活用することにあります。
なお、WEB上で簡単に回答・自動採点ができるよう、
実際に診断テストを作ってみました。
以下のリンクより無料・登録不要ですぐに実施できます。
キャリア・アダプタビリティ診断テスト(無料・登録無し)
設問画面

結果閲覧画面

5. キャリア・アダプタビリティを高める企業施策
キャリア・アダプタビリティは、個人任せでは育ちません。企業側の関わり方が重要です。
代表的な施策としては以下が挙げられます。
キャリア・ダイアログ(1on1)の実施
ジョブ・クラフティングの促進
越境学習や社内公募制度
共通して重要なのは、「答えを与える」のではなく、
「考え、選び、試す機会」を組織として用意することです。
まとめ
キャリア・アダプタビリティは、個人にとっては変化の時代を生き抜く力であり、
企業にとってはエンゲイジメントと定着を支える土台です。
離職を防ぐために縛るのではなく、「変化に向き合える力」を育てる。
それが、これからの人材育成の重要な視点と言えるでしょう。
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参考文献
塩川 太嘉朗, 保田 江美, 中原 淳(2024)『日本語版キャリア・アダプタビリティ尺度の開発:若年労働者を対象とした信頼性・妥当性の検証』キャリア・カウンセリング研究 26巻1号 p.1-12
https://www.jstage.jst.go.jp/article/careercounseling/26/1/26_1/_article/-char/ja
