McGrathによる組織の課題の8つの分類
組織やチームが取り組む課題は、一見バラバラに見えて実は一定のパターンで分類できます。社会心理学者 Joseph E. McGrath が1984年に提唱した「集団課題の8分類 (Circumplex Model of Group Tasks)」は、会議やチーム活動の性質を整理する上で今も広く参照される枠組みです。
本記事では、山口裕幸(2020)「チームの有効性とその規定要因──心理学のパースペクティブから」で紹介されたMcGrathの分類を、会議運営や研修設計への活かし方とあわせて解説します。

https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2020/07/pdf/014-023.pdf
分類の枠組み: 2つの軸と4つの大分類
McGrathは集団課題を2軸で整理しました。
・横軸: 認知的 (cognitive) ⇔ 行動的 (behavioral)
・縦軸: 葛藤解決的 (conflict resolution) ⇔ 調整的 (coordinate) ⇔ 協働的 (collaborate)
この組み合わせで4つの大分類 (A発生・B選択・C交渉・D実行) が生まれ、それぞれをさらに2種類に分けた結果、全部で8種類の集団課題として整理されています。

A. 発生 (generate) 課題: 新しいものを生み出す
何もないところから計画やアイデアを生み出すタイプの課題です。認知的で協働的な性格を持ちます。
1. 計画立案 (planning tasks)
行動の順序・スケジュール・役割分担などを具体的に組み立てる課題です。目標までの道筋を設計する作業で、論理性と実行可能性が重視されます。
2. 創造的アイデア創出 (creativity tasks)
ブレインストーミングのように、新しいアイデアや発想を数多く生み出す課題です。正誤よりも数・多様性・独創性が評価の軸になります。
B. 選択 (choose) 課題: どれを取るかを決める
複数の選択肢から答えを1つに絞り込むタイプの課題です。ここで重要なのは、「正解があるかどうか」で2つに分かれる点です。
3. 問題解決 (intellective tasks) — 正解あり
客観的な正解が存在する問題を解く課題です。数学の問題、知識を問うクイズなどが該当します。集団で取り組む場合、メンバーが根拠を持ち寄って正解に収束させるプロセスが求められます。
4. 意思決定 (judgment tasks) — 正解なし
「どの戦略を選ぶか」「新商品をどう打ち出すか」など、客観的な正解が存在しない判断課題です。リーダーに求められる意思決定能力とは、まさに正解が見えない状況で方針を決め、組織を動かす力のことを指します。
C. 交渉 (negotiate) 課題: 立場の違いを調整する
メンバー間で考え方や利害がぶつかる場面で、合意点を探る課題です。葛藤解決的な性格が強い領域です。
5. 認知的葛藤 (cognitive conflict tasks)
同じ情報を見ていても解釈が食い違うケースで、互いの認識のズレを明らかにして共有理解へ導く課題です。議論の論点整理が中心になります。
6. 利害対立葛藤の解決 (mixed motive tasks)
部署間の予算取りなど、利害そのものが対立する場面での交渉です。勝ち負けではなく、互いが納得できる落としどころを見つける力が問われます。
D. 実行 (execute) 課題: 決まったことをやり切る
方針や手順がすでに決まっている状況で、それを着実に遂行するタイプの課題です。行動的な性格が強い領域です。
7. 競争・闘争 (contests/battles)
他チームや競合との勝負に勝つことが目的の課題です。スポーツ・営業コンペティションなどが該当します。
8. 所定の手続きによる課題遂行 (psychomotor tasks)
決められた手順を正確に実行する課題です。製造ラインでの作業、オペレーション業務などがあてはまります。
実務への活かし方
McGrathの分類を知っておくと、次のような場面で判断がクリアになります。
会議の目的を決めるとき
今回の会議は「アイデアを出す場」なのか「計画を詰める場」なのか、あるいは「方針を選ぶ場」なのかを、ファシリテーターが事前に宣言しておくと議論が収束しやすくなります。A (発生) とB (選択) では進め方が大きく異なるためです。
リーダー育成プログラムを設計するとき
「意思決定力を鍛える」と一言でいっても、問題解決 (正解あり) を鍛えるのか、意思決定 (正解なし) を鍛えるのかで、必要な訓練内容は違います。McGrath の分類を参考に、育成ターゲットをピンポイントに絞れます。
研修コンテンツを選ぶとき
自社が強化したい課題タイプに応じて、適切なビジネスゲームを選べます。たとえば、合意形成を鍛えたいならB選択課題 (正解あり) 系、交渉力を鍛えたいならC交渉課題系、といった整理が可能です。
分類ごとに鍛えられるビジネスゲーム
弊社のビジネスゲームを、McGrath の分類に合わせて整理すると次のようになります。
A. 発生課題を鍛えたい

ペーパータワーforビジネス: 限られた時間で計画を立て、紙でタワーを作るワーク。計画立案 (planning tasks) の要素が強いゲームです。

マシュマロチャレンジ: マシュマロとパスタで自立するタワーを作る有名ワーク。試行錯誤を通じた創造的アイデア創出 (creativity tasks) を体験できます。
B. 選択課題を鍛えたい

NASAゲーム: NASA公式のコンセンサス教材。正解のある問題 (intellective tasks) をチームで議論しながら解きます。メンバーが根拠を持ち寄って正解に収束させるプロセスの典型です。
C. 交渉課題を鍛えたい

ベストチーム(カード版): チーム間で資源を交渉しながら目標を達成するゲーム。利害対立を伴う交渉 (mixed motive tasks) の学びに直結します。
まとめ
McGrath の集団課題8分類は、組織で起こる仕事を「どういう性質の課題か」で整理するレンズとして非常に有用です。目の前の課題や会議の性質を、A発生 / B選択 / C交渉 / D実行のどこに位置づけられるか意識するだけでも、進め方や成果物の評価基準が定まります。
出典論文は下記リンクから読めますので、原文にあたりたい方はぜひご覧ください。
https://www.jil.go.jp/institute/zassi/backnumber/2020/07/pdf/014-023.pdf
