管理職のなり手不足は意欲ではなく処遇と設計のどちらの問題かを見分ける図解

【結論】管理職のなり手不足は、社員の意欲が下がった結果ではなく「管理職という仕事の見え方」と「そこへ至る経験の設計」が追いついていない結果です。
一般社員の管理職意向は18.1%にとどまり、最も強く拒否しているのは若手ではなく40代(「なりたくない」62.0%)でした。なりたくない理由の1位も待遇ではなく「責任が重い」です。
打診を断られた理由が処遇条件なら待遇の再設計を、「務まる気がしない」なら期待の言語化と小さなマネジメント経験の付与を優先します。

目次

1. 管理職のなり手不足は、どこまで進んでいるのか
2. 管理職離れは「若手の価値観」では説明できない
3. 「割に合わない」は、なりたくない理由の1位ではない
4. 候補者が見ているのは、目の前の管理職の姿
5. 打診を断られた理由で、原因は見分けられる
6. 「自分にもできそうだ」と思える経験を先に渡す
7. まとめ
8. よくある質問
9. 部課長ゲーム|研修導入をご検討の方へ

「管理職になってほしい候補者が、手を挙げてくれない」——人事の方からよく伺うご相談です。

管理職手当を積み増す、業務を減らす、残業代の逆転現象を解消する。処遇の議論はこの数年で確かに進みました。ところが「管理職になりたいという声が増えてきた」という手応えを持てているという話は、あまり聞こえてきません。

本記事の主張はひとつです。管理職のなり手不足は、待遇の問題「だけ」ではありません。多くの企業で見落とされているのは、管理職という仕事が候補者にどう「見えているか」、そして登用までにどんな「経験」を渡せているか、という設計の部分です。

以下では、データが示すなり手不足の実像、「割に合わないから」という通説がどこまで説明できるのか、人事が起点になれる打ち手、の順に整理していきます。

管理職のなり手不足は、どこまで進んでいるのか

まず、事実から確認します。

パーソル総合研究所の「働く10,000人の就業・成長定点調査」2026年版によれば、「管理職になりたい」と答えた正社員は17%で、同社が集計を始めた2018年以降で最も低い水準となりました。

出典: 働く10,000人の就業・成長定点調査(パーソル総合研究所)/「管理職になりたい社員」過去最低の17% パーソル総研調べ(日本経済新聞・2026年4月)

別の調査も同じ方向を指しています。タレントインテリジェンス総研(カオナビ)が2025年3月に有業者1,000名へ実施した「管理職意向サーベイ」では、一般社員332名のうち管理職に「なりたい」は4.5%、「どちらかと言えばなりたい」は13.6%で、肯定的な回答は合計18.1%にとどまりました。

裏を返せば、「どちらかと言えばなりたくない」29.2%と「なりたくない」52.7%を合わせた81.9%が、管理職を志向していないということになります。

調査によって対象も設問も異なるため数字に幅はありますが、「なりたい」が2割前後の少数派であるという構図は、どの調査でも変わりません。

出典: 「管理職は罰ゲーム」か?一般社員の8割が昇進を望まない実態と背景 ―管理職意向サーベイから①ー(タレントインテリジェンス総研/2026年2月26日公開・2025年3月24〜26日調査・有業者1,000名)

管理職離れは「若手の価値観」では説明できない

見落とされがちなのは、これが「今どきの若手」だけの現象ではないことです。

同じサーベイを年代別に見ると、20代・30代で管理職意向が著しく低いのは事実です。しかし「なりたくない」と最も強く言い切った割合が高いのは40代で、62.0%でした。管理職の実像を最もよく知り、次の登用候補であるはずの世代が、最も明確に首を横に振っているわけです。

管理職離れを「Z世代の価値観だから」で説明しようとすると、この事実が説明できません。管理職という仕事そのものが、世代を問わず選ばれなくなっていると考えるほうが実態に近いといえます。

企業規模別の分布も示唆的です。

従業員規模 「なりたくない」の割合
〜99人(小規模) 58.3%
100〜999人(中規模) 55.5%
1,000人以上(大規模) 45.4%

規模が大きいほど「なりたくない」は下がりますが、それでも大企業で45.4%です。同総研は、大規模企業では管理職の役割やキャリアパスが可視化されやすく、見通しを持ちやすいことが影響している可能性を指摘しています。

つまり「管理職の仕事が見えているかどうか」が意向に効いている可能性が、規模の差として表れているわけです。

「割に合わない」は、なりたくない理由の1位ではない

ここで、多くの職場が前提にしている通説を取り上げます。「管理職は責任ばかり重くて報われない。だから待遇を直せば、なり手は戻る」という理解です。

実際、管理職手当の増額や業務削減に踏み出す企業も出てきています。その方向は正しく、後戻りすべきものでもありません。

ただし、理由の内訳を見ると、待遇論だけでは説明がつかなくなります。

ビズヒッツが「管理職になりたくない」と考える男女500名(女性300名/男性200名)へ2022年10月に実施した調査では、なりたくない理由の1位は男女とも「責任が重い」でした。

順位 女性300名 男性200名
1位 責任が重い(119人) 責任が重い(57人)
2位 仕事・残業が増える(86人) 割に合わないと感じる(53人)
3位 管理職に向いていない(52人) 仕事・残業が増える(52人)
4位 割に合わないと感じる(50人) 人間関係で悩みそう(28人)

待遇への不満である「割に合わないと感じる」は、男性では2位ですが、女性では4位です。そして男女とも、それより上に「責任が重い」が来ています。

待遇の問題は確かに存在します。しかし首位に来るのは、報酬と負荷の収支より手前にある「あの重さを自分が引き受けられるのか」という、仕事そのものへの距離感です。

同じ調査では、管理職への昇進を打診されたらどうするかという問いに、500人中60.6%が「断る」と回答しています。打診を断られる経験が一部の企業だけの話ではないことが分かります。

出典: 管理職になりたくない理由ランキング!男女500人アンケート調査結果を紹介(株式会社ビズヒッツ/2022年10月4〜9日調査・有効回答500人)

候補者が見ているのは、目の前の管理職の姿

では、その「距離感」はどこから生まれるのでしょうか。

候補者が毎日見ているものを考えると、輪郭がはっきりします。部下にとって、直属の上司の働く姿は、管理職という仕事の「求人票」そのものです。

産業能率大学総合研究所が上場企業に勤務する部長385名へ実施した「第2回上場企業の部長に関する実態調査」では、96.9%の部長がプレイヤーとマネジャーを兼務しており、前回調査より1.1ポイント増加していました。そして約半数の部長が、その状況について「業務に支障がある」と答えています

さらに、部長としての悩みを複数回答で尋ねた結果は、1位が「部下がなかなか育たない」、2位が「部下の人事評価が難しい」、3位が「職場の(または自分の)業務量が多すぎる」でした。

出典: 上場企業の部長の96.9%がプレイングマネジャー(第2回上場企業の部長に関する実態調査)(学校法人産業能率大学/2022年2月8日発表・2021年9月14〜16日調査・有効回答385人)

自分の実務を持ったまま、部下の責任と管理業務が上乗せされ、本人も「支障がある」と感じている——毎日それを見ている社員に「管理職になりたいか」と聞けば、答えは自然に決まります。

なりたくないのではなく、「なりたいと思える仕事に見えていない」のです。

しかも、この状態は循環します。なり手が現れないほど、少数の現任管理職に負荷が集中し、その疲弊した姿が次の候補者をさらに遠ざけます。

なお、現在の管理職が抱えている負荷そのものをどう分業するかについては、罰ゲームと呼ばれる管理職とその対策(日揮様の事例など)で、支援の分業という観点から取り上げています。あわせて、中間管理職が受けている負荷の別の側面についてはハラスメント最大の被害者は中間管理職|データで見る実態と対策もご覧ください。

打診を断られた理由で、原因は見分けられる

【要点】昇進打診を断られた理由が「給与が見合わない」「残業が増える」など処遇の条件なら、原因は待遇にあり、打ち手は処遇の再設計です。「自分には務まらない」「今の仕事を続けたい」といった漠然とした遠慮が返ってくるなら、管理職の仕事の見え方と、登用前に渡す経験の設計を見直します。

自社のなり手不足がどこから来ているのかは、昇進打診を断られたときの理由の「質」で、ある程度の見分けがつきます。

「給与が見合わない」「残業が増えるのは困る」と、処遇の条件が具体的に挙がるなら、原因は待遇にあります。この場合の打ち手は処遇の再設計です。

一方、「自分には務まらないと思う」「今の仕事を続けたい」と、どこか漠然とした遠慮が返ってくるなら、待遇を直しても動きません。疑うべきは、管理職の仕事が本人にどう見えているのか、そしてその仕事に向けた準備の機会が渡っているのか、という側面です。

ただし、断りの言葉には角を立てないための建前も混ざります。打診の場での返答だけで判断せず、時間を置いた面談で「何が変われば引き受けられそうか」まで聞けると、判定の精度は上がります。

打診のやりとりが人事まで届いていない場合は、部門長に「直近で断られた例をひとつ教えてほしい」と聞くところから始めれば十分です。

「自分にもできそうだ」と思える経験を先に渡す

先ほどのタレントインテリジェンス総研のサーベイには、対策を考えるうえで示唆的な結果があります。

一般社員を「将来的に管理職になりうるコースにいる」と認識している層と、「管理職になることはないコースにいる」と認識している層に分けて集計すると、管理職に「なりたい」「どちらかと言えばなりたい」と答えた割合は、前者が31.5%、後者は11.3%でした。この差は統計的に有意(p<0.01)と報告されています。

本人が「自分は管理職になりうる立場だ」と認識しているかどうかで、意向が3倍近く違うということです。

もちろん、認識さえあれば意向が自動的に高まるという単純な話ではありません。同総研も、コース内であっても管理職意向は3割程度にとどまる点を挙げ、「管理職忌避は単純な認識の問題だけでは説明しきれない」としています。

それでも、人事が起点になれる打ち手の方向は見えてきます。

1つ目は、「候補としての期待」を早く言葉にすることです。昇進の打診が突然やってくると、本人の中で管理職は「未知の仕事」のまま、重さだけが目の前に置かれます。断られるのは自然な帰結です。

2つ目は、小さなマネジメント経験を先に渡すことです。後輩の育成担当、小さなプロジェクトのリード、会議の進行役——責任の一部を切り出して早めに渡し、「あなたを次の候補として見ている。この経験はその準備だ」と意図を言葉にして添えます。

マネジメントの手応えを部分的にでも先に体験していれば、打診は「未知への飛び込み」から「延長線上の一歩」に変わります。そしてこれは若手に限った話ではありません。打診を断り続けている40代にも、期待の言語化と小さな経験は同じように効きます。

なお、経営幹部・後継者クラスにどのような経験を渡すべきかという観点は、後継者育成で何を経験させるか|次世代リーダーに必要な6つの経験で整理しています。

役割を「演じてみる」ことで、見え方を変える

とはいえ、実務の中で小さなマネジメント経験を全員に渡すには時間がかかります。そこで、研修の場で上司と部下の立場を疑似的に体験するという方法があります。

部課長ゲームは、1チーム原則5名が「部長」「課長」「社員」の役割に分かれて行うカードゲーム型のビジネスゲーム研修です。口頭でのコミュニケーションは禁止され、やりとりはメモ用紙を渡すことでのみ可能になります。クリア条件は全員が同じカードを4枚揃えることですが、その条件は部長の指示書にだけ書かれています。

部課長ゲームの実施風景

この制約によって、目的共有や報連相が機能しない組織で何が起きるかを擬似体験する設計になっています。普段は指示を受ける側の社員が部長役を担うことで、「上司は何を抱えていて、なぜあの指示になるのか」を内側から見ることができます。

2026年8月現在、部課長ゲーム(カード版)の導入社数は約160社、受講者満足度は4.84(5点満点)となっております。

部課長ゲーム 受講者満足度

ゲームが終わってから驚いたという声が多かったです。普段リーダー的ポジションでは無い人が部長役をやってみて面白かったという声がありました。

実施概要

項目 内容
対象人数 4〜100名超(1チーム原則5名。部長1名・課長2名・社員2名)
所要時間 1時間〜1時間半(振り返り・講義の時間により調整可能)
提供形態 講師派遣(30名まで1.5時間 15万円・税別)/キットレンタル(20名まで 5万円・税別)
テーマ フォロワーシップ・目的共有・報連相

部課長ゲームの詳細はこちら

管理職研修向けのビジネスゲームをまとめて比較したい方は、管理職研修で使えるビジネスゲーム10選|目的別の選び方と比較表つきもあわせてご覧ください。

まとめ

管理職のなり手が2割に満たない状況を「今どきの社員は出世に興味がない」という意欲の問題として片付けている限り、打ち手は待遇の積み増しくらいしか残りません。しかしデータが示していたのは別の景色でした。管理職の実像を最もよく知る40代が最も強く忌避し、なりたくない理由の首位は待遇より先に「責任の重さ」でした。管理職離れは、社員の意欲が下がった結果というより、管理職という仕事の見え方と、そこへ至る経験の設計が時代の変化に追いついていない結果だといえます。

直近1年で昇進の打診を受けた社員に、こう聞いてみてください。「打診されたとき、管理職の仕事はどう見えていましたか」

返ってきた言葉が処遇の条件なら、待遇の再設計が先です。もし「務まる気がしなかった」「何をする仕事か、実はよく分からなかった」という言葉が返ってきたなら、それは意欲の問題ではありません。見え方と経験の設計から始める余地が、十分に残っているということです。

よくある質問

Q. 管理職になりたくない最大の理由は何ですか?

調査データによると、なりたくない理由の第1位は「責任が重い」です。待遇面での「割に合わない」という不満よりも、仕事そのものへの心理的な距離感や「自分に務まるか」という不安が先立っていることが分かります。

Q. 若手だけでなく40代も管理職を拒否しているのはなぜですか?

40代はプレイングマネジャーとして疲弊する上司の姿を最も近くで見ているためです。業務過多やハラスメント対応に悩む姿が「管理職の求人票」のようになってしまい、昇進を罰ゲームのように感じてしまう構造があります。

Q. 管理職のなり手不足を解消するための最初のステップは何ですか?

まずは打診を断られた理由を見極めることです。処遇条件が理由なら待遇の再設計を、「務まる気がしない」という不安が理由なら、期待の言語化や、事前に小さなマネジメント経験を積ませるスモールステップの設計を優先します。

Q. 管理職に必要なマネジメントや意思決定を疑似体験させる方法はありますか?

管理職の役割や情報伝達の難しさを体感できる研修として、高い満足度を得ている部課長ゲーム(カード版)が有効です。組織における情報の非対称性や、伝達の重要性をゲームを通して学ぶことができます。

Q. オンライン環境でも管理職向けの研修を実施することは可能ですか?

はい、Zoomなどのウェブ会議システムを利用して実施できる部課長ゲーム オンラインをご用意しています。対面での実施が難しい場合でも、オンライン上で同様のマネジメント疑似体験が可能です。

Q. 部課長ゲームの導入費用や詳細について知りたい場合はどうすればよいですか?

部課長ゲームのレンタルや購入に関する具体的な価格や仕様については、資料請求からご確認ください。企業の規模や実施環境に合わせた最適なプランをお問い合わせ時にご案内いたします。

部課長ゲーム|研修導入をご検討の方へ

管理職候補に「延長線上の一歩」として感じてもらうためには、まず上司と部下の立場を体験してもらうことが近道です。部課長ゲームは、口頭でのやりとりを禁止しメモだけで指示を伝える体験を通じて、管理職の仕事を内側から見る機会をつくります。

詳細な資料、お見積りをご希望の方はまずは下記より資料請求をお願いします。

※同業他社様からのお問い合わせはご遠慮ください。

※必須

お問い合わせ内容

※必須

企業名

※必須

ご担当者様氏名 (姓と名の間に半角スペースを入れてください)

※必須

メールアドレス

※メールアドレスは企業アカウントのみ有効とさせて頂いております。

※必須

研修目的

※研修の目的、ゴール、実施背景など箇条書きで構いませんのでご記入下さい。

その他、実施時期や受講人数など(300文字以内)


この記事を書いた人

千葉 順
千葉 順
株式会社HEART QUAKE 代表取締役
元法政大学兼任講師(キャリアデザイン論)
→ 詳しいプロフィール

関連記事

人気記事

お知らせ

関連記事

記事内検索

カテゴリ別

注目されているタグ

HEART QUAKE サポート
TOPに戻る
お問い合わせ