新人育成のための施策としてOJT(On the Job Training)を実施されている企業が多いかと思います。

少し昔のデータになりますが、2007年の労働政策研究・研修機構による調査によれば、製造業等ものづくり関係業種では、52%の企業が計画的なOJTを実施しているとのことです。
参考:https://www.jil.go.jp/institute/siryo/2007/documents/026_03.pdf

計画的なOJT」と書かれているのは現実ではOJTという名の放置プレイが横行していることを表しているものだと推察できます。

当然ながら、OJTを実施するからには新人の業務能力を早期に向上させたいという狙いがあるものだと思いますが、では、具体的にOJTリーダー(OJT担当・指導員)がどのような行動を取れば業務能力の向上につながるのか、そのあたりがよくわかっていないというのが現実ではないでしょうか。

今回は、このような疑問に対して、とある研究結果を紹介したいと思います。

上記で紹介した「職場学習の探求 企業人の成長を考える実証研究」という書籍、の5章に株式会社ラーンウェルの代表取締役である関根雅泰 氏の研究結果が掲載されています。
株式会社ラーンウェル ホームページ

「協力」と「会話」が能力向上のポイント!

結論から書けば、研究結果によるとOJTリーダー(OJT担当・指導員)の「協力」と「会話」が新入社員の能力向上につながったということです。

これだけ見れば、そりゃそうだろうな、と思ってしまうと思いますが、この調査では「委任」は能力向上に影響を及ぼさなかったことなども明らかとなっており、とても興味深い調査となっています。

また、協力や会話の具体的な行動は以下の通りとなっています。

協力に該当する行動

・あなたに他部門と協力して仕事をする機会を与えてくれた
・あなたに他工場やグループ会社で仕事をする機会を与えてくれた
・あなたが他の職場メンバーからも指導を受けられるよう配慮してくれた
・あなたと同行した際、様々な人(他部門や取引先)を紹介してくれた
・あなたを会議や打ち合わせに同席させてくれた
・あなたの指導状況を、会議や報告書等で職場メンバーと共有していた

会話に該当する行動

・あなたのプライベートな相談にのってくれた
・あなたの良かった点や成長した点をみつけてほめてくれた
・あなたの話をよく聞いてくれた

※すべての行動に「OJT指導員は」という主語がつきます

職場学習の探求 企業人の成長を考える実証研究 P155
第5章 新入社員の能力向上に資する先輩指導員のOJT行動

「委任」は能力向上に影響なし?

一方、下記の「委任」の行動は能力向上に影響を及ぼさなかったことも明らかとなりました。

委任に該当する行動

・あなたに行き当たりばったりではなく、計画的にOJT(指導)を行ってくれた
・あなたの立場に立った指導をしてくれた

※すべての行動に「OJT指導員は」という主語がつきます

職場学習の探求 企業人の成長を考える実証研究 P155
第5章 新入社員の能力向上に資する先輩指導員のOJT行動

同様の結果は松尾 睦 氏によるOJTの実践知:若手社員の熟達支援(2010)でも以下のように述べられています。

若手が 1 年目の段階で「自律の支援」を、(一部省略) 過剰に要求することは、
若手と指導者の関係を悪化させたり、成長を阻害することが明らかになった。

そもそも、能力向上とは?

なお、ここでの能力向上とは、中原 淳 氏による職場学習論のP83に掲載されている17項目からなる尺度を因子とされているということです。

ちなみに、能力向上は職場学習論によれば下記の6つの次元の能力向上を表しています。

1.業務能力向上
2.他部門理解向上
3.他部門調整能力向上
4.視野拡大
5.自己理解促進
6.タフネス向上

職場学習論 P.72

まとめ

いかがでしたでしょうか。

新人の能力向上に影響を及ぼすOJT行動としては「協力」と「会話」が効果的だということわかりました。

また、「過度な委任」はこのフェーズでは逆効果の可能性もあることがわかっています。

ぜひOJTリーダー研修の際の参考になれば幸いです。

参考

職場学習の探求 企業人の成長を考える実証研究 中原淳 他
第5章 新入社員の能力向上に資する先輩指導員のOJT行動

松尾 睦 OJTの実践知:若手社員の熟達支援(2010)

職場学習論―仕事の学びを科学する 中原淳


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