「毎年ハラスメント研修を実施しているのに、社内の雰囲気が良くなった気がしない」
「研修後、管理職が萎縮して部下への指導を避けるようになった」
「形だけの研修に、現場から不満の声が上がっている」

こうした悩みを抱えている研修ご担当者の方は少なくないのではないでしょうか。

実は、2026年に発表された5万人規模の学術調査で、対面型のハラスメント研修がパワハラの増加と関連しているという衝撃的な結果が報告されました。

本記事では、この調査データをもとに「なぜ研修が逆効果になるのか」、そして「本当に効果のある研修とは何か」を解説します。

パワハラの発生率は下がっていない

まず、日本の職場におけるパワハラの現状を確認しましょう。

国立社会保障・人口問題研究所の茂木洋之氏が、リクルートワークス研究所の全国就業実態パネル調査(JPSED)(約5万人規模)を分析した論文によると、職場でハラスメントを見聞きした人の割合は以下のように推移しています。

・2015年:17.3%
・2017年:18.1%
・2018年:22.1%
・2019年:22.0%
・2020年:18.5%(コロナ禍)
・2021年:19.1%
・2022年:19.9%

出典: 茂木洋之(2026)「日本の労働市場におけるパワーハラスメントの実態と政策的示唆」『生活経済学研究』Vol.63, pp.89-105(J-STAGE)(J-STAGE)

2020年6月にパワハラ防止法が施行されましたが、同時期にコロナ禍で在宅勤務が広がったため、法律の効果とコロナの影響を切り分けることは難しい状況です。

いずれにしても、約5人に1人が職場でハラスメントを見聞きしているという状況は、ここ数年大きく改善されていません。

なぜ「対面研修」がパワハラの増加と関連するのか

この論文で最も注目すべきデータの一つが、企業のハラスメント対策の効果を分析した結果です。

企業が実施している8つのハラスメント対策について、パワハラの見聞き率との関連を調べたところ、意外な結果が明らかになりました。

パワハラの増加と関連していた施策

・「オンライン以外のハラスメント研修の受講」→ パワハラが+4.3ポイント増加と関連
・「管理職向けのハラスメント研修・講演の実施」→ パワハラが+3.2ポイント増加と関連
・「社内にハラスメント相談窓口がある」→ パワハラが+5.9ポイント増加と関連

もちろん、これは「研修をやるとパワハラが増える」という単純な因果関係を示すものではありません。論文の著者は、この結果について2つの解釈を示しています。

解釈1:逆因果

もともとパワハラが多い職場だからこそ、対策として研修を導入した——つまり、研修が原因ではなく結果であるという解釈です。相談窓口の設置についても同様のことが言えます。

解釈2:認識の変化

研修を受けたことで、以前は「厳しい指導」と思っていた行為が「これもパワハラだ」と認識されるようになった——つまり、パワハラの実態が変わったのではなく、認識のハードルが下がったという解釈です。

いずれの解釈にしても、重要なのは「研修を実施すれば問題は解決する」という考え方は、データに裏付けられていないということです。

データが示す「本当に効果のある」3つの対策

では、何が本当にパワハラの抑制に効果があるのでしょうか。同じ論文から、パワハラの減少と関連していた施策を見てみましょう。

対策1:社内アンケート等による実態把握(-6.1ポイント)

「社内アンケートなどで、社内のハラスメントの実態が定期的に集計されている」職場では、パワハラの見聞き率が6.1ポイント低いという結果でした。

匿名のアンケートを通じて「自社の実態」を可視化することで、行為者が自覚のないままハラスメントを行っているケースに対処できる可能性があります。また、360度評価の導入がある職場でもパワハラが3.8ポイント低く、多面的なフィードバックの仕組みが有効であることが示唆されています。

ポイントは、一方的に「これがハラスメントです」と教えるのではなく、自分たちの認識のズレを可視化することにあると言えるでしょう。

対策2:心理的安全性の確保(-11.2ポイント)

論文が分析した組織制度29項目の中で、パワハラ抑制効果が2番目に大きかったのが「安心して発言・行動できる職場」、いわゆる心理的安全性です。

心理的安全性が確保されていない環境では、職場内コミュニケーションが形式化・断片化しやすく、誤解や摩擦が生じやすくなります。逆に言えば、心理的安全性の高い職場ではパワハラが起きにくいという構造的な関係があるのです。

心理的安全性とハラスメントの関係については、弊社の別の記事でも詳しく解説しています。
心理的安全性の前提としてのハラスメント対策

対策3:経営トップのメッセージ発信(-1.7ポイント)

「会社の役員がハラスメント防止を訴えるなど、経営トップがハラスメントに関わるポリシーを発信している」職場では、パワハラの見聞き率が1.7ポイント低い結果でした。

効果の大きさ自体は限定的ですが、統計的に有意な結果です。注目すべきは、この論文の別のデータで、上司からパワハラを受けたと感じた人のうち、相手が代表取締役・役員・顧問クラスだった割合が22.8%と最も高かったという点です。

つまり、経営トップ自身がハラスメントの当事者になりうる現実がある中で、トップが本気で発信することには意味があると言えます。

「逆効果の研修」と「効果のある研修」の違い

ここまでのデータを整理すると、ハラスメント研修の効果を分けるのは「研修をやったかどうか」ではなく、「どのような研修をやったか」であることが見えてきます。

逆効果になりやすい研修 効果が期待できる研修
形式 一方的な座学・講義 双方向・参加型
目的 「実施した」という実績づくり 認識のズレの可視化・対話
起きやすい反応 萎縮(何も言えなくなる) 気づき(自分の認識を客観視)
データとの関連 対面研修 → +4.3pt 実態把握 → -6.1pt

数値は茂木(2026)の分析結果(相関関係であり因果関係ではありません)

座学型の研修では「これはハラスメントです」「してはいけません」と正解を一方的に伝えるため、受講者は「じゃあ何も言わないのが安全だ」と萎縮しがちです。

一方で、効果が確認されている「実態把握」に近い研修——つまり、参加者同士の認識のズレを可視化し、対話を通じて気づきを得る形式の研修は、萎縮ではなく自発的な行動変容を促すことが期待できます。

「認識のズレを可視化する」ハラスメントフラグ

ハラスメントフラグ カード

弊社では、まさに「認識のズレの可視化」をコンセプトにしたゲーム型のハラスメント研修ツール「ハラスメントフラグ」を提供しています。

ハラスメントフラグは、「上司が部下の仕事のミスを、他の社員がいる前で叱責した」といった50の設問に対して、参加者一人ひとりが「ホワイト(問題なし)」「ライトグレー」「ダークグレー」「ブラック(明確なハラスメント)」の4段階で判定するワークです。

実際にどれくらい認識が分かれるのか、これまで弊社で蓄積した1,500名超の回答データから一例をご紹介します。

ハラスメントフラグ 設問16 回答分布(自分が成績不振の中、成績優秀者を目の前で褒められる)

設問16「自分が成績不振の中、成績優秀者を目の前で褒められる」(パワハラの精神的侵害に関連する設問)への判定は、ホワイト326名・ライトグレー456名・ダークグレー433名・ブラック344名と、4択がほぼ均等に割れる結果になりました。

つまり、同じ出来事に対して「全くハラスメントではない」と感じる人と「明確にハラスメントだ」と感じる人が、ほぼ同数存在しているということです。これが「認識のズレ」の正体であり、一方的に正解を教える研修では埋まらない部分です。

判定後にチーム内で結果を比較すると、同じ事例でも人によって判定が大きく分かれることが体感できます。この「認識のズレ」を目の当たりにすることが、一方的に正解を教えられるよりもはるかに深い気づきにつながります。

・一方的な座学ではなく、参加者同士の対話がメイン
・「正解」を押し付けないので、萎縮ではなく気づきが生まれる
・匿名で判定できるため、本音の認識が見える
・パワハラ6分類 + セクハラを網羅した50問で構成

オンライン版とカード版の2種類をご用意しており、オンライン研修でも対面研修でもご利用いただけます。

オンライン版(おすすめ)

ハラスメントフラグ オンライン版 認識のズレ画面

オンライン版は、各自がWebブラウザ上で50問に回答した後、「個人 vs. チーム」「個人 vs. 世の中の平均」「チーム vs. 世の中の平均」という3つの軸で認識のズレを分析します。匿名回答のため、対面では言いにくい本音の認識が反映されやすいのが特徴です。

「世の中の平均」との比較は、これまで弊社のハラスメントフラグに回答いただいた累計1,500名超の他社含む回答データとの照合で算出します。社内だけでは「うちの会社の常識」が世間とどれだけズレているか分かりませんが、外部データと比較することで、自社の認識基準を客観視できます(参考: 1,500名のハラスメント調査で認識の違いが浮き彫りに)。

本記事で紹介した「対面研修が逆効果になりやすい」という調査結果を踏まえると、匿名で本音を引き出せるオンライン版は、認識のズレを可視化するという目的に最も合致した形式と言えます。

上の画面は「あなたとチームメンバーの認識のズレが大きかった設問」を表示する分析画面の一例です。チーム内で議論する際の出発点として、自分とメンバーで判定が分かれた具体的な設問から振り返りができます。

・対象人数:5名〜100名超程度
・実施時間:最大2時間

ハラスメントフラグ オンライン版の詳細はこちら

カード版

カード版は1チーム5〜6名で実施します。設問カードを1枚ずつめくりながら、各自が判定カードを出し、チーム内で議論する形式です。対面研修ならではの臨場感のある対話が生まれるため、合宿形式やワークショップなど対面でじっくり時間を取れる場面に向いています。

・対象人数:4名〜100名超以上
・実施時間:1〜2時間
・提供形式:講師派遣型(15万円〜)/ カード購入型(3万円〜)

ハラスメントフラグ カード版の詳細はこちら

弊社のビジネスゲーム研修は、これまでに年間約400社、累計4,500社以上に導入いただいています。

導入企業ご担当者様の声

実際にハラスメントフラグを導入いただいた東洋紡労働組合様からは、以下のような感想をいただいています。

近年、ハラスメントが多様化・複雑化し、現代社会において重要な課題との認識です。自組合でもハラスメント対策をより強化していこうと考えていること、過去受講者からハラスメントについて学びたいといった声も挙がっていることから、ハラスメント研修を実施することにしました。”楽しく学ぶ”研修にしたいと思い探していたところ、職場でありそうな事例が多く掲載されている「ハラスメントフラグカード」がヒットし、導入を決めました。

まとめ

5万人規模の学術調査データから見えてきたのは、以下のポイントです。

・職場の約5人に1人がハラスメントを見聞きしており、状況は大きく改善していない
・対面型の座学研修は、パワハラの抑制に結びついていない(むしろ増加と関連)
・本当に効果があるのは「実態把握(認識のズレの可視化)」と「心理的安全性の確保」
・「研修をやること」自体が目的化していないか、研修の設計を見直すことが重要

「研修を毎年やっているのに効果が見えない」とお感じの研修担当者の方は、研修の中身を「一方的に教える」から「参加者自身が気づく」形式に切り替えること、そして研修企画の段階で「アンケートで実態を把握する」「心理的安全性を高める」といった補完策を組み合わせることを検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献

茂木洋之(2026)「日本の労働市場におけるパワーハラスメントの実態と政策的示唆」『生活経済学研究』Vol.63, pp.89-105(J-STAGE)

管理職研修向けのビジネスゲームをまとめて比較したい方は、管理職研修で使えるビジネスゲーム10選|目的別の選び方と比較表つきもあわせてご覧ください。

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