レバレッジポイント12段階と研修の型の対応|組織の急所はどこにあるか

【結論】レバレッジポイントとは、小さな力で組織全体に大きな変化を生み出す「急所」のことです。
ドネラ・メドウズの12段階の指標を基に、研修がどの層に効くのかを整理し、自社の課題構造を紐解くことが重要です。
研修ゲーム「ビールゲーム」を活用することで、参加者は自身のパラダイムを揺さぶられ、システム思考の重要性を体感できます。

目次

1. レバレッジポイントとは?システムの「急所」を指す言葉
2. ドネラ・メドウズが示した12のレバレッジポイント
3. 研修という介入は、12段階のどこに効くのか
4. 自社のレバレッジポイントを見つける3つのステップ
5. レバレッジポイントを体感できる研修ゲーム「ビールゲーム」
6. レバレッジポイントを研修企画に活かす3つの注意点
7. まとめ
8. よくある質問
9. 研修導入をご検討の方へ

組織の課題に何度も手を打っているのに、半年後には元に戻っている。
研修を実施した直後は現場が盛り上がるのに、3ヶ月も経つと以前と同じ会話が繰り返されている。
そもそも、どこから手をつければ組織が変わるのかが分からない。

研修のご相談をいただく中で、こうした行き詰まりの声を伺うことは少なくありません。

この「どこに手を打てば効くのか」という問いに、システム思考の分野から答えを出そうとしたのがレバレッジポイントという考え方です。

この記事では、レバレッジポイントの定義と提唱者が示した12の介入ポイントを整理したうえで、企業研修という打ち手がその12段階のどこに効くのかを、研修会社としての実施経験をもとに対応づけて解説します。

レバレッジポイントとは?システムの「急所」を指す言葉

レバレッジポイント(leverage point)とは、システムの中で、小さな力を加えるだけで全体に大きな変化が生まれる場所のことです。

提唱者である環境科学者のドネラ・メドウズは、これを「複雑なシステム(企業、経済、生体、都市、生態系)の中で、ひとつの小さな変化が全体の大きな変化を生み出す場所」と定義しています。

出典: Donella Meadows「Leverage Points: Places to Intervene in a System」(The Donella Meadows Project)

レバレッジとは「てこ」のことです。てこは支点の位置さえ正しければ、小さな力で重いものを動かせます。逆に支点の位置を間違えれば、どれだけ力を込めても岩はびくともしません。

組織で起きている「頑張っているのに変わらない」という状態は、力の量ではなく、力を加える場所の問題かもしれない。レバレッジポイントは、そう考えるための枠組みです。

「正しそうな打ち手」ほど効かないことがある

メドウズが繰り返し指摘したのは、多くの人はレバレッジポイントの在り処を直感的に言い当てるのに、押す方向を逆にしてしまう、という点でした。

組織の例で言えば「情報共有が足りない」という診断はおおむね当たっています。ところが打ち手として選ばれるのは、報告会を増やす・報告フォーマットを追加する、といった方向になりがちです。現場の情報処理コストが増え、共有の質はむしろ落ちます。

急所を見つけることと、そこを正しく押すことは別の技術です。だからこそ、介入ポイントを段階として整理しておく意味があります。

ドネラ・メドウズが示した12のレバレッジポイント

メドウズは、システムへの介入ポイントを効果の弱い順に12段階で整理しました。番号が小さくなるほど、効果(レバレッジ)が大きくなります

下の表は、原典の12ポイントに、企業組織で言えば何にあたるかの対応例を添えたものです。左2列は原典および日本語版の訳語で、右列が組織における読み替えです。

No. 介入ポイント 組織で言えば
12 数字(定数・パラメーター) 研修の回数・時間・予算、目標数値
11 バッファー(安定化させるストックの大きさ) 人員の余剰、在庫、資金繰りの余力
10 ストックとフローの構造 組織図、業務フロー、拠点配置
9 時間的遅れ 評価が半年後にしか返らない、決裁の待ち時間
8 バランス型フィードバック・ループ 品質チェック、1on1、是正の仕組み
7 自己強化型フィードバック・ループ 成功が成功を呼ぶ仕組み、離職が離職を呼ぶ連鎖
6 情報の流れ(誰が情報にアクセスできるか) 経営数値の開示範囲、部門間の見える化
5 ルール(インセンティブ・罰・制約) 評価制度、承認プロセス、人事異動の基準
4 自己組織化(構造を変える力) 現場が制度そのものを変えられるか
3 目標(ゴール) 何をもって成功とするか、事業の目的
2 パラダイム(システムが生まれる考え方) 「人は管理しないと動かない」といった暗黙の前提
1 パラダイムを超越する どの前提も絶対ではないと扱えること

出典: Donella Meadows「Leverage Points: Places to Intervene in a System」 / 日本語訳語はチェンジ・エージェント社の解説を参照。右列の対応例は弊社による補足です。

上位ほど効くが、上位ほど動かしにくい

この12段階には、はっきりした傾向があります。

・番号が大きい(12〜9)ほど、着手しやすいが効果は小さい
・番号が小さい(3〜1)ほど、効果は大きいが着手が難しい
・多くの組織は、着手しやすい下位の層だけで打ち手を回している

予算を増やす、目標値を上げる、報告の頻度を変える。どれも数日で決められます。一方で「何をもって成功とするか」(3番)や「人は管理しないと動かないという前提」(2番)は、決裁一つで変わるものではありません。

だから多くの組織は、効きにくいと分かっていても12番の層で手数を稼ぎ続けることになります。

研修という介入は、12段階のどこに効くのか

ここからが、研修担当者にとって本題です。研修という打ち手は、12段階のどこに作用しているのでしょうか。

弊社は年間400社以上の企業研修に関わっていますが、同じ「研修」でも設計の型によって、効いている層はまったく違います。整理すると次のようになります。

研修の型 主に動かしている層 効果の残り方
知識付与型(座学・eラーニング) 12 数字 / 6 情報の流れ 短い。受講記録は残るが行動は戻りやすい
スキル訓練型(ロールプレイ) 8 バランス型フィードバック 中。反復と現場での再現機会に依存する
制度連動型(評価・登用と接続) 5 ルール 長い。ただし制度側の改定とセットで初めて効く
対話型(合宿・ワールドカフェ) 3 目標 長い。合意された言葉が判断基準として残る
体験学習型(ビジネスゲーム+振り返り) 2 パラダイム 長い。ただし体験が前提の書き換えに届いた場合に限る

「説明された前提」は情報、「破られた前提」がパラダイム

この表で最も誤解が生じやすいのが、いちばん下の体験学習型です。

体験型研修をやれば2番のパラダイムに届く、という意味ではありません。講師が「前提を疑いましょう」と説明した時点では、それは6番の情報提供にとどまります

パラダイムの層に届くのは、参加者が自分の判断で動いた結果として想定外の事態が起き、「自分が正しいと思っていたやり方が、全体を悪化させていた」と体験で突きつけられたときだけです。

言い換えれば、研修設計者が用意すべきなのは正解の説明ではなく、参加者の前提が破れる状況です。ここが体験学習型の研修を選ぶかどうかの分岐点になります。

自社のレバレッジポイントを見つける3つのステップ

では、自社の急所はどう探せばよいのでしょうか。実務としては次の3ステップで進めます。

ステップ1|出来事をパターンに書き換える

最初にやるのは、目の前で起きた出来事を時系列の並びに置き換える作業です。

「今期、若手が3人辞めた」は出来事です。これを「ここ3年、入社2〜3年目の退職が毎年続いている」と書き換えると、パターンになります。

パターンにならない限り、打ち手は個別対応(退職者との面談を増やす等)にしかならず、12番の数字の層から出られません。

ステップ2|氷山モデルで構造まで掘る

次に、そのパターンを生んでいる構造を探します。ここで使うのがシステム思考の氷山モデルです。

氷山モデルの4階層 出来事・パターン・構造・メンタルモデル

出来事 → パターン → 構造 → メンタルモデルの4階層で掘り下げると、12段階のうちどの層に手を打とうとしているのかが自動的に判別できます。構造の層は5〜10番あたり、メンタルモデルの層は2〜3番に対応します。

氷山モデルの具体的な使い方は、スポーツジムの売上を例に解説した記事で詳しく紹介しています。

氷山モデルとは|スポーツジム事例で学ぶ根本原因の特定

ステップ3|打ち手を12段階に並べ替える

最後に、挙がっている打ち手の候補を12段階のどこに当たるかで並べ替えます。

多くの場合、候補の大半が9〜12番に集中していることに気づきます。それ自体は悪いことではありません。問題は、下位の層だけで打ち手が完結していて、5番のルールや3番の目標に触れる案が1つも入っていない状態です

並べ替えたうえで、上位の層に1つでも打ち手を足せるかを検討します。これが、レバレッジポイントの考え方を企画に組み込むということです。

やりがちな失敗|「意識改革」から始めてしまう

一方で、最初から2番のパラダイムを狙いにいく企画も、うまくいきません。

パラダイムは構造が生み出した結果でもあるからです。承認に3階層が必要な決裁ルール(5番)が残ったまま「自律的に動こう」と呼びかけても、現場の前提は変わりません。

順序としては、5番のルールや6番の情報の流れを実際に変え、その体験を通じて2番が動く、と考えたほうが現実的です。研修を企画するときも、研修の前後で何のルールを変えるのかまで含めて設計すると、効果の残り方が変わります。

レバレッジポイントを体感できる研修ゲーム「ビールゲーム」

「構造が結果を生む」という感覚は、説明を聞くだけではなかなか身につきません。自分の判断が全体を悪化させる体験を通してはじめて腹落ちします。

その体験装置として使われてきたのが、MITスローン経営大学院の教授が考案したシミュレーション「ビールゲーム」です。ピーター・センゲの著書『学習する組織』でも紹介されている、システム思考の代表的な教材です。

ビールゲーム 研修 レバレッジポイント

4名1チームで、工場・一次卸・二次卸・小売店の役割を分担します。互いに十分なコミュニケーションが取れない状態で発注と生産を繰り返すと、末端の需要はほとんど変動していないのに、上流に向かうほど発注量の振れ幅が増幅していきます。

これがブルウィップ効果と呼ばれる現象です。参加者は誰も手を抜いておらず、それぞれの持ち場では合理的に判断しています。それでも全体では在庫の山と欠品が同時に発生します。

個人の努力(12番の数字の層)ではなく、情報の流れ(6番)と時間的遅れ(9番)という構造が結果を決めている。この一点を、講義ではなく自分の失敗として体験できるのがこのゲームの価値です。

ゲーム後は、実施結果をグラフ化して振り返り、氷山モデルとループ図を使ったシステム思考の講義につなげる流れで実施しています。

2026年8月現在、ビールゲームの導入社数は約90社、受講者満足度は4.79(5点満点)となっております。

ビールゲーム 満足度

自分の行動が他者に与える影響を実感でき、全体最適の視点から学びを得ました。表面上の問題は、より深い構造的な原因に起因している可能性があるという洞察を、今後の業務に活かしていきたいと思います。

少しの増減でも上流への反動が大きくなっていくため、見込みの精度の重要性をより知れた。受注残になるリスクを控えたいという気持ちから、卸売への発注が安定しなかった。

ビールゲームの実施要項

項目 内容
対象人数 1チーム4名/最大40名程度まで
実施時間 2時間〜3時間(ゲーム約1.5時間+振り返り・講義)
講師派遣 250,000円〜(5チーム20名まで)
キットレンタル 50,000円〜(社内講師向けの動画・資料マニュアル付き)
オンライン実施 対応可(リモート・ハイブリッド研修に対応)

実施の流れをより詳しく知りたい方は、次の記事で当日の進行を紹介しています。

ビールゲーム実施の流れ|システム思考研修

ビールゲームが管理職研修に効果的な3つの理由

ビールゲーム以外の選択肢

自社の課題が在庫や供給連鎖の比喩になじまない場合は、別のシステム原型を扱う教材のほうが合うこともあります。

たとえば「共有地の悲劇」は、各部門が自部門の合理性を追った結果、共有資源が枯渇していく構造を扱います。会議室や共通リソースの奪い合いといった、身近な題材に置き換えやすい原型です。

ビールゲーム以外のシステム思考研修用ゲーム

共有地の悲劇の具体例(会議室と漁場 編)

システム思考を組織全体の学習サイクルに位置づけたい場合は、学習する組織の5つのディシプリンと研修施策を対応させた記事も参考になります。

学習する組織を自社に取り入れるための研修アイデア

レバレッジポイントを研修企画に活かす3つの注意点

最後に、実際の研修企画に落とし込むときに押さえておきたい点を3つ挙げます。

1. 研修単体を上位の介入だと考えない

体験学習型の研修は2番のパラダイムに届き得ますが、届くのは参加者個人の前提までです。組織のパラダイムが変わるのは、その参加者が戻った現場のルール(5番)や情報の流れ(6番)が変わったときです。研修は起点であって、完結点ではありません。

2. 効果測定を12番の指標だけで組まない

受講者数や満足度は12番の数字の層の指標です。必要な指標ではありますが、これだけで測ると、上位の層を狙った企画ほど評価されにくくなります。「研修後3ヶ月で、どの会議体の運用が変わったか」のように、5番や6番の変化を1つ指標に混ぜておくと、企画の妥当性を説明しやすくなります。

3. 打ち手の一覧を残しておく

ステップ3で並べ替えた打ち手の一覧は、その年で使い切らずに残しておくことをおすすめします。今年は着手できなかった5番や3番の案が、組織変更や経営交代のタイミングで一気に動かせることがあります。急所の在り処が分かっていることと、いま押せることは別だからです。

まとめ

レバレッジポイントとは、システムの中で小さな力が大きな変化を生む急所のことです。ドネラ・メドウズは介入ポイントを12段階に整理し、番号が小さいほど効果が大きいと示しました。

研修という打ち手は、設計の型によって効く層が変わります。知識付与型は12番や6番、制度連動型は5番、体験学習型は2番のパラダイムまで届き得ます。自社の急所を探すときは、出来事をパターンに変え、氷山モデルで構造まで掘り、打ち手を12段階に並べ替える手順が有効です。

そして、上位の層に届く体験を作りたいときに使えるのが、ビールゲームのような体験学習型の教材です。構造が結果を決めるという実感は、説明ではなく失敗の体験から生まれます。

システム思考を軸にした研修の企画をご検討でしたら、ビールゲームの詳細ページと以下のフォームからお気軽にご相談ください。

よくある質問

Q. レバレッジポイントとは何ですか?

システムの中で、小さな変化が全体の大きな変化を生み出す「急所」のことです。ドネラ・メドウズが提唱した12段階の介入ポイントがあり、組織の根本的な課題解決には、単なる数値の変更ではなく、パラダイムや目標といった上位の層へアプローチすることが有効です。

Q. 研修でレバレッジポイント(パラダイムの書き換え)にアプローチするにはどうすればよいですか?

単なる知識提供ではなく、受講者自身の前提が崩れるような体験型研修が効果的です。システム思考を体感できるビールゲーム(カード版)などのビジネスゲームを用いることで、自身の行動が全体に与える影響を客観視し、パラダイムの書き換えを促せます。

Q. ビールゲーム研修はどのような形式で実施できますか?

集合研修でカードを用いて行うビールゲーム(カード版)のほか、PCやタブレットを使用してリモート環境でも実施可能なビールゲーム オンラインもご用意しています。組織の実施環境や対象人数に合わせて最適な形式を選択いただけます。

Q. ビールゲームの導入実績や受講者の評価はどのようになっていますか?

多くの企業で導入実績があり、受講者からも高い満足度評価をいただいている人気のプログラムです。体験を通じて「部分最適が全体最適を阻害する構造」をリアルに学べるため、システム思考やレバレッジポイントの理解に最適な教材として選ばれています。

Q. ビールゲームの費用はどのくらいですか?

実施形態やライセンス数によって異なりますので、具体的な価格についてはお問い合わせ時にご案内します。対面用のビールゲーム(カード版)や、Webブラウザで実施するビールゲーム オンラインのレンタル費用など、詳細はお気軽にお問い合わせください。

Q. ビールゲームはオンラインでも実施可能ですか?

はい、Webブラウザ上で動作するビールゲーム オンラインをご利用いただくことで、オンライン環境でもスムーズに実施可能です。対面での実施をご希望の場合は、カードを使用したビールゲーム(カード版)をご検討ください。

研修導入をご検討の方へ

システム思考を軸にした研修をご検討の研修担当者様へ。本記事で紹介したビールゲームは、実施の進め方や当日の流れ、費用の目安をまとめた資料をご用意しています。

弊社では講師派遣はもちろん、社内講師で実施いただけるようにゲームキット(カード等の備品、運営スライド、講師向け動画マニュアル、振り返りワークシート)の提供も行っております。

講師派遣とキットレンタルの2つの提供方法

運営スライド(パワーポイント)のノート欄に講師用のトークスクリプトや解説が記載されているため、研修の進行経験がない方でも実施いただけます。

ビールゲームの運営スライド:ノート欄に講師用トークスクリプトが記載

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この記事を書いた人

千葉 順
千葉 順
株式会社HEART QUAKE 代表取締役
元法政大学兼任講師(キャリアデザイン論)
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