サービスデザイン思考の5原則とデザイン思考の課題
ここ数年、デザイン思考というキーワードが取り上げられることが多くなっています。
弊社の記事では2015年の6月にデザイン思考を理解する3つのポイントとして初めてデザイン思考を紹介しています。
デザイン思考を理解する3つのポイント
今回はサービスデザイン思考の5原則とデザイン思考の課題ということで、サービスデザイン思考の5原則を紹介したあとに、デザイン思考が抱えている課題について紹介したいと思います。
サービスデザイン思考の5原則とは
そもそものデザイン思考の定義ですが、以下のように定義されています。
by Wikipedia
また、サービスデザイン思考とは以下のように言い表せます。
サービスの現状における課題を、デザイン思考を用いて解決し、
より良い状態に変えること
参考:サービスデザイン実践ガイドブック(β版)
内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室
一言で言えば、サービスを享受する側に立って製品・事業を設計するということなります。
その上で、サービスデザインを行う上では欠かせない5原則というものが存在します。
2.共創(Co-Creative)
3.インタラクションの連続性(Sequencing)
4.物的証拠(Evidencing)
5.ホリスティック(Holistic)(全体的)な視点
Stickdon & Schneider 2011
なお、サービスデザイン思考についてさらに詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。(書籍自体は2013年発売です)
それぞれを簡単に紹介しておきます。
1.ユーザー中心(User-Centered)
サービスは、顧客(ユーザー)の立場から経験されるべきです。
2.共創(Co-Creative)
サービスデザインプロセスには、すべてのステークホルダーに参加してもらいましょう。
3.インタラクションの連続性(Sequencing)
相互に関係する複数のインタラクションをつなぎ合わせ、一続きの流れ
を形作らなければなりません。
4.物的証拠(Evidencing)
形がなく、手で触れることができないサービスは、有形の物的要素を
用いて可視化する必要があります。
5.ホリスティック(Holistic)(全体的)な視点
サービスを取り巻く環境全体に目を配りましょう。
THIS IS SERVICE DESIGN THINKING より
基本はユーザー中心での設計が重要ですが、ユーザーも全ての問題に気づいているわけではありません。
よくある話で、iPhone発売より前にどんなケータイが欲しいか?とユーザーにヒアリングしても、多くの人がもうちょっとカメラの性能を良くして欲しいとか、防水にして欲しいとかしか答えなかったと思います。
そこで、すべてのステークホルダーに参加してもらうことが大事なのです。
インタラクションの連続性のところはデザイン思考ではカスタマージャーニーなどを作って見える化しています。
画像参考:カスタマージャーニーマップを正しく活用するには「おもてなし」と「カスタマーエクスペリエンス」の理解から
物的証拠はプロトタイピング(試作品)を紙や付箋、時にはレゴブロックなどを用いて作成し、見える化する手法がとられます。
最後のホリスティックは全体性という意味ですが、サービス・事業を取り囲む生態系意識して継続可能性や全体最適を考えるということになります。
一例として、美味しい牡蠣の養殖を行うためには、森の整備が重要という話があります。これはホリスティックな視点が無いと思いつかないと思います。
デザイン思考が抱える課題
最後に、デザイン思考が抱える課題とその課題を解決するための新たな取り組みについて紹介しておきます。
まずは課題側ですが、デザイン思考で考えたサービスはユーザー中心になりすぎていて、自分自身との関係性が薄くなってしまい、事業立案や起業のための情熱が足りなくなるということです。
これに対して、スタンフォード大ではアートシンキングという新たな取り組みを行っているようです。
アートシンキングとは自身の内面から湧き起こる社会的課題を発見し、解決するというもので、より主観的な経験に基づいた思考法と言えるでしょう。
また、実際の研究でもサービスデザイン思考で考えた洗濯機のアイデアよりも、アートシンキング的な自分自身の課題で考えた洗濯機のアイデアの方が良かったという結果も出ているようです。
布施 匡章 近畿大
山田 恵美 パナソニック株式会社
まとめ
いかがでしたでしょうか。
サービスデザイン思考の5原則と、デザイン思考が抱える課題、及び、新たな取り組みを紹介しました。
2.共創(Co-Creative)
3.インタラクションの連続性(Sequencing)
4.物的証拠(Evidencing)
5.ホリスティック(Holistic)(全体的)な視点
Stickdon & Schneider 2011