サービスデザイン思考5原則インフォグラフィック

ここ数年で「デザイン思考」からサービスデザイン思考、さらにアート思考へと、イノベーション思考法のキーワードは少しずつ進化してきました。2025年現在も、サービス企画・新規事業・UXデザインの現場では、これらが必ず議論の俎上に上ります。

デザイン思考

本記事では、サービスデザイン思考の5原則を整理したうえで、デザイン思考が抱える課題、そこから生まれてきたアート思考(アートシンキング)との違いまでを1本にまとめます。

デザイン思考そのものを振り返りたい方は、まず以下の記事から読むと理解がスムーズです。

デザイン思考を理解する3つのポイント

サービスデザイン思考とは

そもそもデザイン思考は次のように定義されています。

デザイン思考とは、人間中心デザインに基づいたイノベーションを起こすための、主として非デザイナーを対象とした発想法である。
(出典:Wikipedia)

これに対しサービスデザイン思考は、対象範囲を”製品単体”から”サービス全体”に広げます。

あらゆる製品や事業を「サービス」という視点に立って(再)設計し、サービスの現状における課題を、デザイン思考を用いて解決し、より良い状態に変えること。
(参考:内閣官房 情報通信技術総合戦略室『サービスデザイン実践ガイドブック』)

一言で言えば、サービスを受ける側に立って、製品・事業そのものを設計し直すことです。

サービスデザイン思考の5原則

Stickdorn & Schneider(2011)が整理したサービスデザイン思考の5原則は以下の通りです。

原則 英語 意味
①ユーザー中心 User-Centered サービスは顧客の立場から経験されるべき
②共創 Co-Creative すべてのステークホルダーを設計プロセスに巻き込む
③インタラクションの連続性 Sequencing 複数の接点を一続きの流れとしてつなぐ
④物的証拠 Evidencing 無形のサービスを有形化・可視化する
⑤ホリスティックな視点 Holistic サービスを取り巻く環境全体に目を配る

①ユーザー中心|ただし”聞くだけ”では足りない

基本は顧客中心に設計することが重要ですが、ユーザー自身がすべての問題に気づいているわけではありません

iPhone発売前に「どんなケータイが欲しいか?」とユーザーにヒアリングしても、多くの人は「カメラ性能を上げて欲しい」「防水にして欲しい」と答えるだけで、スマートフォンの姿は出てきませんでした。

だから次の原則、共創(②)が必要になります。

②共創|全ステークホルダーを巻き込む

ユーザーだけでなく、現場のスタッフ・パートナー企業・経営層までプロセスに参加させることが、見えにくい課題の発掘につながります。単一視点では拾えない問題やアイデアを、多視点の対話で掘り起こします。

③インタラクションの連続性|カスタマージャーニーで見える化

サービスは一瞬の接点ではなく、複数の接点の積み重ねで成り立っています。そのため、ユーザーがサービスに触れる流れをカスタマージャーニーマップとして可視化するのが定番です。

④物的証拠|見えないサービスを有形化する

サービスは形がないため、プロトタイピング(試作品)を紙・付箋・レゴブロックなどで作成し、手で触れる状態にして検証します。プロトタイプがあることで、議論が抽象論に陥らず、具体的な改善点が見えます。

⑤ホリスティック|サービスの”生態系”に目を配る

サービスを取り囲む生態系を意識し、継続可能性や全体最適を設計に織り込むのが最後の原則です。

有名な例に、「美味しい牡蠣の養殖をするには、森の整備が重要」という話があります。川の上流の森の落ち葉が海の栄養分になり、牡蠣の品質を決める。一見無関係な要素まで視野に入れる発想は、ホリスティックな視点なしには生まれません。

サービスデザイン思考の手順そのものについては、ダブルダイヤモンド・モデルとの併読もおすすめです。

デザイン思考におけるキーワード「ダブルダイヤモンド・モデル」

実験で判明!デザイン思考で重要なのは「ユーザーリサーチ」と「ニーズの定義」

デザイン思考が抱える課題|なぜアート思考が生まれたか

デザイン思考・サービスデザイン思考は強力な発想法ですが、設計者自身のこだわりが薄まるという副作用も指摘されています。

アプローチ 出発点 強み 弱み
デザイン思考 ユーザーの観察 客観的なニーズを捉える 設計者の情熱が乗りにくい
アート思考 自分の内面・問題意識 起業家の原動力になる 独りよがりになりやすい

ユーザー中心になりすぎると、事業主本人の情熱・ビジョンとの接続が弱くなり、起業・新規事業に必要なエネルギーが続きにくい——これがデザイン思考に対して指摘される代表的な課題です。

アート思考との違い

この課題への回答のひとつが、スタンフォード大学発のアート思考(アートシンキング)です。

アート思考とは、自分自身の内面から湧き起こる社会的課題を発見し、解決するという、より主観的な経験に基づいた思考法。

デザイン思考とアート思考は対立する概念ではなく、組み合わせて使うのが実務的です。

場面 向いている思考
既存事業の顧客体験を改善する サービスデザイン思考
社会課題や自社の存在意義から事業を構想する アート思考
組み合わせ(自分の問題意識×ユーザー視点) 両方を順に使う

実際、研究でも「サービスデザイン思考で出した洗濯機のアイデア」より、「アート思考で自分の困りごとから出した洗濯機のアイデア」のほうが評価が高いという結果が報告されています。

イノベーションを起こす人に共通する5つのスキル

イノベーションを生む対話の4つの要素

イノベーションを生む職場環境の8つの特徴

まとめ

サービスデザイン思考の5原則(ユーザー中心/共創/連続性/物的証拠/ホリスティック)は、“サービスの全体像”をユーザー視点で捉え直すための道具立てです。

一方で、ユーザー中心になりすぎて設計者の情熱が薄まる課題もあり、そこを補うのがアート思考です。どちらかを選ぶのではなく、組み合わせて使うのが現実的なアプローチと言えます。

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