パワハラ(パワーハラスメント)のスピルオーバー効果とは?

今回はハラスメントにおけるスピルオーバー効果について書いていきたいと思います。
スピルオーバー(spillover)とは「漏れ出す、溢れ出す」という意味です。
スピルオーバー効果とは公共経済学で「思わぬところに経済的な影響が及ぶこと」という意味でどちらかというとポジティブな意味での拡散効果として使われるようです。
しかし、今回ご紹介するハラスメントにおけるスピルオーバー効果はネガティブな意味での活用となります。
目次
1. パワハラ(パワーハラスメント)のスピルオーバー効果
2. 家庭へのスピルオーバー効果
3. 「認識のズレ」が無自覚なスピルオーバーを生む
4. 導入事例|株式会社TRUSTDOCK 様
5. まとめ と 関連サービス
パワハラ(パワーハラスメント)のスピルオーバー効果
言いたいことはとても簡単で、みなさんは、職場でパワハラを見かけたらどのような気持ちになるでしょうか? 注意点としてあなた自身はパワハラの被害を受けていません。
自分自身に危害は無いとはいえ、決していい気分とは言えないと思います。
では実際の調査をご紹介します。
職員の1年後の心理的ストレス反応と離職意思との関連を見たところ、
実際に、個人がパワハラを受けたかどうかに関係なく、
パワハラが存在する職場にいると、その職場に所属する職員が
1年後にメンタルヘルス不調になるリスクが上がる。
これは離職に対しても同じで、
パワハラが存在する職場に勤めていると、
公務員という雇用が安定した立場にも関わらず、
その職場を辞めたいという意思が高まることが示された。
引用元:
産業保健の観点から考えるパワハラ予防対策
神奈川県立保健福祉大学大学院
ヘルスイノベーション研究科講師
津野 香奈美
https://www.jil.go.jp/kokunai/blt/backnumber/2019/10/002-035.pdf
読んで頂くと「そりゃそうだよな」という感想かもしれませんが、それが実際の調査としてデータで証明されていることが重要だと思います。
公務員という安定した職場にも関わらずメンタルヘルス不調になったり、離職意思が高まるのですから、一般企業の職場でもよりその力学が働くのではないか?と予想します。
また先程の引用元では以下のようにも記載されています。
いじめ・パワハラが起きることとの間に有意な正の相関
(Skogstad, 2007)
実際に将来パワハラが発生することが明らかになっている
(Tsuno et al., 2015b)

これはリーダーシップの理論の中のPM理論でいうところの集団維持・メンテナンスを表すMの要素が弱いと職場にハラスメントが起きる可能性が高いことを示しているような気がしています。
PM理論についてはこちらをご覧ください。
あなたは何タイプ?PM理論の診断テスト(無料)
家庭へのスピルオーバー効果
【要点】パワハラのスピルオーバー効果とは、職場での悪影響が家庭やプライベートにまで波及する現象です。特に男性において、仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが心理的ストレス反応と正の関連を示すことが研究で明らかになっています。パワハラ予防は、被害者本人のメンタル不調を防ぐだけでなく、その家族の生活の質を守ることにも直結します。

パワハラのスピルオーバー効果は、職場でのパワハラによる悪影響が、職場外(家庭やプライベート)にも波及する現象とも言えます。
研究によれば特に男性は仕事から家庭へのネガティブ・スピルオーバーが、心理的ストレス反応と正の関連を示していたとされています。詳しくは下記論文をご覧ください。
ワーク・ライフ・バランスと精神的健康
-1年間の縦断データから-
島田恭子 島津明人 川上憲人
職場のパワハラは、被害を受けた本人のメンタル不調に留まらず、その家庭にまでネガティブな影響を「漏れ出させる」のです。つまりパワハラ予防は本人保護だけでなく、その家族の生活の質を守ることにも直結します。
「認識のズレ」が無自覚なスピルオーバーを生む
スピルオーバー効果を引き起こすパワハラの多くは、加害者側に悪意がないケースで発生します。「これくらい大丈夫だろう」という思い込みが、相手や周囲の職場、そして家庭にまで悪影響を広げてしまうわけです。
弊社が提供するゲーム型ハラスメント研修ツール「ハラスメントフラグ」の1,500名超の回答データを分析したところ、同じ行為でも人によって判定が大きく異なる「認識のズレ」が浮き彫りになりました。
ホワイト:約21% / ライトグレー:約29% / ダークグレー:約28% / ブラック:約22%
→ 同じ行為が「問題なし」と「ハラスメントである」にほぼ4分割で割れる。
設問34「PCのデスクトップ背景にボディビルダーの写真」 → ブラック判定 50%
→ 行為の構造は同じでも、対象の性別が変わると判定が13ポイント変動。
詳細データは1,500名のハラスメント調査で認識の違いが浮き彫りにで公開しています。
このように「自分は普通だと思っていた行為」が、周囲には深刻なハラスメントとして受け止められていることが珍しくありません。本人に悪意がないからこそ、職場の同僚や家庭にまでスピルオーバー効果が広がり続けます。予防の本丸は「認識のズレを見える化すること」です。
導入事例|株式会社TRUSTDOCK 様
ハラスメント予防のために「認識のズレの可視化」に取り組まれた事例として、株式会社TRUSTDOCK 様の導入事例をご紹介します。労働施策総合推進法の中小企業義務化を機に、正社員全員を対象にハラスメントフラグを実施されました。
担当者からは「自分のキャリアでは当たり前でハラスメントだと全く思わなかったことが、多くの方にとってはブラックである又はダークグレーなものであり、大きなズレが生じていると理解した」「自分はハラスメントへの感度が高いと自負していたが、全体傾向では感度の低いグループに属することが分かり驚いた」といった声もあがりました。
このように自分の判定軸と組織全体・世間との「ズレ」を見える化することが、無自覚なパワハラの発生と、その先にあるスピルオーバー効果の連鎖を止める第一歩となります。
研修1ヶ月後のフォロー調査では、受講者の意識が継続していることも確認されています。実際にハラスメントフラグを受講された方からは、次のような声を頂戴しました。
受講者本人が自発的に「自分の感度の低さに気づき、意識し続けている」と語る点が、座学型研修との決定的な差です。これは知識ではなく自己認知の更新として残るため、スピルオーバー効果の起点となる無自覚な言動を抑止する効果が期待できます。
まとめ と 関連サービス
今回はパワハラのスピルオーバー効果について、以下のポイントを整理しました。
・職場のパワハラは家庭へのネガティブ・スピルオーバーとして、夫婦・子どもの生活の質まで侵食する
・加害者の多くは無自覚。「認識のズレ」の可視化こそが本質的な予防策
・1,500名調査でも、同じ行為で判定が4分割/対象の性別で13ポイント変動という実態
ハラスメント予防研修を「やったことにする」だけでは、スピルオーバー効果は止まりません。認識のズレを実感し、自分事として向き合える研修設計が求められます。
弊社のゲーム型ハラスメント研修ツール「ハラスメントフラグ」は、職場で起こりうる50事例について参加者がホワイト/ライトグレー/ダークグレー/ブラックの4段階で判定し、組織全体・世間とのズレを可視化する研修です。TRUSTDOCK様をはじめ、累計1,500名以上にご利用いただいています。


